第53話 レオ・マクシム
セドリック様が公表してくれたおかげで、セドリック様の食事や飲み物に毒が仕込まれる可能性が低くなった。屋敷のみんなが見張っているからだ。
犯人の特定はまだできないけど、犯人もそんなに馬鹿じゃない。
ルディス様の捜索から1年が経ってしまった。
「レオ・・・・ルディスさんの行方が全くわからないまま1年が経ったけど、おかしいよな。何か物的証拠もなく、考えたくはないが、もし殺されていたとしても、遺体も遺留品も発見されないなんて」
本日の任務を終えたマクシムが僕の部屋に来ていた。
そう、1年も経てばみんなどうしても悪い方に考えてしまう。
しかも毒を盛ったのがルディス様なのではと噂するものもいる
「そうですね。でもマクシム、指揮を取っているのはモーリス様なんだ。見つからないというか、捜索を邪魔しているとしか考えられない」
マクシムは少し切ない顔になった。
「レオはまだモーリス様を疑っているんだな・・・・レオを信頼している。でもあれ以来、セドリック様に危害を加えようとするものが見当たらない。モーリス様ではないという確証も犯人である証拠も得られない」
「それはそうですが・・・・モーリス様を信頼されているセドリック様とマクシムが言う事も理解できますが、僕は自分の直感を信じています。それに、あんなに怪しい素振りを見せたレックス様も証拠がないのがどうしても納得がいかない。ご実家も誰かに脅されてる感じはなかったし」
ベルジック公爵家の使用人全ての実家から交友関係全てを調べた。調べるのに1年近くかかってしまったが誰も怪しい者はいなかった。
「犯人がこのまま改心していたとしても、俺は許さないしこのまま不安の中で生活するのは嫌だ。誇り高きベルジック公爵家に影を落とした奴がこのまま普通の生活を送ってるかと思うと腹が立って仕方がない」
「僕もこのままでは家には帰れません」
「この事件が解決したら帰るのか?」
「僕も家を継がなくてはなりませんし、それに姉上が心配なのです」
「レオが言う未来はとても信じられないが・・・レオが嘘を言ってるとも思えない」
僕はマクシムにだけこの一年で少しずつ僕がなぜここに来たのか、未来を夢見たこと、姉上の結末を全て話した。マクシムは全てを受け入れてくれた。
こんな事実確認もできない話を。
「来年、社交界デビューと王宮学園入学だったか?」
「うん。それまでに家に帰って父上から家督の全てを習いたい。あの惨劇まであと4年ある・・・いえ4年しかない」
僕が難しい顔をすると、マクシムが
「わかってる。俺が必ず家に帰れるようにこの事件を解決するから、レオも一人で抱え込むな」
そして僕の頭をポンポンと軽く叩いて
「俺を頼れ!いいな?」
にやっと笑った顔は端正な顔をしたマクシムは王宮騎士のような凛々しさがにじみ出ていた。
「マクシムはこの事件が解決したらさ、僕と一緒に王都に行こうよ」
「は?」
「この事件が解決したら公爵家は大丈夫なはずだよ。僕と一緒に姉上を守ってほしい」
僕は本気でお願いした。
マクシムは少し悩んで
「その返事はこの事件が解決してからでいいか?」
僕はすぐに断られなかった事にホッとした。
「あぁ!もちろん」
それから3か月後公爵家に招かれざる客がやってきた。




