第49話 クロエの心境
11歳の誕生日会に第一王子様に会ってから、1年が経ったのに。
何も進展がない。
第一王子様も、第二王子様も婚約者の発表もなく、王家の方が誰も亡くなる事もなく、すごく平和だ。
ただ、レオが全く連絡をくれないのが不安・・・・。
「クロエお嬢様、本日はイザベラ様のお屋敷のお茶会に行くのですよね?」
「えぇ、そうよ」
私は少し元気のない返事をした。
何度か、イザベラ様のお屋敷に招かれてはいるが、ミア様がいない。
確かに、イザベラ様はミア様を避けていらっしゃるかもしれないけど、公爵家の方に失礼があってはならない。あまり邪険にはできないはずなのに、いつも私が伺う時はいらっしゃらない。
「お嬢様、何か元気がないようにみえますが」
ジェミーが私の髪の毛を整えながら心配してくれている。
「きっと私のせいでイザベラ様はミア様を招待されてないと思うの。でもそれってイザベラ様にとってはお立場を悪くされるのではないかしら」
「お嬢様、きっと大丈夫ですよ。お嬢様が知らない時にちゃんとミア様をお茶会に誘っていらっしゃると思いますよ」
「そうよね、きっと私が嫌がると思ってミア様の話しをされないだけよね」
ん?それだと困る・・・・
ミア様の第二王子様の婚約者候補の件から前回私が死ななければならなかった事の真相の手がかりが掴めるかもしれないのに。
あぁぁ!私は何を平和ボケしてたんだろう。嫌でも、王家とは関わらなければならないのに。
「ジェミー、私決めたわ!あの前回の人生にならない為に、もっと情報を集めなければ」
ジェミーは少し辛そうな顔をした。
「最近のお嬢様は、すごく活発になられて、もしかしたら前回のような戦争も冤罪も起きないのでは?と考えてしまいます。私は前回を知りませんが、お嬢様の人生が少しずつ変わってきているならこのままお嬢様が傷つかずに暮らしてほしいと願います」
「ジェミー・・・・・」
確かに前回とは状況が変わっては来ている。でも15歳になってまたあの状況になってしまわない保障はどこにもないのだから、私が無知でいてはダメな気がする。だから王宮の学園にも通いたいと思う。たくさんの人に会っていろんな事を学ばなければいけない。
「ありがとう。でも私たくさんの人が死ぬのを見たくない。頑張ってダメなら人生を受け入れる。でも私がこの時間に戻ってきたのは神様がチャンスをくれたと思う。私がんばりたいの」
ジェミーは少し涙を浮かべていたが
「はい!お嬢様頑張りましょう」
少し止まっていたいた手を動かし、私の髪の毛を整えてくれた。
ジェミーに見送られて私は、馬車でイザベラ様のお屋敷に向かった。
ちょっと前までは、前回の事を思うと気分が優れなくなっていたが、最近は思い出しても体調を崩す事はなかった。
でも第一王子様を考えると胸がソワソワして、落ち着きがどんどんなくなっているのには気づいていた。
次はいつ第一王子様に会えるのかしら・・・・
レオの近況報告で何度かお手紙は頂いているけど、業務連絡的な感じ。
最初に出会った頃の第一王子様とは変わってしまった。
きっと、私が物珍しかったのかもしれない。
前回の人生では一度もお会いしたことがないお方だったのに婚約者候補になって、今回もそうなるんじゃないかって・・・・
私もきっと、勘違いしたのね。王子様が私に気があるなんてありえないのに。
前回の人生で最期に会った人……
王子様とただ同じ香りがするだけだったのかも
あの優しい人に会いたい
ずっと第一王子様と思っていたけれど
違うのかもしれない
もうすぐまた私の誕生日会がやってくる。
「きっと今年は来ないわ」
ぽつりと独り言を口にした。
心が少しだけ寂しい気持ちになる
馬車はイザベラ様のお屋敷の前に到着していた。




