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無知な令嬢に罪があるのなら真実を明らかにしましょう  作者: NALI


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第41話 試す



翌日の朝、僕は具合が悪い振りをして、マクシム様の部屋に向かった。



コンコンコン



「レオです。早朝からすみません」


「レオ?」


慌てて扉を開けてくれた。


「どうした?まだ、勤務の時間ではないだろう?」


「昨日、ちょっと口にした物が合わなかったようで、体調を崩してしまいました。城下町の医者に診てもらおうと思うのですが、本日の業務は休んでもよろしいでしょうか」


「お前、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」


それはそうだ、女性が使うおしろいを顔に塗って、頬の赤みを消したのだから。


「ちょっと待て、俺が一緒についていく」


「ありがとうございます。では、セドリック様のお見送りが終わったあとで構いません。僕の部屋に来てもらえますか?横になっておきますので。」



「わかった。待っていろよ」


僕は、セドリック様のティに毒が入っているのかを調べに行くついでに、マクシム様が信頼できるかどうか試そうと思った。





数時間後にマクシム様が午前の業務を終えて部屋に来てくれた。



「レオ起きれるか?」


「ベッドで横になっていったら少しはよくなりました」



少しほっとしたようなマクシム様を見て、少し胸が痛んだ。


「マクシム様、良かったらそちらにあるティセットは昨日、セドリック様に届けられた新作のお茶だそうです。感想を頂きたいと僕に預けられたのですが、僕は調子が悪いので変わりにマクシム様が試飲してくれませんか?」


もし昨日このお茶を用意した犯人ならば、これに毒が入っているのかわかっているはず、元々、毒が入っていなければ飲んでも大丈夫だろうが、入っているかいないかはまだ僕にもわからない。飲む寸前で止めればいいだろう。

もし、毒入りとわかっているのなら絶対に口にはしないはず。



「セドリック様がお前に頼んだのか?」

マクシム様は少し考えこんだ。


「お前、もしかしてこのお茶を飲んで具合が悪くなったんじゃないのか?」


「いえ。飲んでいませんが」


「セドリック様がなぜ子供であるお前に試飲を頼むんだ?」


「昨日僕がこのセットを持って行ったからではないでしょうか?」


「セドリック様は絶対に信頼のおける者しか頼まない。お前はセドリック様と親しかったのか?」


え?まさかの逆に怪しまれている・・・



マクシム様はやっぱり優れている執事なのかもしれない。



「んー。しかし、お前もこれの感想を言わなければならないのだろう?」


「そうですね」


マクシム様は仕方ないとういう表情を見せて

「冷えたお茶で俺に味がわかるだろうか?」


横に添えてあったカップを手に取って、冷えたお茶を注いだ。そして何の躊躇もなく、僕が困るからとカップを口に運ぼうとした。


「マクシム様!!!」


急に大声を上げた僕にびっくりして、マクシム様が持っていたお茶がこぼれマクシム様の顔にかかった。



やばい!!!!


「マクシム様、早くこちらで顔をお拭きください。」

僕は慌てて持っていた

タオルで顔を拭くように、お願いした。


マクシム様は顔についたお茶を舌で舐めて、口に入れてしまった。



「驚かすなよ。こぼれただろう」


「口に入ったのですか!?具合は悪くありませんか?すぐに医者に診てもらいましょう」



マクシム様は驚いた顔をして、

「具合が悪いのはお前だろう?」



僕は少し涙目になった。

どうしよう、どうしよう、どうしよう、僕の軽はずみな行動でこの人が死んでしまったら。



僕は慌ててティセットを籠に詰めて、



「マクシム様、行きますよ」


マクシム様の手を掴んで部屋を出た!



その時、僕のかつらが少しずれて、茶色い髪の毛の隙間から銀色に輝く髪の毛が少し見えていたなんて、近くにいたマクシム様しか見ていなかった。


いや、マクシム様は見てしまったのだ。



でも何も言わずに、僕の手に掴まれたまま城下町の診療所まで無言でついてきてくれた。






確認の結果、やはり茶葉に少量の毒が混ざっていた。一口だけでは死に至るわけではないが、毎日飲み続けると、死んでしまう。




その結果を横で聞いていたマクシム様の顔は恐ろしい表情になっていた。



握りこぶしに力が入りすぎて、マクシム様の両手から血が出てきている。


「レオ!説明してくれるか?」

恐ろしく低い声でマクシム様は僕に尋ねた。



僕は、この人に危ない目に合わせてしまった事を謝らなくてはならない。


「マクシム様ごめんなさい。毒入りのお茶を飲まそうとして、マクシム様を試した事をお許しください」


「そんなのどうでもいい!!!俺が聞きたいのは誰がセドリック様に毒を盛ったのかを知りたい!それにお前は誰なんだ?その髪の毛はかつらなのか?」


マクシム様は強く握ったこぶしを緩めて、優しく僕の髪に触れた。



「お前は味方なんだろう?」


マクシム様の目からうっすらと涙が見えた。





「僕は・・・・セドリック様をお守りするためにお屋敷にやって来ました。」






その言葉にマクシム様は



「そうか・・・・ありがとう」




何も知らなかった自分を責めるかのように、マクシム様は下を向いた。






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