第56話モーリス
僕の顔を見たセドリック様が慌てて
捕まえている刺客の頭を掴んで
ご自身の方に向けた
「・・・・・・モーリス」
セドリック様の顔が少し切なそうになった。
モーリス様は観念したのか、戦意喪失したかのように体の力が抜けセドリック様に見を預けるかのようにダランとした感じになった。
セドリック様は護衛にモーリス様を引き渡し、
「牢へ」
そしてモーリス様に
「後ほど尋問に行く」
それだけを言ってモーリス様に背を向けた。
モーリス様は
「仕方なかったのです。私には!私には・・・・・」
訴えるというより独り言を言っているようだった
セドリック様は僕の方に近づき
「レオ!大丈夫なのか?ケガはあるまいな?」
僕は少し戦闘になれて来たのか前回襲われた時よりは震えも恐怖心もあまりなかった
「大丈夫です。セドリック様が捕まえて頂いたおかげです」
「そうか・・・・・」
「尋問は別の方人に任せてはいかがでしょうか?」
セドリック様のショックは計り知れない
信頼すべき執事に命を狙われたのだから
「いや、大丈夫だ。前からレオからモーリスに気をつけるよう言われていたおかげである程度の覚悟はしていたのだ。…………
ただ………
本当にモーリスだと知った時は心のどこかでやっぱりモーリスを信じたい気持ちが強かったのかもしれないな……」
セドリック様は少し苦笑いをして見せた
セドリック様は落ち着いてから牢へと向かっていった
セドリック様がこのお屋敷にいらしてから十数年、ずっとモーリス様を信頼し生きて来られたのだろう
なのに実は、モーリス様が1番の危険人物だったのだ。どうして納得ができようか。
それでも信じたかった。その気持ちもわからなくもない。
先程の騒ぎで急いでやって来たマクシモは
僕の横で、僕よりもっと顔色が悪い
「マクシモ、大丈夫ですか?」
僕が支えられてるのか僕がマクシモを支えているのかわからないな。
そこから数日かけて尋問が行われた
モーリス様は生まれた家が実はこの国の名家ではなく、元から隣国アルフォンス国のスパイとして育てられた。
モーリスの実家にモーリスという名の者は確かにいたのだが幼い時にすでに偽物のモーリスと入れ替わっていた。本物は生まれた時に病気で他界していた。後継ぎがいない名家は廃れてしまう。それを危惧した両親が多額の報酬を貰えるかわり一生この秘密を墓まで持って行くと言う約束を交わし
後継ぎと多額の報酬を手に入れたのだ。
両親は実の子が死んだことも偽物の息子だと言うことも一生他言することなく、一生を終えていた。
だからモーリスの家ではこの偽物モーリスが本物のモーリスで間違いないのだ。
モーリスは幼い時からスパイだという認識はあった。実の両親がアルフォンス国で人質になっているのだから。
モーリスが依頼をこなせば両親は普通の生活を送ることができる。
そう、モーリスさえ心を殺せば。
育ての親も産みの親もみんなが幸せだったのだから。




