第26話 アベルの初恋2
謎の少年が誰かわかったのなら、追いかける事はない。後日、呼び出せばいいだろう。
助けてくれた護衛に
「この件は、他に言うな。助けたのは君、第2護衛隊隊長キースで、私とアベルは側にいただけ。他に誰もいなかった。いいな」
護衛のキースは片膝をつき
「仰せのままに」
「それと、誰かに不審がられては、ならない。すぐに着替えて来て。」
「しかし、今離れるわけにはいきません」
それもそうか、城の中とはいえどこに刺客がいるかわからないのだから。
「じゃあアベルのいる部屋に行こう。そこなら、着替えるあいだ守ってくれる護衛が何人かはいるはずだ。」
「はい。承知しました」
私達は人目のつかない道を通ってアベルがいる部屋の前についた。案の定、護衛が2人部屋の前にいる。
「あれは?」
「第二王子様専属の第4護衛隊員であります」
間違いないな。
「じゃあ、今すぐに着替えて来て」
そういうと私についていた護衛キースは誰にも見られないように、すぐさまにその場を離れた。
私はアベルがいるであろう部屋の前に行き、
「第一王子様!!」
護衛達が跪き挨拶した
「立っていいよ。中は?」
「はい!医師が診察しております。そばには第二王子様もいらっしゃいます」
1人の護衛が
「お一人ですか?キース隊長が本日はお付きでは?」
「ここまで一緒に来たけど、あんなにびしょ濡れだと城中の者がびっくりしちゃうだろ?たった今、着替えにいかせたんだ。池の中にいた令嬢を助けたんだが、その令嬢が中の令嬢だよ」
「そうでしたか」
「中へ入る」
そう言うと護衛達は扉から少し離れてくれた
コンコンコン
「・・・・・・・・・」
ん?返事ない?
コンコンコン
「入るよ?」
カチャ
中からの返事はなかったが扉を開けた。
扉から中を見渡すと、アベルが心配そうにベッドで眠る令嬢の周りをグルグル回って、医師の診断を待っていたようだった。
そこに後ろから声がした
「ルーカス様!」
え?
私は驚いて振り返るとそこには、ミア嬢がいた。
「何でミア嬢がここに?」
「私も叫び声を聞いたのです」
そうか、忘れていたがミア嬢と一緒だったな。
どこまで彼女は見たのだろうか?
銀髪の少年の事は私が先に話しかけて置きたいところだが。
「私の護衛が助けたんだが、今着替えに行っている。アベルは変わりに医者を呼んでくれただけだ」
「そうだったのですね。私からは何も見えなくて、私はてっきりアベル様が・・・・・・」
「アベルは何もしてないけど?」
本当はアベルがここまで連れて来て段取りも全てしたのだが、今の私達に噂は良くない。令嬢にも迷惑がかかる。
「それでしたら、私が変わります!女性の方が何かと都合がいいかと、思いますが」
ミアは優しい笑顔で答えた。
その気遣いに今は甘える事にした
「あぁ。そうだね助かるよ」
アベルに向かって少し大きめの声で
「アベルー!もうホールに戻るぞ!!私達が、いないと騒ぎになる」
「あ、兄上・・・・でもまだ意識が」
側に居た医師が
「もう大丈夫です。もうすぐで意識が戻るかと思います」
その言葉にアベルは安堵した顔になった。
「ほら!行くぞ」
アベルは慌てて部屋を出て来た。
「後は私にお任せください」
ミア嬢が優しく微笑む
「ありがとう、ミア嬢」
アベルが珍しくお礼を言った。
ミア嬢の顔が少し赤らんでいた。




