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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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霊夢・早苗編06後編「七嵐八輝のシクロク彗星」


 人里へと歩き続ける光の巨人。

 最初に追いついたのは博麗霊夢。

 間近で見るともう壁にしか見えない巨人を回り込みながら、陰陽玉を掲げる。


「止まんな……さいっ!」


 霊力満タンの陰陽玉は、巨人の胸の縁あたりから投げ出され、投球後間もなく大きくスライダー。まだよく見えてもない教隕の佇む胸の中心線辺りで、運良く鋭い曲線がピークに達し、教隕の鳩尾へ飛び込む軌道。

 迎える教隕は肩から背中にかけて自分と同じ体格の光る上半身を生やし、しかも上半身は腕だか脚だかの一本を棒切れのように両手に持って振りかぶり、飛び込んでくる陰陽玉へジャストミート。

 逆再生の軌道プラス移動し続ける霊夢への偏差も加味したピッチャー返し。直感で備えてた霊夢が陰陽玉を両手でキャッチ。


「くそっ、引き分けか!」


「どれがどう勝敗だよ?」


 興味本位で眺めてた魔理沙が合流。霊夢から返事は無いが魔理沙は気にも留めない。返事がないという事は取るに足らないという事。常識的に考えて。

 そんな事より口火が切れたら秒読み目の前。軽口の陰でエモノのコンディション確認。

 山でのお返しにちょっとくらい巻き込んでもバチは当たんないだろ、へっへっへ。


「あ、そうだ魔理沙、忘れもん」


「あン?」


 霊夢が魔理沙の眼前に持っていった手は横一文字に開かれていて、その手の上に何も乗ってなくて。つまり、顔面に水平チョップ。

 不意打ち食らった魔理沙は「グァッ」て感じにうめいて落下。

 そうこうする内、霊夢単体で教隕とご対面。

 教隕はにっこり笑って小さく手を振りお出迎え。


「おっし、これで邪魔は入らないわね。さあ、おゆはん作る時間も惜しいんだから、さっさと退治されてもらうわよ!」


「それはそれは。私としましても──」


「霊夢さぁ~~~~ん!!」


 ぶった切る、イメージカラーがグリーンな声色。上から来る東風谷早苗。ちょっとおこ。


「見ましたよ霊夢さん! 魔理沙さんに何て事してるんですか! せっかく仲間とかそういうアレで盛り上がりそうなトコなのに!」


「ちょっと、空気読んでよ……これから異変の元凶とやり合うって時に」


「おや、墜落はしてないみたいですよ。魔理沙さんもしぶといですねー」


 ぷんぷん丸な早苗の横で、いつの間にか追いついてた射命丸。

 見下ろす先では豆粒みたいな魔理沙が空中で立て直し中。


「あ~もうどいつもこいつも! 博霊の巫女が仕事してやろうって言ってんの! 全ての野次馬は道を譲りなさい!」


「野次馬とは何ですか! 一緒に同じ敵を追いかけた同士なのに!」


「そうだそうだー、横暴だー。そもそも急に何のつもりです? いつもはやる気あるんだか無いんだか微妙な感じのクセに、珍しくいきり立っちゃって」


「ブン屋の知ったこっちゃないわ!」


 一方、喧々諤々を好々爺みたいな笑顔で見守る教隕。傍らに蝶でも飛んでるのが似合いそうなノホホン顔で割り込む気が全く無い。巨人の足取りまで止めてわざわざ待ってやってる。


「いいから、そのカメラも手帳も、しまえ!」


「おぉっと、怖い怖い」


 掴みかかる霊夢をフィジカル回避して、そのまま教隕の隣まで急接近する文。


「お仲間の取材がままならないなら、こっちからやるしかありませんねー。そう思いません? 教祖サン」


「まあまあ。賑やかなら結構な事ですよ」 


「あっちこっちフラフラしてんじゃない! いつからコウモリに転職したの!」


「れ、霊夢さん落ち着いて……」


 早苗はとりあえず、霊夢を後ろから羽交い締めて、今にも乱闘しそうな霊夢を抑える。

 早苗はついでに「いつもの霊夢さんらしくないなー」とも思っていた。早苗のイメージでは、霊夢は誰が手伝おうが邪魔しようが「好きにすれば?」とか言いそうな所がある。

 しかし茶屋の件もあるので、お腹すいたとか一日働き詰めとかで気が立ってるのだと納得する事にして、詮索するのはやめた。


「所でまあ、何とも見事な威容ですねえ。都の大仏様でもこうはいかないでしょう」


 ブン屋は権威も野次も気にせず取材を強行。

 ふざけちゃいない。むしろギリギリ。ここが理性と本能の壇ノ浦。この取材を逃せばもう、文もその場の調子に流されて、遮二無二巨人とやり合うしかない。

 この期に及んでスキマ妖怪も出てこないのよ? もう踊らされてるとしか思えない。手遅れ感まであるけど、こっちも天狗の沽券ってものがあるんだから、一矢報いる意地の一つも張らいでか。


「恐れ入ります。これもひとえに、『ねひりん』皆様の信仰あってこそでございます」


「なるほどなるほど。いやしかしですね……大仏様の建立然り、大物には大物に見合う信仰の『丈』というやつが欠かせないと思うんですよ。幻想郷に未だかつてなき、お山すら超え天衝く巨人の大信仰、失礼ながらこのご時世に何処から?」


「ごもっともな所です。まあ蓋を開ければしょうもない話……まとめから言えば、『むくみ』ですかな」


「む、むくみ? 信仰がむくむ……とは?」


「例えば『正義一貫の主人公』、『愛と善意が全てを救う』……そんな叶わぬ願いほど、有り得ぬと思い知る願いほどに、持て囃され、普及し、そして誇大するものです。ウチの信仰の実態は、見る人が見れば鼻で笑うほどちっぽけなものですよ。ただ、願う者によって無闇にデカデカと扱われるだけで……風船のようとでも言いましょうか」


 ここで「風船」というワードと目の前の巨人に早苗が何か反応したが、霊夢とすったもんだしてる真っ最中なのもあって、特に何も起きなかった。


「つまり……形ばかり? 見た目ほどの力はなく、言わば信仰する人々のいきすぎた『期待』のようなものが、要らぬ大きさを見せつけさせている……?」


「そんな所ですな。余計に膨れているのなら、故あれば萎む『むくみ』に似たり。如何でしょう?」


「……ははーん」


 文の顔に乾いた笑み。


「ふっふ。何か、お気づきでも?」


「そういえば……『アンタ』のトコの信者って──」


 言いかけた口を噤んですかさず退避。

 霊夢も早苗をグーで殴って引き剥がし退避。

 そして雪崩れ込む、ポップでパンクなお星さまとレーザーの嵐。


「霊夢! コンニャロお前、目ぇ狙っただろ、目! まつ毛スレスレだぞ!」


「狙ってないわよ。都合よくめり込んだらいいなーとは思ったけど」


 でっかい帽子の上からお冠な魔理沙の無差別攻撃だった。

 手の肉が掠ったか、それともチョップの衝撃で逆さまつ毛になってたか、まだちょっと涙目。

 ボムが通り過ぎた後、文と霊夢は元いた位置に復帰。

 教隕は直撃前に巨人の胸から生えた手に包まれ無傷。

 無関係の早苗さんだけが、霊夢にゃ殴られ魔理沙にゃボムられ。霊力とか奇跡とかで丸焦げは防いだが、髪とか袖とかの端が煤になった。


「あうぅ……お二柱にいただいたお気に入りが」


「そんな大事なもんなら弾幕ごっこの現場に着てくんじゃねーわよ」


 霊夢のツッコミに早苗の返答は無かった。「それもごもっともですけど」と思っちゃったからには認めるしか無い。


「もーキレたかんな! 教隕も霊夢もまとめて丸焼きにして、私の格ってのを知らしめてやる!」


「え、あんなんで? ちょっと落ち着きなさいよ……」


「霊夢さん、素で言ってますね……」


「じゃ、私はその追い風となりましょうか」


「「え?」」


 霊夢と早苗が振り向いた時には風一迅、もうそこには居なくて後ろにあった。つまり射命丸が魔理沙の隣。


「は、え? 何だお前急に?」


 一番呆気にとられてるのは魔理沙だった。


「いえいえ、ちょっと思惑ができましてね。とにかく、巫女の大活躍一辺倒で幕引きさせるわけにはいかんのですよ」


「いや、全く話が見えん」


「と・に・か・く、私は『天狗』として教隕を討ち倒したい。手を組むなら在野で無名の魔法使いは丁度いい。あなたも巫女と教隕を討てれば細かい事は気になさらないでしょう?」


「今さり気なく無名つったか……? まあ良いや、今日一日付き合ったよしみだ。私のやりたい事最優先だからな!」


「大いにオッケー! 立役者という既成事実があれば十分です」


「「え・え・ええ?」」


 口ではヘラヘラしているが、この射命丸、結構ガチめ。

 急な立場表明に霊夢も驚き、勘が回らぬ。何より気掛かりなのは、この流れだと『変な形』になる。


「ま、魔理沙さん考え直して! 今なら私の服焦がしたのも水に流しますか──うひゃぃ!?」


 問答無用を実弾でお届けしたのは、魔理沙より速く文の方だった。軽くショットを散らして早苗を黙らす。ついでにショットはそのまま後方、光の巨人に命中して派手めに削る。

 それ見て魔理沙も、どうやらちゃんと使い物にもなりそうだと上から目線で認めて、遠慮なく魔法の触媒に火を入れた。

 続いて霊夢のうなじがザワついて、直感に任せて回避を試み、果たしてさっきまで居た場所を光る塊が通り過ぎた。

 見れば教隕の両肩から前腕が一対生えて、その片方には手首から先が無い。どうやらロケットパンチを見舞われたようで、光の前腕が軍艦の砲塔のように動いて霊夢に照準を合わせると同時に、失った拳を再装填した。


「さて、役者も揃ったようですので……弾幕らしく、次は連射でいってみましょうか」


 言いながら、まだ次を撃つ気は無いようだ。

 教隕はゆっくり後方にスライドして、足から徐々に巨人へ体を溶け込ませていく。

 それと共に、巨人が変形する。教隕が肩に生やした砲塔そっくりの砲塔が、巨人の肩にもヤマアラシのように手首足首連装砲。大まかな輪郭だけだった巨人の腕の先に細長い五指が枝分かれ、少女たちと同じ高さに水平に、取り囲む直前の如き形に持ち上げ固定。

 胸から下をすっかり巨人と同化させた教隕が、形式張った口調で朗々と謳い上げる。


「さあ始まろう。卑しきから聖なるへ、延べつ幕なし明日もなき、いざ『信仰』なるものの新時代……」


 そうして、巨人の頭の目にあたる位置と、指先一本一本から計12本、景気づけとばかりビームが発射される。よく見ればどれも一直線にピンと伸ばした腕や足の形をしているが、よく見ている暇はない。巨人の両肩大口径連装砲も、教隕の肩の拳骨機関銃も4人に目掛けて発射され、いっちょまえにパワー系の弾幕だった。

 過去の弾幕ごっこで例えるなら雲山タイプ。巨人が進撃再開したので、歩かれるたびに距離感が地味にバグって射線を読みづらい。

 魔理沙と文もグレイズに追われているが、巫女と巨人を同時に狙う自分たちの弾幕を引っ込める気は無い。

 これで隣の早苗まで敵に回しちゃやってられない。1人で解決したかったが仕方ない。とばっちりで魔理沙のボムを食らったのを地味に根に持ってるようだし、利用するのは難しくなさそうなのが幸いか。

 ともあれ霊夢は心の中で、大音量で痰を集めて吐き出したい気分だった。できる歳でも無いが、そうでもしないとやってられないくらいの不愉快だった。「変な形」の戦いになる事は、どうやら免れそうにない。


「弾幕ごっこで『三つ巴』って……そんなのアリ?」


 しかも挟み撃ちからの開戦である。こっちこそが不愉快の主役。




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