第7話 助けてくれた人
菜園で私が育てているトマトやキュウリ達を見ながら、何だかドキドキしてきた。
私が会いたい人って
昨日私を抱えてくれた人だ。
その人は最後に牢屋に来て涙を流してくれた人と同じ匂いがした。
その人の事は知らないんだけど、なんでだろう、無条件で信じたい。
それに何も知らない私が
初めて真実を1つ知ることが何だか嬉しい。
なぜだかソワソワして菜園内をぐるぐる回っていた。
「お嬢様!落ち着いてください」
ジェミーが心配で声をかけた。
「嬉しそうで何よりですが、そんなに素敵な方がお見えになるのですか?」
「わからないの。」
「え?」
「誰が来るのかわからないんだけど、昨日心配してくれた人の匂いがとても安心できるの」
「それは夢で見た最後にお会いした方なのかわかりませんよ?」
「そうね。違うのかも。でも私の名前を呼んだ声は心から心配した声だったのよ」
ジェミーは優しく微笑んで
「お嬢様がそこまでおっしゃるなら私もその方を信頼しますね」
「フレデリク様なのかな?そうだったらイザベラ様にとって邪魔になった私を陥れた人かもしれないんだよね」
私は少しだけ表情が暗くなる。
「お嬢様の直感を信じましょう!それにレオポルド様は言えないだけで昨日の事はご存知のようですし、何かあればレオポルド様を頼りましょう」
「そうね」
レオが言う通りに、お父様は仕事で王都へと向かった。
レオは私が心配だからと今回はお父様については行かなかった。
「レオ良かったの?王都ではたくさんの友人が待っているんじゃなくて?」
「ううん。今日はそれ以上に大事な人がくるから。それに僕はお姉様から離れたくない。」
レオは何だか元気がない気がした。
「レオ!今日は会いたい人がいらっしゃるからさっきクッキーを焼いたのよ!レオも一緒に食べましょうね」
「うん」
レオとお父様を見送ってすぐに
そのお客様は到着した
私とレオは慌てて門へと向い馬車から降りてくるその方を頭を下げて出迎える。
「本日は突然の訪問にかかわらず丁重なお出迎えに感謝致します」
その優しい声は
私はバッと顔を上げた
やっぱり、フレデリク様だった。
「フレデリク様・・・・・」
何となくそうかなって思っていたけれど、実際フレデリク様が来ても何だかピンと来ない。
私はバッとレオを見た
レオは当たり前かのように
「お待ちしておりました。フレデリク様」
「レオポルド様ご招待ありがとうございます」
「はい。フレデリク様、中へどうぞご案内致します」
レオ?
レオとフレデリク様は友人ではないはずよね?
昨日の今日で侯爵家のご子息が伯爵家の子息の願いを聞くの?
私の疑問が大きくなる。
今日解決するはずだった
1つ真実を知るはずだけど・・・・
フレデリク様は私の方に来て
「今日はクロエに会いに来たんだ。体調は大丈夫?ゆっくり話そう」
そして私の手を取って、レオが案内するサロンへと私を連れて行った。
その手は暖かかったが、私の手は冷たくなっていた。
昨日お父様は男の子とふたりきりになってはならないと言った。その相手が誰だった?助けた人の事を言ってたんじゃない?
レオは私が会いたい人と言った。
でも助けた人とは言っていなかった。
それに
お父様がいない時間を見計らった?
お母様はこの時間たまたま町に買い物に出掛けていた。
偶然?ううん。レオだ!レオが手配したんだ。
私はレオが少し怖くなった。8歳のレオがこんなにしっかりしている事が不自然なのだから。
それにこの距離だと
あの匂いがしない。
私は誰だったら納得したのだろう。