第31話 シドと刺客
もう日付が変わろうとする頃、お城で事件が起こっているだなんて、私は全く知らずに、
第一王子様に謁見を断られたら事をもんもんと考えながら、ベッドに横になった。
ジェミーも仕事を終え、部屋を出た。
1人になってから
何だか寝付けない。
「なんなの?何だかモヤモヤするし。会えないと思うと会いたくなる。この気持ち何だか気持ち悪い・・・・・・・」
そう思う相手は第一王子様だけなのか、わからない。
前回は顔も知らずに婚約者候補になった。
今回は・・・・・・
綺麗な金色の髪に金色に輝く瞳・・・・・
甘く優しい声に優しい香り
少年っていう感じがなくて、
普通に出会っていたら、私は好きになったのかな?
・・・・・・・・・
「でもあれは夢じゃない!私の未来は私が変えなくては、今は恋なんてしてる場合じゃないのよ!」
恋はしようとしてするものじゃないって事を私は思い知らされる日が来るだなんて
今の私は幼すぎて知らなかった。
❄︎ ❅ *. ❅ ✥ ✣ ✤
城下の診療所で話しを聞いた私は驚愕した。
「それは本当ですか?」
「はい。間違いありません。少量ずつの毒を摂取させられてきたのでしょう。今は元気に見えますが1年以内で、体内の毒は全てに周り、命の危険があったでしょう。それに早い段階で、妊娠は出来ないお体になっております。」
そういえば、私とアベル以外に兄弟はいない。王様もカーリー妃と仲が悪いわけではないが、王妃様を大事にしている。
もしかしたら、カーリー妃に王子が生まれたからなのか?王様なりに王妃様を想って?
子供の私に王様が話すわけがないか。
「治りますか?」
「これ以上の毒の摂取は危険です。毒消しの効果が
ある薬を処方しましたが、必ず飲ませて下さい。毒の特定ができれば、もっと効果が出る薬がお渡しできるのですが・・・・・」
「わかりました。すぐに毒を特定するものを探して来ます!先生もくれぐれも他言無用でおねがいします」
「承知しております。診察内容は王妃様にも知らせておりません。薬は滋養に効くとだけお伝えしております。ただ、外部の医師に不審がっておられましたが」
「大丈夫です。先生は毒消しをよろしくおねがいします」
私は深々と頭を下げ、診療所を出た。
やっぱり・・・・・病気じゃなかった!!
悔しい!!前回はそんな事も知らずに、クロエだけじゃなく母も失ってしまっていたなんて!
王妃様は毒と聞かされていないのに、医師に護衛を付けた!?
「シド!すぐに城へ戻らなければ!毒を盛る事ができるのは王妃様付きの侍女もしくは料理長・・・・王妃様は毒味された物しか口にしない。だったら可能性は侍女。しかも身近な。」
シドは馬に私を乗せ、急いで城へと戻ろうとした。
シドの手が止まる。
「王子様、護衛じゃないものがおります」
シドの目は獲物を探す鋭い瞳に変わった。
「殺気を感じます。相手は1人のようですが王子様何かありましたら、すぐに馬と城へと戻って下さい。この馬に追いつく者はいません」
「大丈夫だ。私を気にするな!自分の身は自分で守る。シド生きて捕獲して欲しい」
「仰せのままに」
そういったシドは目の前からスッと消えたかと思うと、建物の影に隠れていた。人物の前まで行っていた。
あれが不審者か?
私は腰の剣に手を乗せた。
さすがに私も10歳とはいえ、王族は小さな時から身を護る剣術だけは、習っている。ただ、大人と違い力が弱い。
シドの足手まといにならないように、私は息を潜めた。
医師を口止めのため殺しに来たのか?
殺気を醸すほどだ。
私を狙いに来たにしては、1人では来ないだろう。
王妃様の元にいた者から言われて慌てて医師をつけたが事を起こす前に私達が現れた。って事か?
王妃様の護衛をつけた判断は正しかった。
護衛は外の異変に気づき、すぐに診療所の中に1人入った。もう1人は私の近くに来ようとしてくれたが、
私は手で「待て」と合図し、診療所の入口に待機させた。
シドが怪しい人物に近付くと2人は間合いを取った。相手の手の短剣が月明かりでキラっと光ったのが見えた。
「武器を持ってるのか?」
シドに生きたままと言ったが大丈夫だろうか?
刺客はシドから逃げようと試みたようだが、シドが回り込んで逃げれそうになかった。
刺客はシドより確実に弱い私を見つけ、私に向かって襲いかかって来た。
シドがそれを許すわけもなく刺客の足元に剣を振った!
刺客の左ふくらはぎがスッと剣できられた。浅く歩けないほどの傷ではないが、痛みで一瞬カクッとバランスを崩した。
刺客はマズイと思い、手に持った短剣を私にじゃなく、馬に向かって投げた!
ヤバい!
私は慌てて手綱を引いて馬に当たらないように馬の向きを変えたが、剣は馬の前足をかすった。
馬は驚き、暴れだしてしまった。私は手綱を離してしまいそのまま落馬してしまった。
地面に叩きつけられると目をぎゅうっとつぶった瞬間にシドが私の下敷きになるように、落ちる私を抱え込むようにクッションになってくれた。
私を抱えたシドは慌てた様子で
「おケガはありませんか?」
その言葉と同時にシドの後ろから、足に傷を負って逃げられないと思ったのか、まだ隠し持っていた剣をシドに向かって振り下ろすのが見えた!!
私はシドの上に乗っている。シドは振り向けない!
私は腰の剣を抜き、咄嗟に刺客の剣を受け止めた!
私の力では押されてしまう!!
シドが私に守られた事に気づき、私が持っている剣を私の手ごとにつかんで、刺客の剣を払いのけた。
その間に診療所の入口にいた護衛が刺客の後ろに回り込んで、剣を刺客の首に当てた。
「殺すな!」
「はい!」
護衛は首に置いてた剣を背中に這わせた。
私はシドの上から降りて、シドが立った瞬間に
刺客は舌を噛んで自害した・・・・・・
護衛は急いで、刺客の口に手を入れ血をはかそうとしたが間に合わなかった。
「かなり訓練を受けた者でしょう」
シドは私が刺客の亡骸を見ないように前に立って視界を遮ってくれたが、私は現実から眼をそらさない為にあえてシドより前に出た
「シドや護衛の者たちにケガがなくて良かった」
その言葉を言ったら
護衛もシドも片膝を地面につけ
「もったいないお言葉です」
シドは先程と違い、優しく私に微笑み
「先程は私を助けてくださってありがとうございます。しかし、私が王子様を守り抜きますので、私の命はお気になさらず」
「嫌だ。私は私の大事な者達を守ると決めた。もちろん危ない目にたくさん合うだろうが、私の事も自分の事も守れ」
私は10歳ながらも凛として話す姿は次期王太子を思わせたのか、
「このお命はあなた様に捧げます。御心のままに」
シドは深々と頭を下げた。
「シドは王妃様の影だろう?」
シドはニコっと笑って
「王妃様より、王子様に付きたいと思えば、ついてもいいとお許しはすでに頂いてます」
母心か・・・・・・
信頼できるものを私の側につけてくれたんだな。
「今日より私の命のみに従うように」
私は自分の剣をシドに与えた。
剣の柄には私の印である個人の紋章が付いている。
信頼の証を私はシドに渡した。
「さぁ。早く王妃様のところへ」
護衛に後の処理を頼み、シドと急いで、城へと向かった。




