表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
6/40

霊夢・早苗編01「大媚脆慢のツリサレ妖怪」


 新興宗教「ねひりん教」が、他所の信者も吸い上げて力をつけているようだ。

 博霊の参拝客も持っていかれた霊夢はこれを異変と決めつけ、解決の手伝いを要求しに八雲紫の屋敷に押し掛けた。

 しかしどうやら八雲紫は、そしてついでに摩多羅隠岐奈も、賢者2人揃って「ねひりん」を一度は調査済み。

 その上で「ねひりん」にノータッチを決め込んでいる。知恵の1つも貸す気は無いらしい。

 わざわざ屋敷に突撃しといてくたびれ儲け。あったま来た霊夢は取り敢えず、早苗を無理やり巻き込んで独自に「ねひりん」調査を開始した。


「それで……霊夢さん? 私達、どこに向かってるんです?」


「あー……とりあえず、あっち」


「いえ、ですから……」


 巫女2人は適当な空を漂っている。強いて言えば、このまま「あっち」に飛んでけば、じきに人里が見えてくる。


「何よ。自慢じゃないけど、私ゃ毎度コレで異変解決してやってんだからね」


「毎度のソレが振るわなくて紫さんの所へ向かってたのでは……?」


 スルーされた。

 別に早苗も更に追求したりはしない。

 返事がないという事は、黙認するしかないという事なのは常識である。

 とりあえずの雰囲気で、巫女たちはダラダラ飛び続ける。


 一方その頃──。




 どっかの外れに、陰気臭いボロ屋がポツンと建っていた。

 ネズミさえ見向きもしないだろう程の忘れられっぷりだが、雨風を凌ぐには中々悪くない。

 何しろこのボロ屋、見かけはおどろおどろしいくせに建材はしっかりしており、お陰で光がろくに差し込まず、昼日中でも屋内に真っ暗闇ができるほどだった。


「クソ……何なんだここ……」


 そんなボロ屋を閉め切って、体育座りしている男が居た。

 いかにも寝不足続きのたるんだ顔で無精ひげ、幻想郷で暮らしてるにしては生っ白い肌をしているし、しかもヨレ気味のスーツを着ていた。


「俺……電車乗ったんだよな? 朝イチで、電車来るってアナウンス来て、その後……思い出せないけど、多分乗ったんだよな? 何だよここ……」


 ポケットから長方形の板を取り出す、多分アラサーの男。

 手探りで板のフチをグイグイしたり、スベスベした表面をトントコ叩いている。板で遊んでる男の顔が段々、このボロ屋の中に負けないくらい暗くなっていく。


「あぁ、電池切れた……携帯も圏外とかマジでどこだよ。何駅で降りたんだ俺、頭どうかしてんじゃねえのかクソ……。ハァ~、完全遅刻だよな……また実家にまで電凸して来るんだろうな、ちくしょう……」


 誰も聞いてないのに膝を抱えてブツクサ喋り倒していると、男は背後からポンと手を置かれた。ビジネス的な意味で肩叩きの構図。


「ひっ!?」


 過剰に飛び退いて振り向いて見るけど何もない。

 というより何も見えない。それでも驚くには十分。

 このボロ屋には男一人のはずだったし、座り込んでたすぐ後は壁だった。紙っぺらみたいなスキマに入れるくらい平たくないと背後は取れない。


「……おつかれですかぁ~~?」


「ひぃ、お、女!? ……の、声?」


 またまた背後から声がする。見下してクスクス笑ってそうなイントネーション。振り返ってもやっぱり暗闇。

 このボロ屋、外から見ればガタガタだが、閉め切ると日本晴れの下でも玄関のフチくらいしか光が射さない。現役だったら良くて物置、住むなら欠陥住宅間違いなし。


「だぁいじょぉ~ぶですよぉ? もう遅刻もお家も気にしなくて良いんですから……」


「だ、誰だ! どこに居るんだ!?」


 正体探してグルグルヨタヨタしていたら、真っ暗な壁にぶつかる男。

 いかにも勿体つけてる声に男は面白いくらいパニクってるので、そのまま壁と背中をピッタリ貼り付けた。電話口からあなたの後ろに居た時のためのライフハック。

 とにもかくにも怖いので更にひと手間。壁沿いにズリズリしながら光射す玄関へと移動。

 暗がりでお化けに会ったら明かりがあれば大丈夫とかいう、根拠のないよくあるマイルール。


「いけませんねぇ~」


 声は、男の背後から聞こえた。

 細い少女の腕が男のスーツを這っていた。

 マドモアゼルなら抱きしめ殺せそうなくらい羽交い締め。

 壁と密着した男の後頭部の、更に後ろから声がした。


「新しい人生がお出迎えなんですよ……もっともぉ~っと、真っ暗な所に行きましょうねぇ……」


「ひっ、あ……うわああああああ!!?」


 男は絶叫した。ただし、腕とか声とかのせいじゃない。

 悲鳴をあげようとした直前くらいでボロ屋の玄関が一直線に吹っ飛んだせいだ。びっくりして予定より倍くらいたっぷり声が出た。


「ありゃぁ?」


「おわっ!?」


 ボロ屋の、元からなのか家財撤去の結果なのか壁なしワンルームな屋内に光が入ると、男は後ろからドンッと……もといグニョーっと押し出された。

 すっかりビビっていた男は押されるままヘナヘナ床に座り込んだ。

 穴と化した玄関の外から声が近づいてくる。


「霊夢さーん、なに寄り道してるんですかー?」


「な~んか怪しいのよね。こういう時はだいたい仕事が転がってるの」


 のっしのっしと、紅白の少女が上がり込む。後からひょっこりと、緑で白の少女も覗き込む。

 2人の少女が見つけたのは、土下座準備みたいな姿勢のスーツの男に、少女が1人おぶさってる姿だった。

 男の方は「わけが分からない」という顔をしていた。

 少女の方は「こいつぁやべぇ」という顔をしていた。

 どっちも目を見開いてポカンとした感じなのは同じだった。


「ア……ア~ララララララララ……」


「はて? どっかの原住民の妖怪ですか?」


「居たら拝んでみたいもんだわね」


「じゃあ、スキャットの妖怪?」


「は?」


 おぶさってる少女が冷や汗垂らしながら間投詞。さっきまでのトークと打って変わって震え声。

 霊夢は早苗の例えがよく分からないので、否定的な返事だけしといて目の前の男女に集中する。

 巫女2人には、男に乗っかってる少女が妖怪であると一目で分かった。

 理屈なんていらないでしょ。要は慣れよ、慣れ。じゃなきゃ可憐な乙女の勘。


「何かと思えば……その服、『外の人間』でしょ? 全く、半分ハズレじゃないの」


「へ……外? ごめん、お嬢ちゃん……何の話?」


「良いからどいたどいた。仕事の邪魔よアンタ」


 自分から質問しといて全く無視する博麗霊夢。とりあえず後についてきながら東風谷早苗は、騒ぎで舞い上がった塵で小さくクシャミしている。

 ズカズカ男に歩み寄ると、男の背中の妖怪少女が飛び退いて、足の裏と尻で後ずさる。


「おおおおおおお待ち下さぁいなぁあぁあぁ! ちゃちゃ、ちゃんと賢者の取り決めは守ってますからぁ! わたくしはあくまで、妖怪の生きる糧と本分をぉ……!」


「そしてシバかれる。そこまでがアンタら(妖怪)の本分でしょうが」


「霊夢さん霊夢さん。私、初対面なんですが、どういった妖怪なんです?」


「夜道怪……とりあえず『人さらい』よ。暗闇を出入り口にして、専用の空間に人間を連れ込んでどっかに閉じ込めるの。確か……引きこもり空間とかいう」


「ひ、人さらい空間(自称)です!」


「似たようなもんでしょが」


「なるほどー……つまり、退治して良い方の妖怪ですね!」


「あひっ、ノーカン! ノーカンです! 外の人間は私達のエサとして寄越されてるはずです! 幻想郷の人間の暮らしは害してません!」


「その……お嬢ちゃん達もしかして、ごっこ遊びかい? 何かそういうアニメやゲームでも流行ってて……」


「いえ、コメントにちょっと困りますけども……と、とにかくちょっと表で待っててください。悪いようにはしませんので」


「はあ……えっと、じゃあ、まあ」


 すっかり蚊帳の外の男が口を挟む。「ここは私が何とかしないと」というニュアンスで早苗が優しく退場を促す。

 そこはかとなく、「まだ居たのか」なニュアンスが無くもない。霊夢は露骨にそんな顔で男を睨み返してる。

 曖昧な返事しながら男がすごすごボロ屋の外へ去る。


「んで……アンタ、確か『よみち』って名前じゃなかった?」


「あ、は、はいぃぃ! 巫女さんにお見知り置いていただけるなんて光栄ですぅ!」


「何か、私が知ってるタイプの妖怪より、しみったれた感じですね……」


「そういう妖怪だもの。とにかく『よみち』。アンタ勘違いしてるみたいだから、ご親切に教えてあげる」


「へぁい……?」


「人間が居て、妖怪が居て、人間が妖怪に襲われる。巫女が駆け付けて『ノす』。そこまでが『るうちん』ってやつ。生まれも育ちも関係ないの。老若男女にも病人にも汚らしい貧乏人にも、妖怪が妖怪やってる限り、私がセットでついてくるのよ」


「あの、そ、それは……」


「それはつまり……スーパー退治タイムですね!」


「ちゃっちゃと済ましたいから手伝わせたげる」


 腰抜かしたみたいな少女を見下ろす、片方は指でも鳴らしそうな迫力の少女、もう片方はワクワクしてる少女。

 暗闇を出入り口に云々と言っても、玄関から中途半端に日光が届いているので、逃げ込むような暗闇もない。

「あひぇ~~~~~」みたいな情けない悲鳴が響いたとか響かないとか。




 軽い運動で活力も湧いてきた若さ溢れる霊夢は、ボロ屋の内装をぼんやり見上げている。


「どうかしたんですか?」


「いつだったか、こんな感じのオンボロの家に通ってた時期あったような……もっとデカいとこ」


「おっきな空き家、ですか……?」


「ギリ空き家じゃなかった気がする。所々ペシャンコになったまんまで店主が住んでて……店主? ……あ、思い出した」


「それは何よりですけど」


「次、久々にソコ行くわよ。客に『ねひりん』絡み居ないか聞き出せるかもだし」


「本当に行き当たりばったりなんですねえ……」


 呆れるやら感心するやら。ともあれ次の目的地は決まったらしい。

 霊夢の後を追うようにして、早苗もボロ屋を出る事にした。











「ところで、さっきの外の世界の人、どうします?」


「気になんなら人里の方角でも教えとけば? 放っといてさっさと行くわよ」


「えー……でも、右も左も分からない状態ですよ? 方角だけ教えたって無事に済むか……」


「んなもん生まれたばかりの赤ん坊でも一緒でしょうが」


「えぇぇ……安全な所まで案内とかしないんですか? 襲われてる所を助けたのは何だったんですか?」


「は? 巫女なんだから妖怪退治して当たり前でしょうが。人間が狙われてたら何とかするけど、後で人間がどう生きるかなんてソイツの自己責任で(巫女)にゃ関係ないでしょ。異邦人が説明なしに放り出されようが、金持ちの家に手足も脳みそも無しに生まれて来ようが一緒よ。びょーどー」




今回含めて登場したオリキャラは、ある程度進めた所でまとめて紹介する予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ