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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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魔理沙・文編06後編「名顕業威のハカライ巫女」


 妙蓮寺から人里へ続く道中。行進する光の巨人。足音は空気を揺るがすほどなのに、足元の草木は踏まれも蹴られもせず光をすり抜ける。


「あーもう、ほんと調子狂う!」


 霊夢がボムを発動。複数の大玉が弾幕を掻き消しながら散り、弾幕の主へホーミング。

 しかし軌道がなんだか遠慮気味。教隕だけでなく魔理沙と文のタッグも同時に相手取る慣れない状況、ボムもどっちを狙って飛んでけば良いのか右往左往。

 教隕操る光の巨人には肩に命中。搭載された光の連装砲を吹き飛ばしてひとまず面目躍如。一方、魔理沙と文は大玉をスレスレ回避。命中する前に時間切れで立ち消えた。


「やれやれ、霊夢の弾幕にはいつもガッツが足りないんだよなあ、うんうん」


「木っ葉に礫を払った所で、風を絶てねば無駄骨ですよー?」


 煽りまでもらって霊夢舌打ち。耐久弾幕でも無しにボム撃って無傷は腹立つ。

 腹いせに霊夢がターゲットを教隕から魔理沙達に切り替えようとした矢先、魔理沙達が顔色変えて急ハンドルで離れてく。

 それ見て察した霊夢は、隣の早苗の頭を踏み台にして上昇。


「なんで!?」


 嘆いてみても踏まれた頭は戻らない。かなり本気目でつむじに直撃して患部抱えてズルズル下降していると、早苗もそろそろ周囲が眩しくなっていってる事に気づきメンタル切り替え。全速力で落下して退避。

 直後、霊夢と早苗の中間に光の手のひらが、蚊を退治する時みたいにバチーンと重なる。2人とも何とかグレイズ。

 じっくり離れていく手のひらに息を呑んでる暇もない。巨人はサイズの割に動作が機敏。すぐさま挟み撃ちが再開。誰が狙われてもついでに全員が射程圏内。潰されるだけじゃなく、広げた指先にぶん殴られる危険もあり、一同揃っててんてこ舞い。


「早苗! いつまでもボサっとしてんじゃないわよ! キリキリ手伝って、私以外をトットコ撃ち落として、でもってキレイサッパリ自爆しなさい!」


「何からどう文句つければ良いんですか!?」


 霊夢は早苗に目も耳もくれず、手のひら避ける片手間に魔理沙と文へショットを撃ち続けている。

 返事がないという事は、何をどう認めてるという事なのか。これがちょっとわからない。

 安全確認東風谷早苗。光の柏手は、今の所は魔理沙達をメインに狙って動いてる。確かめてから行動開始。

 何からどう文句つけるにしても、いの一番に言いたい事は決まってる。

 霊夢のすぐ目の前に下からズズイと割り込んだ。


「ちょっと早苗、邪魔するくらいなら──」


「すぅ、はぁ~~……今、こんなバカみたいな戦い方してる場合じゃありません!!」


「……はい?」


 必要以上に覗き込んでくる早苗さんの目には、正義チックな炎がメラメラと。


「『はい?』じゃないです! 強敵なんですよ? 仮にも4人相手して渡り合ってるような強敵! 私達、幻想郷の平和のために戦ってるんじゃないんですか!?」


「いや普通に仕事だからやってるだけだけど」


「そんなものどうでも良いじゃないですか!」


「いやいやアンタが問いただしてきたんでしょうが……」


「とにかく! この場で必要なのは、やったやられたとか、誰が得するかとかじゃ無いと思うんです! 必要なのは……えっと、信じる心みたいなやつとか、手を取りあうみたいな? そーゆー何かフワッとしてるけど格好よさげな、とにかくそういうアレです!」


「いやいやいやそういうアレとか言われても全然心当たりないし……」


「何でも良いから、私を足場や砲台みたいに使うのをやめて、魔理沙さん達とも仲直りして、一丸となって戦うべきです! これが一番大切なんです。なんたって王道です!」


「いやいやいやいや……そもそも『仲直り』も何もアンタ……」


「良いですか。ゲーム理論って言ってですね。誰かを出し抜いて得するより、全員で努力する方が一人頭の利益も──あ」


 早苗が自分の演説に酔い始めた頃、その両脇を抜けて魔理沙と文が教隕の懐に飛び込んでいった。

 さっきまで光の手は魔理沙たちを狙っていて、その魔理沙たちが早苗たちを経由しながら移動したという事は、つまり博霊の巫女じゃなくてもすぐ勘付く。

 冷や汗浮かべて早苗が振り向くと、光の手が一対、軽く開いた形で、腕を交差させて迫ってくる。自分で自分の首を掴みに行く途中のような動作。


「あわわわわぁっ!?」


「ゔっ」


 早苗さんは霊夢を突き飛ばしながら反動で退避。ついついうっかり条件反射。過失は問えても緊急避難。

 そして後ろで巫女達が慌ててる間に、スピードで余裕が作れる魔法使いと烏天狗は光の巨人の頭の方へと接近。


「こいつでいってみましょうか!」


 文がボム発動。文の背後から前方へと、円柱を描くように突風が吹き込む。

 文と魔理沙がその場を離れてもボムは発動した座標に残り続け、突風で巨人の首に風穴を空けた。

 胴体との接続が断たれた頭も伴って掻き消えるが、巨人の歩みに支障は見られない。


「やっぱ駄目ですねえ」


「う~む、化け物は首を飛ばすのが定番だと思ったんだが」


「アレはただの、人の形に膨らましたハリボテだそうですからねえ。やっぱり教祖本体を叩かないと」


「こら~! 魔理沙さんも文さんも~!!」


 ドンマイムードの2人に、どうにか光の手を回避してた早苗が遠くで怒鳴る。


「物のついでみたいに巻き込まないでください! 私達、同じ敵に立ち向かう仲間じゃないんですか!? 大切なのはですね──」


「四の五の言われたって、弾幕は遊び(ゲーム)じゃねえしなあ」


「譲れないラインがあるから結局出し抜きあうんですよ、ナンセンスです」


「ぬあ……全部聞こえてた……」


 ガックリする早苗。本人としては会心の決め台詞のつもりだったが誰のセンスにも響いてない。


「早苗ね。アンタ、理論だとかいう迷信持ち出す時点で、何もかんも台無しよ」


「そんな~……」


 当然光の手を凌いでた霊夢が早苗の隣でダメ押し。まだまだ外の世界に囚われている。


「さぁさ魔理沙さん、霊夢さんは守矢のおもりで忙しそうですし、今の内に畳み掛けちゃいましょう」


「おう、そりゃまあ言われなくてもやるが……お前もお前で、何で急にイケイケになったんだ?」


「あや、もう頭冷えちゃいました?」


「失敬な。私の頭脳はいつだって最高潮フルスロットルだぜ」


 話しながらちょっと見ると、巨人の胸の教隕と視線がぶつかる。

 教隕はニッコリ笑って己の肩から光の拳骨を魔理沙たちに連射しつつ、脇から生やした腕に札状のものを数枚取り出させて吟味中。

 素人丸出しで次のスペカ選んでるとか、まだまだ余裕そうだなコイツ。


「──って事ですよ。……ちゃんと聞いてました?」


「ん? おお、聞いてた聞いてた。そこまで言うならこの後、一杯奢られてやろう」


「やっぱり聞いてないじゃないですか……ですから、教祖が勝とうが負けようが、『ねひりん』の活動は障碍の神の利益になるんだと言ってるんです」


「隠岐奈の? それはまあアイツが自分から言ってたしな」


「それだけならまだしも、先だっての弾幕ごっこ、アイツは自ら『河原者』を強調してました。同じ障碍の民をルーツに持つ天狗を差し置いて、『ねひりん』は秘神の続柄だと既成事実をぶち立てたって事です」


「ん~? ……で?」


 教隕の弾幕は現在、(くだん)の拳骨連射の他、いい加減に巨人の手刀が右へ左へ行くばかり。こんなに薄くちゃ食らってやるのも難しい。

 代わりに巨人の胸から巨大な手が一対、教隕を庇うように生えている。防御を固めてるつもりらしい。

 その手の中へ、早苗が霊夢を引っ張りこんで教隕に攻撃中。霊夢は魔理沙たちを狙いたがってるが早苗がビシバシ妨害するので仕方なく付き合ってる。

 こりゃあまだ少しかかるな。削るのはアイツらに任せて、トドメを派手にかっさらおう。


「全然分かってませんねえ、この人間お嬢さんは」


「お前までやめろ、『お嬢さん』は!」


 良いですか、お嬢さん。お山での残念なクサビラ神を思い出してください。

 アレはキノコを司っています。つまりキノコを敬い崇める者があれば、信仰の一部は間接的にクサビラ神へも流れていきます。

 そしてクサビラ神というのは、あんなのでも日本古来の神々の系譜に縁がありまして、つまりクサビラ神への信仰は祖となる神霊の信仰を下支えするものとなるのです。

 例の賢者は同じ仕組みを新たに作ろうとしているんですよ。先ほど魔理沙さんが“落っこちこんで”いた時に教祖に取材したんです。

 教祖は言いました。あの巨人の正体は、恵まれぬ者たちが願う事で膨れ上がったチンケな信仰の姿だと。それで思い出したんですよ。

「『ねひりん』の信者の基盤は、河原者と一緒くたに混ぜられがちな、私の大嫌いな『ソレ未満』どもだ」ってね。そして秘神もまた、障碍の神で被差別民の神……幸せ者たちが一括りにしてくれてるお陰で、教祖と賢者は同じ『田んぼ』を囲ってるんですよ。

 秘神はわざわざ後戸の国から飛び出して、「ねひりん」と関係があるかのように立ち回って事実をでっち上げ、そして巨人は幻想郷に「ねひりん」の印象を刻みつけた。私たちはまんまと(えにし)の証人にされたんです。

 こうなった以上、半分は手遅れと言わざるを得ません。クサビラ神と祖霊の関係と同じです。今後「ねひりん」と教祖が幻想郷に居座るだけで、椅子温めるだけの賢者には毎日自動で信仰という名の収入が舞い込む。つまり、秘神が信仰得る上で申し訳程度の欠点だった開けるな見るなのタブーが、いよいよ本格的に克服されたんです。そりゃあ舞い上がりもするでしょうね忌々しい。

 だからこそ一刻も早く、天狗である私の手で成敗されたという図式を刻まなければならないのです。一矢報いるために。

「ねひりん」は天狗に破れる。その「謂れ」をねじ込めば、不用意な繋がりを得た背後の賢者へのカウンターにもなりえます。同じルーツのクセして抜け駆けして旨い汁すすろうとした報いを与えねばなりません。

 そもそも山や河原で「ねひりん」が集会開いてたのも、アレの入れ知恵だったのかもしれませんね。天狗に連なる、かつて山に隠れ棲んだ数ならぬ者のシェアを、「ねひりん」中継して自分の元に取り込もうとしたのやも……。


「勝手に話進めてるようだが、つまり……何だ? ここで天狗が『ねひりん』をやっつけたって実績作っとかないと、天狗のメンツが丸潰れって感じか?」


「さっすが、偉い偉い♪ この際だから改めて申し上げますが、妖怪だって信仰と無縁なわけじゃありませんからね。なんたって心意気の命が持ち味なのです」


「結局身内の損得じゃねーかよ、あほらし……まー私は霊夢に勝てりゃ何でも良いが」


 教隕が、霊夢のショットを食らったりしながらニコニコ魔理沙達を眺めていたのをやめ、スペルカードを一枚掲げる。

 巨人の腕が大きく前に伸びて、手を組み合って輪っかを作る。

 更に巨人の胸から生えてた手が完全に組み合って、教隕と霊夢と早苗を包み込む。

 巨人の腕の輪の内側と、胸から生えた手の外側から、魔理沙たちを挟み込むように弾幕が撃ち出された。


「何だよ分断も出来るんじゃねえか。しかも霊夢たちだけ手の内に囲い込むとは、寝返ったか?」


「んにゃー、多分あの中も私達と似たような状況なんじゃないですかね。むしろ上下左右囲まれてもっと厄介やも……」


「つまり、当て推量で当てとけば良いわけだな!」


 2人のショットが巨人の胸の手へ適当に撃ち込まれる。

 光の手の適当な所が適当に抉れて、適当に穴が空いたりして、適当な所を突き抜けて手の内にショットがランダムに飛び込んでくる。

 文の想像通り、掌中全天球4πラジアンから弾幕に見舞われていた霊夢達にとっちゃ心の底からザケンジャネエだった。


「文さーん! 魔理沙さーん! 待って!!! 聞こえてたらどうかワヒェイ!?」


「クんのアイツらぁ、後で覚えてなさいよ……!」


 弾幕の軌道を読んでる真っ最中に上から斜めから予兆も無しに飛び込む流れ弾。それにもし見た目通り、弾幕の構造無視して全くデタラメに流れ弾が舞い込むような状況なら、巡り合せによっては詰む。

 それを察してか、教隕からフォローのコメント。


「まあまあ。弾幕の軌道をよほど悪くする弾があるなら、精一杯に防ぎますゆえ」


「気休めにもなんないわよ! 向こうは広々空間取れてんでしょ? 撃ち返すこっちが断然不利じゃない!」


「ちょ、霊夢さん! 私達から魔理沙さん達を倒さなきゃならない理由無いはずです!」


「弾幕ごっこに割り込んできたなら理由なんて無くて十分。それに放っといたら魔理沙たちがたまたま教隕にトドメ刺しちゃうかもでしょ。『私がブチのめしたんだぞ』って幻想郷に知らしめられないじゃない」


「何で今日に限ってそんな野心バリバリなんですか。らしくないですよぉ……」


「何ワケ分かんない事言ってんの、今の私が常に誰より私に決まってんでしょうが。それにそう言うアンタはどうなの。自分トコの神様に虚仮にされっぱなしで満足なの? 現人神ってのはプライドの欠片もない卑屈な神様だって?」


「え、ええ!? 何ですか急に! 私はそんな風に思った事ありませんし、神奈子様たちだってそんな、人を駒みたいに考える三下じゃありません……たぶん!」


「早速自信なくなってんじゃないの。ちったあ目の前の私達の状況見てみなさいよ。朝から夜まで働かされて、人里まで繰り出して取り調べたら周りは疑われる方の味方ばっかり、異変解決中だってのに応援の1つもありゃしないで、子供の使いみたいに山と人里を行ったり来たり……巫女なんて所詮そんな扱いって事じゃないの!」


「ソレなんかもう色々偏ってます! 夜までかかってるのは今日一日の話だし、同じ里で暮らしてる同士を疑われたらまずは庇いますし、そもそも人里が迷惑するような事起きてませんし、行ったり来たりは私達が自分で調べて自分の足でそうしたんじゃないですか!」


「正論なんか知るかっ! 巫女()のメンツは(巫女)が復権するしか無いの!」


「もう文句とか後にしてマジメにやってください! 最終決戦はわだかまりとか捨てるのが定番なんです!」


 どんどん話が脱線していく。そのうち爪が出そう。霊夢は既に早苗の胸ぐら握りしめてる。


「隙あり、ですかな?」


 手の内ほぼ全方位から一粒玉発射。

 弾は霊夢達へと収束する軌道。じっとしてたら逃げ場が無くなるが、弾速は遅いし、まだ弾同士の間隔も広い。何も知らない1周目プレイヤーへの悪質ないびりでも無けりゃまず当たらない。


「いま取り込み中だっての!」


「あ痛っ!?」


 霊夢は教隕に文句言いつつ退避。早苗の胸元パンチした反動を使いながら。


「何すんですか!?」


「さっき私の事も突き飛ばしたんだからおあいこでしょが」


「あ、あれは事故です! ちょっと運が悪かっただけです!」


「文句は後にしてマジメにやるんでしょ? ほら、弾幕もう来てるわよ」


「え……ああ!?」


 全方位の弾がほぼほぼ重なり合っている。早苗の当たり判定だとちょっと厳しい。完全に収束する前に弾同士の軌道が交差してもう一回間隔が開いたりしたらいいなーと期待する方が現実的。


「い、い、異変解決とか人里助けようってヒーローなら、困ってる味方は助けるもんじゃないんですか!?」


「だから仕事でやってるって言ってんでしょ“緋緋色”がどうとか知らんわ。アンタんトコ同じ巫女でも商売敵だし」


「一気に冷ややか!? つ、突き飛ばした事ならちゃんと謝りますから! ほら、正義の味方っぽく盛り上がる勝ち方した方が、話題にもなるし何より気分良いじゃないですか! ね!?」


「しかし、なぜ盛り上がるかと思い致せば、それがひとつの『理想』だからではありませんかな?」


「いま取り込み中なんですが!!!」


 割って入るピンチの元凶。絶叫混じりで突っぱねる早苗さん。

 そして誰が横から首突っ込もうがお構いなしの博麗霊夢。


「勝ち方がどうだとか知ったこっちゃ無いわよ。わざわざ出向いて吹聴するでも無し」


「理想を実現するには、残酷なほど多くの力と積み重ねが必要となるものです」


「で、ですからそんな……って、え、ど、同時!? ステレオ!?!?!」


「勝って平和になれば、人間に取っちゃそれで十分。『誰のお陰か』がついでに分かれば、他の事なんざ炊事洗濯の足しにもならないわ」


「理想の行いは、一朝一夕の口上では至れません。だから尊ばれる。物語にて、正義の言葉が強い意思を容易く溶き解すのも、それが良しとされるのも」


「ちょ、ちょっと待ってくだ、さ、あの、だ、弾幕が……!」


「そもそも早苗の言う気分良い勝ち方するのって、早苗の思い通りに周りがへつらうって事とどう違うわけ? 結局私が駒扱いじゃない」


「共闘すべき第三の敵もまた、理想ですな。第三の敵は孤立無援でなくては成りませんので。争いの結果が優しい世界を伴うとなれば尚の事」


「ちょっ……まっ……だんっ……まっ!」


「やりたい事があるなら、一番の解決法はやり方選ぶ事じゃなく、ひとまずやって済ます事でしょうが。妖怪1000匹いじめときゃ地元の救世主よ」


「罪多き此岸に培える善徳とは、後から帳尻を合わせるものがやっとでしょうな。全人類に得られぬものをこそ、叡智に正義と呼ぶのです」


「正しい行いなんてのは、見せて、聞かせて、認めさせられるように、まず他人を分からせてからやるもんでしょうが」

「正しい行いというのは、見せて、聞かせて、認めさせられるように、まず周囲を知ろしめてからなすものですから」


「……カ……ス……マ…………」


 もう何を呟いてんだか分からない早苗から光が放たれた。

 異質な色の光が、早苗を包む光の両手を突き抜け、その外を囲う光の両腕を取り込み、1秒そこら。

 しょうたいがつかめない無差別攻撃が異色の光の中を駆け抜けて、弾幕もショットも全て炸裂して燃えカスみたいに情けなく消えていった。

 不意打ち気味に魔理沙と文も攻撃に晒されたが、どうにかとにかく無事。


「び、びっくりしたぁ……カウンター的な弾幕ですか?」


「いや、今のは多分、アレだ。ああいう奇っ怪なのは大抵、早苗のボムかスペルカードだ」


 ボムが終わると、光の巨人の厚みが半分くらいになっていた。

 胸の手も両腕も弾幕と一緒に消え去って、射程に巻き込まれた巨人の足も大きく削れて、バランス崩して膝をついた。

 初めて巨人の侵攻が力ずくで止まり、「おおー」と称賛の声があがる。当の教隕1人から。ついでに拍手もしてる。


「早苗……アンタねえ……」


 間近でボム食らった霊夢は不満たらたらの顔。袖がちょっと炭になった。


「……コ……」


 うなだれて、封じられたパワー開放した後みたいなポーズしてる早苗が、ボソッと奇声漏らしながら顔を上げた。目ん玉グルグルだった。


「こ、コ……コレガ! 幻想郷デ最モ、正シイ、カイケツ!!」


 東風谷早苗、幻想郷の流儀、最新バージョンインストール。

 口から湯気吐きそうなくらい息が荒い早苗の目が教隕をロックオン。

 睨まれた教隕は驚きもせず、何やら「うんうん」と感慨深げ。

 光の巨人の腕と足が再生し、再び立ち上がる。厚みも復活したので、教隕は拍手してた自前の腕を引っ込めて巨人に埋め直す。

 巨人の前半分が削れて透けて見えかけた、巨人の背中に作られた光の足場に腰掛けてカバノアナタケの煮汁を啜るシタンの姿も、誰に気づかれる事無く隠された。

 教隕が自身の脇から再び腕を生やして、スペルカードをカードゲームの手札みたいに広げる。

 唯一戦い方に拘っていた早苗のブレーキがぶっ壊れて、(一応)4人2組全員が火力を惜しまなくなった状況で、むしろ教隕は楽しそうだった。


「争うと決めたなら、まずは争ってから、ですな。いよいよ全力ご拝覧。皆々様の全力が注がれてこそ、『ねひりん』様の行く末を示すに相応しい……」




終わりが近づくと、文章量はそれほど変わらないのに筆が遅くなる不思議。

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