師匠(出逢い)
紅葉の落ちていく様は血の涙のように見える。
いつかは渇れ果てるが、時間をかけてゆっくりと落ちていく。
ボクの心はいつから壊れたのだろうか、、、
壱
ボクは単発のアルバイト帰り道、青年が大道芸をしているのを見付けた。
青年は巧みに芸を披露している。
ボクは吸い込まれるように、青年の大道芸を見入ってしまった。
青年もボクに気付いたのか、ボクが見易いように僅かばかり体勢を変えてくれた。
芸の種類は幅広く、ジャグリング、ダンス、草笛等々多岐に渡る芸を披露していた。
目の前に置かれている帽子には溢れそうになる程のお金が貯まっており、その上に更にお金が積まれていった。
青年の芸が終わる頃には新しく置かれた箱もお金が貯まっており、ボクの1ヶ月の給料と遜色が無い位のお金がそこにあった。
「君は楽しめなかったか?」
最後の道具を仕舞うと、青年はボクに語りかけてきた。
ボクは首を横に振るだけで意思を伝えると青年はボクの頭を撫でながら優しく微笑んでいる。
「何かあったんだね。君はずっと同じ表情で見てたから気になってね」
ボクは言葉を出そうとしたが、ここ数ヵ月まともに声を出していない為、吐息だけが口から漏れた。
「今夜は稼げたから、ご飯でも一緒に食べるか?」
ボクは何も考えずに青年の手を取って立ち上がった。
弐
神社の境内で買ってきたお弁当と飲み物をボクに差し出して、自分も食べ始めてきた。
ボクは青年から受け取るとお弁当を食べ始めた。
理由なんて分からなかった。
それでもボクの目から涙が流れ止まらなかった。
「私は旅人をしているんだ」
青年は優しい口調で、ボクの頭を撫でながら優しく語り始めてくれた。
青年の旅の話は不思議な体験の数々だった。
ボクは世界を知った気でいたけど、世界はもっと広く、もっと残酷で美しいと思った。
いつの間にか、ボクの涙は止まり青年の話を身を乗り出して聞いていた。
青年は突然にハッとした顔をするとあわてた表情でボクを見つめた。
「ごめん、こんな時間まで付き合わせたな。そろそろ帰らなくて良いのか?」
青年の言葉にボクはクスクスと笑いながら、大丈夫だと言う事を身振り手振りで説明した。
青年はどんなことを思ってたのかは分からなかったけど、近くの葉を取り草笛を奏で始めた。
秋夜に響く草笛の優しい演奏は、ボクの日常から今を乖離して異世界へと連れ込まれた錯覚をもたらした。
不快感はなく、むしろ居心地の良さを感じるそんな世界に浸りながらボクは青年の演奏を聞いている。
青年は優しそうにボクを見つめながら、優しい音を奏でてくれた。
「、、、君もしてみるか?」
演奏を終わると新しい葉をボクに渡してそう聞いてきた。
ボクは青年から受け取り、青年を真似て葉に息を吹き掛けてみたが音がなることなく空気が当たる音だけが響いていた。
青年は優しくボクに草笛の仕方を教えてくれた。
参
アレから何時間練習したかは分からなかった。
夜は深まり、ボクは音を出せるようになっていた。
まだ綺麗な音でもなく、奏でる事も出来ないが確かに音は出せるようになっていた。
ボクの喜ぶ姿を見て、青年はボクの頭を撫でながら満足そうにしている。
「私の弟子になる気は無いかな?」
青年がどうして、そんな提案をしたのかは最後まで教えてくれなかった。
でも、ボクの事をほっとけなかったと笑いながらいつも言っていた。
青年が師匠になってからボクがこの町を離れたのは翌日の事だった。
町から離れる時に見えた紅葉は温かな温もりを大地に覆っているようにボクには見えた。
見切り発車、ネタがない




