第30話 王妃の暗殺
王様との話しが終わって、部屋に戻る途中に王妃の影が近くに来た。
影の印である紋章を腕に刻んである。
紋章を確認してから
「王妃様に何かあったか?」
「はい」
やばいな。間に合うのか?
「医師と話せるか?」
「今、無事に城下へとお送り致しましたので、城下の診療所でお話しが出来ます。それと王妃様より医師に護衛をつけるように命じられましたので周りに気づかれぬよう護衛をつけております」
護衛をつける?診察がバレればその医師が狙われるのか?だとすれば……
「毒だったんだな?」
「詳しくは聞いておりません」
「わかった。今すぐ城下へ行く。人目につかぬように行くから護衛は1人影から連れて行く。護衛と道案内をしてくれるか?シド。」
「はい。仰せのままに」
王妃様より、影を借りているが、元々はカイルもシドも王妃様の影で私への忠誠心はない。
私もこれから信頼できる影が欲しい。
しかしまだ私は若すぎる。忠誠を誓ってもらえる器ではない。
私も努力しなければ。
「ありがとう」
私は部屋つきの護衛にバレないように
窓よりそっと抜け出した。
部屋は2階にあるが、シドが私を抱えてスッと一階まで降りてくれた。
「もう外は真っ暗なんだな。急ごう」
「はい。城の外に早馬を用意しております」
城の護衛に見つからない道を選びながら、城の外に出て馬で医師の診療所まで走って行った。
❄︎ ❅ *. ❅ ✥ ✣ ✤
え?
「今何て?」
執事が申し訳なさそうに
「クロエお嬢様の王子様への訪問は今回許可がおりませんでした」
「そう・・・・・わかったわもう下がっていいわ」
執事はスッと部屋から出ていった。
元々、イザベラ様の為に謁見を申請したのだから、先程お二人は会われたのだし、もう会う必要はなかった。だけど
一度申請したものを取り下げる事ができず、どうしようかとも思っていたからいいのだけれど。
こんなにも早くお断りの連絡が来るのは、少し寂しい気持ちになった。
側にいたジェミーが
「お嬢様大丈夫でしょうか?顔色が悪く見えますが」
「ううん大丈夫・・・・・・別に私が好きなわけじゃないし、こんな気持ちになるのは変だよね?」
「変とは?」
「イザベラ様のお屋敷でお二人は会えた。イザベラ様がお城に行く必要がなくなった。私はただ付き添いのつもりだった。でも申請をしたのは私なの。私が断られたって事になるよね?」
「うーん。そうかもしれませんが、王子様もお忙しいのでは?レオ様もお手伝いに行くぐらいですし」
「そうよね」
「お嬢様は王子様が怖い存在ではなくて、気になる存在に変わったのでしょうか?」
「え?」
私の顔は急に真っ赤になった。
「だって・・・・・第一王子様の行動は距離感が近いし、家族以外の男性とあんなに間近で話す事もないのよ?」
ジェミーはニコニコして私の話しを聞いている。
「確かに、夢の中で会いに来てくれた人だと思うけど、確認のしようがないし・・・・・」
「お嬢様がおっしゃっていたイザベラ様と婚約するはずだったのに、今は違った現状になっています。お嬢様が見た夢の中のような事が起こらないのであれば、私はお嬢様が王子様とご婚約するのもありだと思いますよ」
そうなのよね。
未来が変わっている。
もう冤罪で問われる事はないかもしれない。
でも・・・・・・
私は許さない。
私を私の家族を陥れた犯人を
私の中の黒い芽はまだ枯れてはいないのだから。




