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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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霊夢・早苗編06前編「寧野苦宅のメイアサ阿闍梨」


 夜空の幻想郷。命蓮寺方面へ急ぐ霊夢と早苗。

 今時少女が2人も並べばいつもなら、星と月とじゃ物足りない、灯りの1つも焚く所。

 けれど今宵は光の巨人。青空よりも眩しい大地。星明かりなんて塗りつぶされて、外の世界みたいに淋しく下は真っ白、上は真っ黒。


「さっきまで弾幕ごっこしてた辺り、静かになったっきりですね……」


「『ねひりん』の手先のクセに、あれっぽっちの時間稼ぎしかできないのか……早苗、もっと急いで」


「もう充分スピード出してますよ~……」


 魔理沙たちに先を越されてる。対戦相手は『ねひりん』絡み。根拠はもちろん直感。そんな事よりあの魔理沙が、追って追われてならともかく、追い越してくのはなんか気に入らない。


「それにどんな急いだって、私達で魔理沙さんと文さんに追いつくなんて無茶じゃ──おわぁっ!?」


 ぼやく早苗のもみあげ掠めて何か横切ってく。

 遅れて目で追うと、夜っぽい色した人影。アスファルトとタイヤが殺陣でもやってるみたいな音で空中ブレーキ。


「く、ぅ、何て力……急いで戻らないと!」


 聖白蓮ご住職、靴の裏と空とでギャリギャリ火花散らして、早苗6人分くらいの距離で停止。バイクだって空を走る幻想郷だから何もおかしな事はない。


「お、お寺の……あの、何が起きて……?」


「この距離ならもう、飛ぶより走った方が……!」


「おいコラ自分の世界入ってんじゃないわよ、ファンキー坊主」


 聖が睨む方角に割り込みながら霊夢のヘンな悪口攻撃。聖は我に返った。


「貴方達……どうしたんですか、こんな所で?」


「コッチの台詞よアホタレ! 寺……っつーかアレの方から飛んできたわよね。向こうで何が起きてんの」


 光の巨人を指差しながら開示請求博麗霊夢。


「それは……私もまだ理解が追いついていませんが、『ねひりん教』の教祖を名乗る……“存在”が」


「むむっ、やはりアレは『ねひりん』の仕業! 裏が取れましたね」


「よし、ボコす相手は寺に居るのね。そんじゃ」


 聖は難しい顔で巨人を見上げるけれど、少女達の知ったこっちゃない。

 スイスイ去ろうとする巫女達に聖が叫ぶ。


「ちょ、ちょっとお待ち下さい!」


「待つのはアンタよ。私が教祖ギタギタにするまでこの辺で時間潰してなさい」


「言語道断!」


「あー?」


 しかめた霊夢の顔に「当然の事なのに」と書いてある。

 異変が起きる。博麗の巫女が潰す。幻想郷と神社が潤う。宇宙が従うべき三段定説。思惑とかシリアスは道を譲れ。毎日がマイウェイ。


「アンタさっき寺に帰ろうとしてたわよね? 元凶なら私が潰しとくから、アンタはお土産でも見繕ってればいいでしょ」


「霊夢さん、私『達』です! あ、もちろん霊夢さんがやりすぎないようこの私が見張っときますから、ご心配なく!」


「そういう問題では無いのです! まだ見通せぬ事ばかりですが、それでもこの騒ぎは私が……いいえ、御仏と人心とが手を指し示さねばならないのです!」


「……あ~……はぁ?」


 聖は至って真面目だが、巫女の方はボケが滑ったみたいな空気を作り出す。

 ちょっと何言ってるか分かりませんね……。


「えっと……命蓮寺で暴れてくれたケジメ取らせたいって事ですかね……?」


「あー。だったら私が教祖ぼてくった後で好きなだけやって構わないから」


「私『達』が! ですね!」


「駄目です! 教祖は……彼女は信仰の糸に己を繋がれて保つ、“あわ──」


「っだ~~~もうウッサイウッサイっての! 私ら急いでんだから細かい話飛ばして。空気読みなさいよホント」


 耳塞いで頭ブンブン徹底抗議。

 早苗の方はちょっと話の続き気になってたが、この霊夢さんは次に聖が長そうな話始めたら黙って飛んでいきそうな勢い。

 もう日も暮れてますから、片付きそうなら早く片付けたいんでしょうね。正直、そこは同感です。


「今後も末永くドンガラするたび思い知らして、その内のたかが今夜一回分でしょ? その一回が肝の(巫女)に譲るのが筋ってもんじゃないの。『仏教の手柄じゃないとヤダ』とでも抜かそうってか?」


「ッ!!??」


「れ、霊夢さん……そんな真っ直ぐな目してソレ言っちゃいますか……」


 ビシッと指差す霊夢に早苗がドン引きしてるのを他所に、聖が少し傾いた。

 聖の脳裏に電流走る。よぎるは、ついさっき。


 良~いじゃないですかぁ、私が立派になれるならぁ、別に和尚サマのお陰じゃなくってもぉ。

 そ、それは、確かに見返りや功績などは決して……。


「わた……け、して……」


「あ、ありゃ……? だ、大丈夫でしょうか、霊夢さん。なんかブツブツ言ってるみたいですが」


「気のせいでしょ、こんだけ眩しいから余計なものまで目について気になるだけよ」


 今、仏教者として人として、教隕をただブン殴るだけで終わらせたくない。そのための戦いが自分にしかできないと思うのは、聖職の使命に殉じるからと、嘘偽り無く言えるのか。

 言えたら言えたでそれはそれで。


「もういーい? 弁えたんなら行くわよ?」


「わた……わたし、は……」


 そして、バーンだかゴーンだか、鈍いのか鋭いのか弾けたのか全部混ざったのかも分からぬ募何(ばか)でかい音。

 巫女2人も思わず肩を縮めて目を瞑り、恐る恐る開けてみると、エア巻物がフルスロットルで開かれ、さながら光背。

 錯覚なのかガチなのか、聖からネットリしたオーラが立ち昇ってる気もしてくる。


「私は……まだまだ、俗世にしがみつく生臭であったようです。ですが……ですが口にします! 何と言われようと餓鬼畜生へ落ちようと! それでもッ、貴方達ではッ、役者不足なのですッ!!」


「な……何、何? 何ですかコレ!?」


「知らんけどヤる気なのは見ての通りね。ったく、急いでるっつってんのに!!」




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