第50話 フレデリク様の気持ち
イザベラ様のお屋敷の前で馬車は止まった。
私が馬車から降りてくる前にフレデリク様が馬車の近くまで来てくれていた。
「ようこそ、クロエ♪」
すごくニコニコした顔で私を出迎えてくれた。
「フレデリク様はすごくご機嫌がよろしいのですね」
私はその笑顔につられて、笑顔になった。
「だって、クロエが来てくれたのだから、こんなに嬉しい日はないよ」
馬車から降りる私にそっと手を差し伸べてくれた。
「ありがとうございます。フレデリク様、なんだかフレデリク様にお出迎えされるとは、なんと贅沢な事でしょうか」
「そうかな?」
「はい。この現場を他のご令嬢方が見られたらきっと嫉妬で私はいじめられてしまうかもです」
「だったら、私がクロエをこれからずっと守ってあげる」
馬車から降りて私はフレデリク様から手を離した。
そして私はクスクス笑って
「大丈夫です。私はいじめられたら、その倍は絶対に返すつもりなので、きっとフレデリク様はいじめた側のご令嬢を守ってあげた方がよろしいかもしれません」
離した手をもう一度フレデリク様は私の手を掴んで自分に引き寄せた。
「嫌だ!クロエがどんなに悪者にされても私は、私だけはクロエの味方でありたい」
急に真剣なまなざしに変わった。きれいなオレンジ色の瞳に私が映るほど顔が近くなった。
きれいなオレンジ色の瞳に吸い込まれなそうになって、私は急に顔が熱く真っ赤になった。
赤い顔をかくすように私は下を向いて
「・・・・・ありがとうございます」
「わかってくれたらいいよ」
フレデリク様は私の顔を覗き込んで耳元でささやいた。
私は
「きゃっ」
と声をあげフレデリク様から離れた
「フレデリク様、心臓に悪いのであまりそういうのはやめてください」
赤い顔はますます赤みを帯びた。
フレデリク様クスクス笑って
「ごめんね、じゃあイザベラが待ってるよ。中に入ろうか」
「え?今日は庭園ではないのですか?」
「今日は親しい人しか呼んでいないんだ」
「だから屋敷の中でお話ししよう」
言われてみればいつもは賑やかな玄関前も誰もいなかった。
他のご令嬢はいらっしゃらないのね。とっても気が楽だけど、これだとミア様は今日も絶対にいない。
やっぱり、イザベラ様にお願いしなければならないけど。私のせいでイザベラ様の立場がこれ以上悪くなった嫌だな。
そんなことを考えながらお屋敷に入るフレデリク様についていった。
お屋敷の中に入った事はあるけれども、こんなにゆっくりと入るのは初めてかもしれない。
ホールにはとても素敵な花器に豪華な花が生けられていて、壁には大きな絵も飾られている。私にはわからないけどきっと名画なんだろうな。
お屋敷の中でもとても大きな扉の前に着いた
「うわー。フレデリク様とても大きな扉です。とびらの彫刻もとても美しいです」
「気に入った?ここは応接間なんだけど、クロエがこの屋敷にいたかったらずっといても構わないんだよ?」
・・・?
「そんなに帰らなかったら父も母も心配しますので、すぐに帰りますが?」
フレデリク様優しくほほえんで
「そうだね。でも私と結婚すればいいんじゃないかな?」
結婚!?
「!!!!!?」
私は驚きのあまり声にならなかった。
私たちが扉の前にずっといたら話し声が中まで聞こえたのか
扉が
カチャ
開いた。
「フレデリク!!!」
中から第一王子のルーカス様が怒った顔で出てきた。
部屋の奥には、話が聞こえていたのか、顔を赤くしてニコニコしているイザベラ様の姿が見えた。
それともう一人
アベル様のお姿も。




