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無知な令嬢に罪があるのなら真実を明らかにしましょう  作者: NALI


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第25話 アベルの初恋


3年前



「兄上・・・・・ボクも行かなくちゃいけないのかな?」


「アベルは行きたくないの?」


2つ下の弟は側室のカーリー妃の息子、私は王妃の息子。


「兄上がいたらみんな喜ぶ。だって父上の次に国王様になる人だから」



「アベル・・・・・それはまだ決まってないし、アベルが国王になるかも知れない。アベルにもその資格はあるんだよ」



「資格って何?」



「私達の金色の髪と金色の瞳は代々王になる者だけが受け継がれる。一度も違えた事などないんだよ」



「兄上でいいよ、ボクそんなのなりたくない」


「外でそれを言ったらダメだよ。アベルを利用して悪い事をする人が出て来たらいけないから。だから今日の王家主催のお茶会は必ず出席して、私達2人共が継承権があると示さなくてはいけないんだ。わかるかな?」


私はアベルが懐いてくれているのが嬉しい。


「わからない。兄上って決めたらいいのに」





「んー。それを望んでいない人もいるんだよ。今、私達は幼い。だから私達は平等であると示さなくては、私達2人共危ない目に合うと父上がおっしゃっていた」



「なりたいなりたくないではなく。国が民が僕達を選ぶか選ばないかなんだよ」



「兄上の話しは難しい」

私はアベルに優しく微笑んで頭をポンポンと撫でた。



「今日はたくさんの令嬢もくるから、未来の花嫁候補がいるかもしれないよ」


「はぁ?ボクそんなの興味ないよ!!」


アベルは心底嫌そうな顔をした。


私達はいつも王家について国ついて学んでいるが、世継ぎの事などは、妃は1人じゃなくて何人もいて、王家の血を引き継いでいかなければならないなど。恋愛というよりも国のためなのだから、夢も希望もない。


アベルの気持ちはわかる。



私もそれなりに妃教育を頑張ってくれて国を思ってくれるなら誰でもかまわない。






嫌がるアベルの手を掴んで、城の中にある大広間へと向かった。



今日は定期的に行われるお茶会ではあるが、私達の妃にと同世代の令嬢を連れて来る家ばかりだ。もちろん子息を連れて



国王陛下への娘のお披露も兼ねているようだが、実際は令嬢は13歳になり社交界デビューするまでは王家主催の夜会などへの参加も出来ない。


今回は、昼間のお茶会で限られた人達だけのお披露目会みたいな感じだ。



王家にとって利益がある家柄といえばわかりやすい。




案の定、お茶会は大人達だけが盛り上がり、子供達は退屈で仕方ない。



私は国王様の了解をもらい

「アベル、みんなを連れて庭園に行こうか」



アベルと庭園に向うと、1人の令嬢にアベルがぶつかってしまった。その拍子に令嬢は前方ヘつまづいてしまった。


アベルは慌てて


「ごめんね!大丈夫?」


すぐに令嬢に手を差し伸べた。黄色い髪のオレンジ色の瞳の女の子はとても可愛らしくニコっと笑って見せて

「こちらこそ王子様方の道を塞いでしまい申し訳ありません」

と綺麗なお辞儀をしてみせた。


同世代の女の子では見た事がないくらい可愛く、おしとやかだった。


それでも私の心が奪われる事などなかった。



アベルは違った・・・・・・・・・



「あ・・・・大丈夫?」

アベルの顔は真っ赤になっていた。


「はい」

そう言って令嬢は私の邪魔にならないように横に避けてくれた。


アベルは小声で

『うわ~天使かな兄上は天使を見た事ある?』



あるわけがない。



私達は、前を通り過ぎバラ園の方に向うと、ミア嬢が私達を待っていたのか声をかけてきた。

ミア嬢はカーリー妃に可愛がられて生まれてきた時からいつもお城に連れて来られているようだった。


「ルーカス様!アベル様!」


「やぁ、ミア嬢、1ヶ月ぶりかな?」


「はい!少し領地に戻っておりました」

そう言いながら、ミア嬢はチラッとアベルを見た。

いつもアベルはミア嬢と話そうとしない。


ミア嬢はアベルに前に一度だけ話しかけられた事が嬉しかったようで、また話しかけてもらいたくてウズウズしているようだった。


でも今のアベルはいつもと様子が違う



「あの、アベル様のお顔が赤いようですが、熱があるのでは?」


その言葉にハッとしたアベルが真っ赤な顔のまま

「違う!何でもない」


「そう・・・・・ですか」

赤くなった理由はともかく、アベルと話せてミア嬢も喜んでいるように見えた。



人を好きになるってどんな感じなんだろうか。



私はこの2人の気持ちが理解出来なかった。




その時

遠くの池の方で叫び声が聞こえた



「きゃー!!!」



私とアベルは慌てて声のする方へと向かった。



遠くから池が見えるところまで来ると

黄色い髪の令嬢が池に落ちていた。


池は見た目以上に深く作られておりドレスを着た女の子が這い上がる事など不可能だった。

しかも、大人は誰も外にはいない私とアベルの護衛以外は、


「さっきの・・・・・・」


アベルの顔色が悪くなっていく


私は護衛に

「すぐに行って!」


指示を出した。





私達も慌てて池へと向かったが遠回りで行く為に一瞬池が見えなくなる。




到着した時には、令嬢は護衛の腕の中にいた。


アベルが慌てて令嬢に駆け寄り自分の来ていたコートを令嬢の肩にかけ


「おい!大丈夫か?しっかりしろ」


令嬢はうっすらと瞳を開け

「ありがとう・・・・・ございま・・・・・・す」


アベルは自分の護衛に客間へと運ぶように命令した

「兄上、ついていってもいいですか?」


アベルは泣きそうな顔をした



「かまわないが、噂が立つといけない裏から入って医者を呼ぶといい」


アベルは誰も通らない道から城の中に入ったつもりだったが、叫び声は私達以外にも聞こえていた。一緒にいたミア嬢。


私達はすっかり存在を忘れていた。




私は気になった。私の護衛は確かに令嬢を抱えて池の淵にいたが、濡れていたのは腕だけ、

大人でも胸の位置ぐらいは濡れておかしくはない。


「誰が助けた?」


「はい、銀色の髪をした少年がすぐに池に飛び込んで、ご令嬢を仰向けにして引っ張るように淵まで泳いで助けてくださいました。私は引きあげただけです。」


「その者は?」


「すぐにどこかに行きました。目立ちたくはないと」



「誰かわかるか?」



「はい・・・・・・・・・です」


そうか、なかなか興味深い。手柄を立てれるのに、何も言わずに去るか。




私は他人に初めて興味を持ったかもしれない。














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