第33話 クロエ12歳
王妃様の毒事件が明るみに出ないまま、2年が過ぎた。
「ジェミー、今日はやっとレオが帰って来るわね!何年ぶりかしら。一度も連絡はよこさずに王子様から元気でやっていると定期的にご報告があるだけで心配で仕方なかったわ」
私は久しぶりに会う弟に、元気で帰って来ると聞いて安堵した。私ももうすぐ13歳になる。
この2年間、何の成果もなかった。イザベラ様と第一王子様の婚約も結局ないままだった。
そして前回と違う事がもう一つ。王妃様が病死しなかった事。確か前回はお亡くなりになられて、国中で悲しんだ記憶があるのだけれど。
私が知ってる前回の人生とは変わって来ているのは確か。
だったらもう何もしなくても戦争は起こらないかも?たくさんの人が殺される事もなく、私も牢屋に入れられる事もないのかもしれない。
私はこの2年そんな事ばかり考えて、だんだん心の奥の黒い芽が消えかけていた。
変化があったとすれば私が領地に帰らず王都の邸にいることだ
ここだと色んなお茶会に参加しやすくて情報が入りやすいと思ったから
イザベラ様とフレデリク様とも仲良くして頂き、社交的な部分も増えてきた。
お父様がおっしゃっていた。社交界デビューを間近に控え、これさえ乗り切れば学園へ入学出来る。
前回の社交会デビューはすぐに帰った記憶しか残っていないから、ほぼ初めてと言っても過言ではないのかも。
とにかく今日は久しぶりのレオに会える喜びで、ソワソワしている。
「お嬢様、レオポルド様は一時的な帰宅と伺っていますが、どれくらいの休暇なのでしょうか?」
「そうね、1週間は大丈夫らしいけど。結局は領地にも帰らなければならないから、2、3日だけかもしれないわ」
「それでも、2年ぶりですから嬉しいですね」
ジェミーは私がずっとニコニコしている顔を見て、とても嬉しそうに話した。
日が傾く頃、レオが帰って来た。
私はお父様、お母様と一緒に門についた馬車を出迎えた。
とても豪華な馬車だった。見たことがない紋章がついていて、私にはわからなかったけど、お父様とお母様は凄く驚いた顔をしていた。
「あの・・・・紋章は」
お父様がボソっと何か言っていたけどよく聞き取れないまま馬車の扉が開いた。
「レオ!」
え?
馬車から降りて来たレオは10才なのに、少し凛々しく背はもう私の身長に追いついていた。
抱きつこうかと悩む程の成長ぶりに、私は少し戸惑っていると
「父上、母上、姉上ただいま戻りました。長い間、連絡も出来ず大変申し訳ありません」
レオは馬車から降りると丁寧にお辞儀をした。
今までだったらすぐにかけより抱きしめていたのに。
お父様もお母様も少し瞳に涙を浮かべ、
「元気で何よりだ。さあ中でゆっくり話そう」
お父様はレオの両肩をグッと引き寄せ、ハグをした。
お母様もレオの側に行きギュッとお父様ごと抱きしめた。
ポツンとたったままの私を見て、レオは手でおいでと手招きをする。
「レオは大きくなったのね」
私はすぐさま駆け寄ってみんなを包むように抱きしめた。
幸せだと思うと少しだけ涙が出そうになる。
この幸せをずっと感じていたい。
そして、なんだろう違和感を感じる。幸せを感じると
私は、何か大事な事を・・・・・・
ぬるま湯に浸っていた自分が恥ずかしくなる。
レオはどうして前回と違う人生になっているの?
私はこの2年間何をしていたの?
私はレオの手が凄く荒れている事に気づいてしまった。
レオ・・・・・
ちゃんと逃げずに話しをしなければいけない時が来たのね。




