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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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プロローグ3「幻想郷に事件ある時、駆け付けたるはもちろん私」


 3色娘の話によれば、博霊・守矢に命蓮寺、どこも信者が減っている。人里でさえ、信仰から遠のく節がある始末。

 しかしてこれがどうした事か、減った信者の行き場が知れぬ。

 信仰捨ててやさぐれるでもなし。

 別の教えを選んだだけなら狭い人里、すぐ知れ渡るし、何なら『良いとこ入った』と自称もする。

 どこぞの神が力を付けたとは聞かないし、嘆かわしくも秋の神など今日も論外。


 そこで霊夢が目を付けたのが、その場の話で情報が無かった神霊廟。

 尸解仙の神秘も、道教の信仰あってこそ。吸い上げたいのは物の道理。

 まあそんな事せずとも、聖人の徳と威光に信心の方から寄ってくるがねとか言いそうだが。


「しかしだね。結論から言えば正直、我が道教も芳しくない日々を過ごしているよ」


「全くその通り!」


 仙人2人が遺憾の意。


「今日ここで商売敵を減らせば、結果は同じ事だわ」


「なるほど……!」


「いや流石にそこは引き下がれよ……」


 武闘派政策、霊夢と早苗。思わず魔理沙がブレーキかける。


「(これほどまでに、引っ込み付かない心を全肯定できる人間というのも激レアだな……)」


 聖徳太子もこれには苦笑い。


「憂さ晴らしの欲も聞くだけ聞いてあげるがね。昨今の低迷は、我々も少々困惑しているほどだよ。確かに、嘆くような激減も無いが……布都、こないだの成果は?」


「相も変わらず横ばいでございます……」


「ほら、損してないじゃない」


「損をどうにか埋め合わせてると言っとるのだよ……」


 聖徳太子がツッコミ入れるレベル。勘で前進制圧する霊夢に『省みる』の文字は無い。


「数字の上で変化が無くとも、消極的な減少と増加を繰り返して出入りも激しい……総じて言えば、私の徳と能力があってようやく赤字を防げているようなものだ」


「よそ者に言いたくは無いがの……これが我らの今抱えている『弱み』なのだ」


「じゃあアンタらを暫く人目に出せなくしてやれば在庫を吐き出させられると──」


「いい加減そっから離れんかぁ!!!」


 隣の太子をも吹き飛ばさんばかりに布都が叫ぶ。もう一押しでキレるか泣くかするかもしれない。


「あー……私からもいいか? とりあえず、仙人たちも信者に困ってるし、理由も見当ついてない……合ってるか?」


 二言目には拳が出そうなので、やむなく魔理沙が割って入る。


「そうとも。だから今しがた、私みずから欲を聞いて調査して来たところなのだよ。それに私だけでなく──」


「こらー! そこで何をしてるんです!」


 更に割り込む外からの声。

 飛び込んできたのは墓場の所有者、代表一名。縁起も確かな毘沙門天(代理)。


「凝りもせず、よその霊前でドンパチピカピカと……少しは場所を弁えてください!」


「ああ、丁度いい。この通り、寅丸星がやってきたろう? 先ほど言いかけたのは、こういう事だよ」


「な、何です、注意しに来た矢先で藪から棒に……?」


「私にはとうに分かっている事だが、下々のために問うてやろう……こういう騒ぎに真っ先に出しゃばる住職殿はどうしているね?」


「む……不遜な言葉は敢えて大目に見ましょう。聖でしたら、今は竹林の方に出ています」


「「「竹林?」」」


「涙ぐましい老婆心(お節介)だよ。仏の教えが滞っているなら互助の輪も乱れ、生きるに苦しむ者も多かろうとね。宗教で救われぬなら、頼るのは医術……殊にあそこの薬師は、ロハで診てくれる事もあると聞く」


「なるほど、生活に困窮している方の所に自ら押し掛け、心の隙間に取り入って信仰を得る……勉強になります!」


「い、言い方……!」


 マジリスペクトの早苗、苦い顔の寅丸星、それ見て笏の陰からコロコロ笑う聖徳太子。


「まあ、住職殿の心の内では、放っておけぬからしているつもりだろうさ。特にほら……『先だっての』は、取り分け堪えたらしいじゃないか?」


「相変わらず耳聡い事で……ハァ、隠し立てても仕方ありませんね。仰るとおり聖は先日、門外の者に『説教』をくらいました。そのせいかこの頃、些か思い詰めている様子です」


「せっきょう……説教!? お前ら妖怪の自慢の尼がか?」


「なになに? あいつも何かやらかしてるわけ?」


 食いつく魔理沙と霊夢。脇で早苗も興味津々。


「断じて違います! 私達はあくまで真っ当に仏門を──」


「まあ要するに、『不届き者』だよ。馬の骨が僧正呼びつけ、目通り早々『お前の救世では救えはせぬ』と……大体そんな所だろう?」


「我も見てはおらぬが、一部始終よう聞いて覚えておる。妖怪坊主どもの金切り声が仙界にまで届かんばかりであったでな」


「……ええそうです。私はその時、諸用で寺を離れていたのですが、何でも……聖にしたり顔で問答まで投げかけるやらの大盤振る舞いだったとかで。間もなくつまみ出されたそうですが」


 仙人2人が揃って「そりゃ気の毒に」という顔で苦笑い。

 少女たちも呆気にとられて……もとい、霊夢はどうもピンと来ない。


「そんなドエライ話なの?」


「マジか……似たような仕事やってても分かんないヤツってのも居るもんなんだなあ」


「霊夢さんの所に見ず知らずの人がやってきて、『あなたの弾幕はなってないから正しい弾幕を教えてやる』とか一人語りするようなもんですよ」


「なるほど。引っ越したばっかの早苗みたいなのが来たわけね」


「えっ      」


 腕を組んでうんうん頷き始める霊夢。


「身の程知らずなんてレベルじゃないのに出くわしちゃったのね……そりゃ流石にご愁傷さま」


「(霊夢、いつかの(宴会)で、弾幕は適当に札撒いてるだけだとか言ってた気がするけどな……)」


「(あれ……もしかして昔の私、同類扱い……?)」


 今度は逆に、霊夢が腑に落ち同情し、後の2人にモヤが残る。

 神子が笏と手をペチペチ鳴らして話題を引っ張る。


「要するに、だ。先ほど言いかけたのは、君ら巫女が騒ぐ前から私たち宗教家連中はとっくに大わらわ、東奔西走の真っ只中という事だ。誰ぞ潰して済む問題なら、どこぞの尼公がとうにやってる。そう出来ないから、豪腕より重たい腰を持ち上げたのだ」


「人様の信心ばかりはどうにも出来ませんものね……私たち守矢神社も近頃、懐の中身をお酒に変えてやっと繋ぎ止めてる心地です……」


「上の二柱は呑気なもんだとか言ってなかったか?」


「あれはきっと演技です! 私を心配させまいと、顔で笑って心で泣いて……!」


「そんな殊勝な連中にも思えないがなぁ」


「わ、私のトコは、減ったのほんのちょっとだけだし……」


「霊夢は霊夢で、張り合うだけ母数が無いだろ」


「アんですってぇ!?」


「ほらほら、あまり醜態を晒しすぎても、餌を増やすだけだよ?」


 3人娘を窘めて、近くの木陰を指差す神子。


「さっきからその辺り、出歯亀の欲が聞こえる」


「おやおや亀とは心外な。迅速なること鴉の如しですが?」


 指差した方から返事。

 風が一陣駆け抜けて、一同への挨拶代わりか、ぬばたまの羽根がひとひら舞う。

 もうこの辺で察しのついた面々の中央に、一眼レフと一本歯下駄の少女が着地した。


「どうもどうも。みなさんお待ちかね、ご期待通りの清く正しい射命丸です」


 思いは人の数だけあれど、その場の1人も「待ってた」なんて顔はしていない。

 それでも射命丸文は淀みなく言い切る。何なら軽くポーズも決める。

 ただ1人、寅丸星だけハッとなって、何だか決まりが悪そうに歩み寄る。


「ああ、すみません、お話の途中だったのに、迦楼羅天ゆかりの方をお待たせしてしまうとは……」


「いいえ、いいえ。私が勝手に後を追ってしまっただけですよ。速さが信条でも気は長いのが私の良い所ですので」


「何なの。まだ増えんの……?」


 霊夢はうんざり顔を隠す気もない。

 宴会でもなしに、それも辛気臭い墓場の真ん中でワイワイやるとかゲンが悪い。

 異変解決のつもりで来たから、1人ずつノしてけば良いと思ってたので尚更だ。

 ついでにブン屋というやつが何だか気に入らない。


「話からして、どうやらそこの記者、つい先程まで命蓮寺に?」


 聖徳太子から問うてみれば、ニッコリ答える射命丸。


「ご明察ー♪ 幻想郷の『宗教離れ』は当然、私たち天狗の情報網もキャッチ済みです。なのでちょいと取材をと」


「聖の助けになればと思い、寺で話し合っていた所……あなた方の素行が目に余ったもので」


 ジロリと睨む寅丸星。大体の実行犯はアテが付く。ただしそのアテである3人はまるで悪びれていない。


「どんだけワラ掴みたかったのか知らないけど、よりによってブン屋に縋るなんて下の下も良いとこじゃないの。使い道の無い紙押し売られて寺の床占拠されるわよ?」


 非難されてるという自覚もない。親切風すら吹かせてついでにブン屋をDisる始末。


「あ、そこはご心配なく。命蓮寺さんとは前から『文々。新聞』の契約交わしてますので。いやー流石は妖怪主体の福祉施設ってもんですよ」


「手遅れだったか……」


「あの、ちゃんと読んでますし、その後の活用も色々重宝してますよ……?」


 ガチ目に憐れむ霊夢にフォロー入れる星。


「しかしまあ、妖怪が巫女や坊さんの不景気なんて辛気臭いもの取材しようとは。よっぽどネタが無いのか?」


 話が逸れないようにさり気なく魔理沙が割り込む。


「妖怪にとっては他人事でも、人の不幸は人の蜜というやつです。当事者たちがダンマリ決めても、この私が嗅ぎつけて騒ぎ立ててあげる。すると人里は私の新聞で活気を取り戻す……と、こういう次第なのですよ」


「うむ。醜聞やネガティブキャンペーンは実にウケるからね。耳が痛いが文句も言えん。はっはっは」


「とうとう幻想郷にも、報道と権力者の陰謀渦巻く政治闘争の波が……!?」


「風を吹かしてブン屋が儲けるってか……」


 訳知り顔で格好つけるのを忘れない神子。

 汚れっちまった幻想郷を嘆いてるような物言いの早苗だが、目はキラキラ光って、まるで連続ドラマの盛り上がる所に差し掛かったかのよう。

 呆れているのは魔理沙かもしれないし霊夢かもしれない。


「それで、このペンの権力者にインク(ネタ)を供えて、何か寺にご利益はあったのかい?」


「イエスかノーかで言えば……無くもないですね」


「どっちだよ」


 神子の皮肉交じりの言い回しをさておいて、星はこれでも真剣に答えたつもりのようだ。

 魔理沙のツッコミを受けて、射命丸からフォローが回る。


「ご本尊さまと話し合ったところですねえ、今回の原因、共通の心当たりがあるなーって……そんな話の辺りで急にお墓が眩しくなりまして」


「おぉ?」


 余裕ぶってた神子が真っ先に食らいつく。他の聴衆も大体同じ反応。


「そうなんですよ。そちらの記者さんが以前に取材された『団体』と、うちに押し掛けた例の人がまくし立てていた『言葉』が一致して、これはもしや……と」


「で、私の手持ちに運良く当時の資料が残っていたので、お出ししようと思った所に……ねえ?」


「墓場で弾幕ごっこで遊ぶなんて、何と罰当たりな……」


「んなチャチな事グダグダ引っ張ってないで、さっさとその心当たりっての出しなさいよ!」


 星を誘導して、事の過程をもう一度説明させる射命丸。

 ツッコミとも凄みともつかない剣幕の霊夢。文と星の言い分が、この巫女には本当に些細な事に聞こえたらしい。


「おーこわい。はいはい、では取材の続きという事で……」


 ブン屋がゴソゴソ取り出したるは、数枚ばかりの紙の束。鞄の端に入れておけば、あるいは他の物と擦れて鞄の底にでも潜り込めば、気付かず入れっぱなしにしていても不思議でない。実際ヨレヨレ。

 覗き込む一同。紙束の一枚目は、大きく書かれたタイトルのみ。

 早苗が口に出して読もうとする。


「根くら……ナントカについて?」


「根比倫……『ねひりん』と音を当てるそうです」


「ねひりん教……について」


 改めてタイトルを読み返す霊夢。

 口に出すなりいつもの勘が、そぞろ背後を泡立てる。





東方Project作品を網羅とまでは至っておりませんので、原作で起きた事実と大きく噛み合わない描写が出てくる事もあるかもしれません。

お気づきの点がございましたら、感想やメッセージからお知らせいただけると幸いです。

話の進行に差し障りない限りは、できるだけ修正していきたい所存です。

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