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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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幕間「外枯内豪のチグハグ信霊 with ウカタラ神」


 命蓮寺までもう間もなくの上空。つつがなく聖を返り討ちにした巫女コンビ。


「うーん……大丈夫、ですよね? 聖さん、後ろから追ってきてたりしませんよね?」


「大丈夫よ。弾幕バラ撒いてる間に頭も冷えたんでしょ」


 早苗が繰り返し後ろを見る。地面の上の、もう何やってるか分からないほど点になってる聖を再確認。

 最初はすごい剣幕でしたけど、倒したら急に大人しくなりましたね……てっきり、負けたら拳で抵抗してくると思ってました。

 まあそん時ゃそん時よ。れっきとした幻想郷の決闘ルール踏み倒してくれたなら、坊主も妖怪も一緒だわ。


「あっ、見つけた教祖!」


「え、どこです!?」


 すかさず霊夢の目線を読み取る早苗。尋ねた所で霊夢が素直に教えてくれるわけない。

 霊夢が何やら空中準備運動し始めたあたりで早苗も見つけた。

 命蓮寺門前、巨人の足元。教隕が柔和な顔で、早苗達にのらくら手を振ってる。


「あの落ち着きっぷり、確かに偉い人っぽさが……んん?」


 声をかけるにはだいぶ遠く、教隕の輪郭も大まかにしか見えないが、それでも分かるのが教隕と門との対比。普通、門の梁とは見上げるもの。


「背、高くありません? っていうか雰囲気だいぶ違いますけど見た目からしてやっぱ……ア霊夢さん!?」


 早苗が「もしやあれは……」みたいに勿体つけてる間に霊夢が動く。

 重力加速度に斜めのベクトルを加えて科学的にも特撮的にも強力そうな急降下片足ドロップキック。

 狙いはもちろん、教隕の締まりのない面構え。

 これを教隕、後頭部から翼のように生やした両手で優しくキャッチ。幾ら何でも聖の拳より疾いという事はない。


「やっぱりお前じゃないのよ、『くりや』の『おこん』!」


 文句と一緒に、霊夢が足裏に仕込んだ札から弾幕結界。

 至近距離から乱射される大玉を、これも教隕、千手観音みたいに光の腕を生やしまくって一つ一つ受け止める。

 弾幕と腕とが互いに相殺されて打ち消され、教隕が霊夢の足を捉えてる以外は仕切り直し。


「生憎と、似て非なる者なのです。初めまして、博麗のお巫女さん。お待ちしておりました。」


 教隕の返事なんて霊夢は半分くらいしか聞いてない。細かい事は異変解決してからで十分。

 聖から教祖の情報を得るみたいな事も全くしてない。討伐一番、対話は二番、三度の飯のがよっぽど大事。何より魔理沙より先に黒幕にツバ付けたかった。今も反省していないし謂れもない。


「嘘こけ、相手が人間だから退魔の結界の効きも悪い! これ以上の証拠が──ッ!」


 言いかけて中断、嫌な予感。空いてる方の足で教隕の光の手を踏みつけて抵抗。教隕が仰せのままにとばかり霊夢を開放。

 霊夢は踏みつけの反動を使って後退。教隕は自分より1.5倍ほど大柄な光の人型を3体作り出した。

 この間に、巨人とは別方向からプリズムチックな光が差し込む。

 光トリオがプリズムな輝きの方角を向いて、組み合ってポーズを取り、具体的な結界となる。

 直後に教隕を中心に極太のビームが直撃した。


「ちぇっ、来るのが早すぎるのよ……」


 ビームが途切れてすぐ後、放ったビームと並走するように現場に向かっていた射手が到着。


「いやー、やっぱり霊夢には簡単に当たらないかー」


 魔理沙のマスタースパークは、光トリオを消し去ったが教隕に届かず。

 ついでに命蓮寺の敷地も派手に巻き込んでいたが、こちらも無傷。

 しかし命蓮寺と重なって聳えている光の巨人の足が少し凹んでいるのを魔理沙も霊夢も見逃さない。つまり、攻撃自体は通る。巨人の足は見る間に再生を始めているが、戦いようがあると分かれば些細な事。


「おいコラ教隕、よくも山の上になんか誘導してくれたな! あと今度もスペカ無しなんて言い訳は無しだからな!」


「お嬢さんも、よく御出くだすった。少しは骨太な弾幕ごっこを楽しんでもらおうと思いましてな。お陰様で、スペルカードも用意できましたよって」


「だから『お嬢さん』は何かやめろ!」


 そしてやり取りの間を縫って教隕の口元に差し出されるペンの頭。マイク代わり。そして得意の営業スマイル。


「どーもどーも、『文々。新聞』です」


「おや、これはわざわざどうも。信者の者から、さような方に取材を受けたとは聞き及んでおりました」


「なんと、私のこと覚えてたんですか、あの信者? 今にも目開けたまま気絶しそうに受け応えてて」


「彼の生まれつきだそうです。あの顔と声音だけで『きっと仕事も分かってないだろう』とそこら中の職を追い出されウチに来た次第で」


「あやや~、そりゃ図らずも失礼な事を……」


「ちょっとちょっとアンタら! これから巫女が仕事しようって時に邪魔してんじゃないわよ!」


 霊夢一喝。誰が主役か迷子の空気。

 入り込む余地が無い早苗が取り敢えず霊夢の脇におずおず降りてくる。

 魔理沙も文も唇とんがる。


「後にしてくださいよ~。取材が現場で起きてるんですから」


「やったもん勝ちだろ、こういうのは」


「じゃかあしい! こちとら神社の命運かかってんだからね!」


「霊夢さん、2,3人遠のいたくらいでそんな大げさな……」


 瞬間湯沸かしでかしましくなっていくのをニコニコ眺める教隕。一呼吸挟んでから仲裁に入る。


「まあまあ皆さん、私なら今更逃げも隠れもしませんで、皆さんまとめてお受けする事もやぶさかでは──」


「今アンタはどうでもいいの!」


「まとめてじゃダメだ、まずは私が霊夢より先にぶっ飛ばす。河原の借りもあるからな」


「私は弾幕ごっこの前にじっくり取材したいので、全員同時は難しいですねえ」


「あの……なんか、すみません」


 辛うじておしとやかなのは早苗だけだった。


「なるほど、埒が明かないと。では、もう少し刺激が入り用ですな」


 言うなり、地響き一つ。

 4人全員、もしやと見上げてみれば光の巨人が方向転換。

 見せつけ気味にまたも地響き。巨人が歩き出している。重々しく大地を揺らしているのに足跡は無く、足元では草一本潰れていない。

 更に教隕がフワリと浮く。巫女とやり合えるなら空くらい飛べる。


「見ての通りでございます。『ねひりん様』はこれより、『人里の方』へと向かう次第」


「な……っ!?」


 4人全員、ほぼ同じセリフ。その間にも巨人がもう一歩。

 寝入るには早すぎるこの時間、人里でも巨人は大いに目立ってるはず。それがジワジワこっちに来るのは気が気でない。大日如来のお迎えにしたって唐突すぎる。むしろ世界を終わらせる巨神兵。


「ちょちょ、ちょっとお待ち下さい! まずはあなたの正体とかその辺りを詳しくですね……!」


「抜け駆けでまず捩じ込むのがインタビューとはな」


「ブレませんね、文さん……」


 後から手帳とペンを構え、それからブワッと飛び上がる。

 霊夢が気付く。4人の中では文が最速。何気にスタートも最初に切られてしまい、まともに教隕を奪い合うのでは不利。


「ア、アレは人里の呉服屋『くりや』の娘! 実際に会ったし、あの図体で見間違えようが無いわ! ハイ解決、ブン屋退場!」


「おぉう!? まさかの霊夢さん達からネタが!?」


「一応、私もその場に居たので、霊夢さんのデマカセって事は無いのでご安心を」 


「アレが『くりや』の娘? 寝たきりって聞いてたが……それにしても聞いてたイジョウにでっけーなあ」


 魔理沙には『おこん』との面識は無く、改めてしげしげと見上げる。


「はは、寝たきりは少々あんまりですな。『彼女』もあれで中々、強かなものですよ」


「……ん? 今、別人みたいなこと言わなかったか?」


 魔理沙が霊夢と早苗に疑惑の目。「とんでもねえ」って顔の巫女コンビ。

 兎にも角にも、4人の喧々諤々ひとまず収まり、教隕を会話の内に引っ張り込み、巨人の足音が露骨に小さくなっていってる事にも気付いてない。「刺激」がよく聞いたと胸で微笑む教隕。

 それはそうと誰の情報頼りにしていいのやら、文の頭脳が爆発寸前。


「あーもう! そこんとこどうなんですか、ご本人!」


 最終的に矛先は教隕に向けた。


「はてさて、それが些か込み入っておりましてな。何から語ったものか……例えば、『完全憑依』と言いましたか。噂だけだと、こう聞こえるものですよ。『誰かが別人に成り変わる』」


「は、はあ……?」


 果たして手帳に書き取るに値する前置きか、年寄りとかによくある関係ありそうであんまりないスタートダッシュか、首を捻るしか無い文。

 後ろ斜め下で、霊夢がどうでもよさそうに口を開いた。


「あー……つまり何? 『ねひりん教』を流行らせたのは『おこん』だけど、実物を回してるアンタは『影』みたいなもんだって?」


「ええ。然様です」


「「「今ので分かるのっ!?」」」


「『ねひりん』は『おこん』が原因に間違いないのに、『おこん』本人はまるで心当たりが無かった……なるほど、そういう事なら合理的に直感と噛み合うわ」


 天才型ニュー巫女タイプに人妖揃ってあんぐり。

 一番復帰の早かった文が霊夢に詰め寄る。


「れ、れ、霊夢さん! もうちょっと順を追って詳しく!!」


「ん」


「ほ?」


 顔の前に手。

 ふんぞり返り30%くらいの霊夢が文に手のひら広げて突き出した。


「じょー・ほー・りょー」


「……」


 スンとなる文。頭の中には、事前に魔理沙に差し出した代金と、財布の残りと、状況から見たネタの相場、そして向こうしばらくのやりくり見通し。

 そりゃあ新聞記者は何よりの生き甲斐ですけどね。道楽だけでやる生半とは違いますからね。でもだからこそ……ねえ。


「では、私は『ねひりん様』の案内(あない)があるので」


「え、あ、ああちょっと!?」


 話がちょっと滞った隙に、一際大きく巨人の足踏み。

 足音は遠ざかっていたのではなく、鳴らす必要が無いから抑えていただけ。光はぶつかる相手を選べる。

 ただそれでも話してる間に幾らか距離は空けられて、だのに今しがたの足音一回だけは、目の前で歩き始めた時よりもっと重く少女達に響いた。要するに、ぼやぼやしてると行っちゃうよアピール。

 教隕が一礼して、霊夢たちの方向いたままバックで巨人に追随。

 思わず呼び止めた文の脇を残りの三人が悠々抜けて教隕の後を追う。


「はい、アンタのターン終わり」


「勉強会なら後でもできらあってな」


「文さん、私も何が何だか全然なので、後で一緒に霊夢さんに聞きましょうね!」


 何より霊夢が全速力。今度こそ天狗に抜け駆けさせない。その後ろをいつでも追い抜けるからと、面白いもの見たさ優先で魔理沙がのんびり。その更に後ろを、ここで余計な体力使っても大したものは得られないだろうと、早苗は見失わない程度にゆったりと。


「あ、皆さ……はぁ、分かってるわよ、そんくらい……」


 取り残された文が頭をポリポリ。

 ぶっ叩くの第一なのは文も同感。むしろ取材後回しにしたいくらいなのを我慢したまである。

 理屈で考えても、巨人が人里に襲いかかるなんて事も十分考えられるし、そうなら一刻を争う状況。

 ただ、それでも文の頭のどこかに引っ掛かる。先程、2度目の「やられたー」で扉の向こうへ逃げてった隠岐奈のツラが。


「(あのナンチャッテ賢者が、わざわざ1枚噛みに来てるのよ? だったら状況に流されるのは悪手でしょ。何をすればアレの得にさせずに片付けられるのか……せめて思惑にアテが付けばなあ)」


 追い抜いた少女らの方は、追いつこうと思えばいつでも追いつける。

 とはいえここで考えてても埒が明かない。

 大きなため息ひとつ、とにかく文も巨人を追いかける事にした。




 ちょっと時間を巻き戻し、光の巨人の足首に巻き込まれてた時の命蓮寺。

 間もなく、光の巨人が方向転換に第一歩。続いて命蓮寺敷地に入ってた方の足も浮かせてもう一歩。不夜城のネオンの真下みたいな眩しさが幾らかマシになる。


「こ、今度は何事ですか! 一体何が始まるんです!?」


 思わず寺の渡殿ドタドタしながら無作法御免、寅丸星がどうしたものかとてんやわんや。

 その足でやってきたお寺奥の一室。お客を泊めるためにある。

 部屋の前まで来た所で、そのお客人の姿を見つける。


「ああ、『シタン』殿。大事ありませんか?」


「いえいえー、お陰様で顔の赤みも頭のタンコブもキレイさっぱりですよー。寅丸ちゃんもありがとうね♪」


「それは何よりです。『山から転げ落ちた』なんて聞いた時は正直……って、それどころじゃ無かった!」


 こんな埒外の真っ只中でも余裕のシタンに、ついつい空気を忘れかける。

 光が差し込む方角を指し示しながら、申し訳無さそうに星が続ける。


「ご覧の通り、寺が光に飲まれるわ、地響きに苛まれるわ、聖も未だに帰らないわで手が回らず……不甲斐ないのですが、今の命蓮寺ではシタン殿の安全をお約束できるかは……」


「いえいえー、それもこれから上向きますから」


「はい……?」


「この場を借りた理由も済ませて、今は他所へ向かっている所なんですよ。きっと……ね♪」


「は、はあ……確かに例の光の柱、段々遠ざかってはいるようですが」


 騒ぎがあってすぐ、ムラサや一輪が早くも柱に喧嘩売りに行き、その事後報告によれば「光に攻撃が通らず」、しかしてこの光が眩しい以外に寺へ具体的な害を及ぼしていない事が分かった。

 このまま寺を去ってくれるのなら、寺としては後始末の必要も無く、急な嵐よりもある意味平和。


「だから、寅丸ちゃんが心配する事は何も無いわ。それとは別に、アタクシはそろそろお(いとま)しなきゃだけど」


「そ、そうですか。こんな事になって、本当に──」


「もう、そうじゃないってば♪ お寺に何の落ち度も無いし、『お山滑り』の怪我もあっという間に治って本当に感謝しています。アタクシはただ、やる事ができただけですから」


「やる事……?」


「そう、お仕事。『寄ってたかって』より、2対2対1.5くらいの方が、バランス取れてると思いません?」


「えっと……まあ、世間一般で考えるなら? ともあれ、不便な思いをさせていなかったなら何よりです。すぐに見送りの支度を」


「あらあら、いいのよ、そこまでしなくて。出るときにはアタクシから一声かけますから」


「しかし、こんな時間ですから」


「気になさらないで、アタクシなんてアポ無しのお客なんですから。支度の時間が取れるなら、お身内のおそばに居てあげてちょうだいな」


「ナズーリンですか……分かりました。お言葉に甘えさせてもらいます」


 何だかグショグショのちょいヌルで聖に連れ帰られたナズーリンは風呂から出た後も臍を曲げっぱなしで、布団を丸め、その端っこ辺りを執拗に踏みつけ続けてたまに罵倒したりしていた。親をクビにした職場の上司の足に報復するかのようだった。

 聖もいそいそ出ていったので星には何が起きたか分からんが、相当頭に来た事があると大体いつもそんな感じで、見た目より心配無用な事は分かってる。このご機嫌ナナメを直すには構ってやるのが一番早い。


「ところで、差し支えなければで結構ですが……」


 その場を後にしようとする前に、星が遠慮がちに声を開く。


「夜半にお勤めとは、神様というのも中々お忙しい様子で。よろしければ、どちらへ向かうのかお聞きしても?」


「ふふ、心配ありがとうね。話すのは構わないのだけど……うーん、まだハッキリとはしないのよね」


「それは、場所を問わない臨機応変の……という具合でしょうか?」


「そんな所。ただ、まあ……」


 渡殿から身を乗り出して、光の巨人が去る方角を確かめるシタン。それを追いかける4つの影も捉える。


「多分、『人里の方』……かな♪」




 先週はゲームで人生を破綻させられたりしておりました。

 こういう事を見越しての「不定期更新」のタグでしたが、なるべくこういうしょーもない事での更新延期の無いようにしたいと思います。

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