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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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霊夢・早苗編幕間「降天湧地のヒノリカ巨人」


 妖怪の山、地下間欠泉センター近くの地熱地帯にて、霊夢と早苗。

 正邪と「いつき」のタッグ相手の弾幕ごっこが一段落して、辺りもすっかり黄昏時を過ぎて日の入り間近。


「ぐぎぃぎ~~~! はな、離せ! 割れる、マジで頭が割れる!」


 適度に服が破けた正邪が、霊夢から血も涙もないヘッドロックをかけられていた。


「早苗ー、骨よ。『染みる』なんてケチくさいの禁止、粉にする気でやんなさい」


「は、はい! おいしょぉ~……!」


「あがが、カヒ……しゃ、しゃれになってませんってギギギ……!」


 一方、早苗は霊夢に言われるまま、「いつき」に拙いながらもキャメルクラッチを見舞っていた。

 うん、早苗も結構素質あるわね。


「霊夢さーん、妖怪ってどこまで曲げて良いんですかー?」


「麺類と一緒」


「了解でーす」


「「無い無い無い!!」」


 鬼たちの内側がピキピキ言い始めた頃に、上空から声。


「おーい、早苗ー、霊夢もー、そんなとこで何やってんのー?」


「あ?」


 少し前に聞いた声。

 見上げると洩矢諏訪子。神奈子もいっしょ。


「見ての通りに妖怪退治ですが……お二方こそ、どうされたんですか?」


 ついさっきまで二柱に勝って調子乗っていたのもどっかへ行って、丁寧に応じる早苗。


「そりゃー私たちは、この辺りが『眺める』には丁度いいかなって──」


「ちょっと待った、諏訪子。えーっと……あなたたち、そこの縊り鬼から何も聞いてないの?」


 神奈子に問われて、顔を見合わせる霊夢と早苗。関節をいわす事しか考えてなかった顔。


「何か聞くなら逃げ道へし折ってからが普通じゃないの?」


「もうこんな時間ですし、とりあえず総仕上げして残りは明日にしようかと」


 頭痛そうなリアクションの神奈子。ケラケラ笑う諏訪子。


「やれやれ、悠長というか何というか……」


「『いつき』つったっけ? お前さんたちも災難だねー」


「いやはや心の底から仰る通り……あの、そろそろ助けていただけませんかね……」


「ぐがが……クソ! ゲームオーバーだけは回避できるって言ってたクセに……!」


 真正面が真上になってる「いつき」だけ答える。正邪の方はこめかみの骨が瀬戸際で話を聞いてる場合じゃない。


「んにゃー、そこまでは契約サポート外だからねー。それに予定の内だろ? 巫女に成敗されて、情報吐いて命からがら逃げるーっての」


「それがですね、こんな時間まで情報吐く猶予すら無いほどずっと痛いばかりイタイダイダダ折れる折れるおれおれおれちゃう!」


「ハァ……早苗、放してやりなさい」


「え? あ、はい」


 ヤレヤレしてる神奈子の指示通りに早苗が固めを解除。「いつき」は反動で山肌に顔面から突っ込んで、しかし痛がる暇も無いほど一生懸命に呼吸している。こんな状況でも引きつった笑顔が張り付いたまま。


「ほら、『いつき』。それなら何とかやれるでしょう。この子らに『ゴール』を指図する手筈」


「「ゴール……!?」」


 巫女2人の目が光る。

 霊夢は正邪を放り出し、ついでにぞんざいに蹴り飛ばして捨て、その後でまだ呼気が震えてる「いつき」の襟首捩じりあげてメンチ斬る。


「そうよ、『ねひりん』! 『再誕の儀』とやら、本当はどこでおっ始める気なのかまだ聞いてない!」


「ヒュヒ、ヒュ……わ、忘れてらしたんですね、完全に」


「何? もっと吐かされたい系?」


「いえいえいえと~んでも!」


「そういえばいつの間にか魔理沙たちも見当たらないし。アンタのせいで出遅れちゃったじゃないの」


「えぇぇ……」


「反省する気あるなら、とっととネタ」


「は、反省はともかく、ですね。その件につきましては、ですね……えっと、多分もう……開演時間かなあ、と」


「開演……?」


 いぶかしむ霊夢の背後にぼんやりと光りが差す。

 突如足元に出来た影に気付いて、見回して、霊夢はシバく自分とシバかれてる「いつき」以外の面子が遠くの一箇所を見ている事に気付く。ついでに正邪がどっかにトンズラしていた。

 霊夢の背後、山のずっと向こう、人里の辺り。


「何よあれ……巨人?」


「ま、まさか諏訪子様の!?」


「違う違う、アレとは天地ほども差があるよ。多分」


 人型の光の塊。やや猫背気味に突っ立って、今のところ動く気配はない。山から遠くを見ているというのに、頭的な部分を見ようとすれば首が上を向く。しかもその光は、人里方面から発せられてるというのに、霊夢達の足元に影を作って伸びていくほど。


「にしても、こんなにデッカイとはねー。たーまやー」


「諏訪子様! どう見ても花火じゃありません!」


 呑気な諏訪子に、パニックなのか素なのか見当違いのツッコミ入れる早苗。

 神奈子も空中で頬杖付きつつ「ほほお」って顔。

 音もなくやってきた異常事態に、冷静すぎる二柱。霊夢じゃなくてもピンと来る。


「アンタ達、こうなる事まで全部知ってたの?」


「話の上では、ね。いざ起きてみると、想像以上で少し驚いてるけど」


 何てこと無さそうに答える八坂神奈子。二柱ともゆっくり降りてくる。

 神奈子が山肌に腰を下ろしてあぐらかき、巫女2人にちょっと格好つけた笑顔を投げる。


「東風谷早苗、博麗霊夢……さあ、お行きなさい」


「あぁ?」


「神奈子様……もしや、クライマックスってやつですか!?」


「ええ、そういうこと」


 目上の者と対立した後、真の敵を前に送り出される。東風谷早苗は大興奮だった。神奈子の返事が半分適当でも気付かないくらい。

 霊夢の方は気に入らない。何がなんだか知らんブツを「知ってた」というなら、吐かせる相手が増えたようなもの。

 それを察してか、神奈子はますますニコニコ。


「見ての通りの大異変よ。それともアレが何をするつもりなのか、ここで私達とゆっくり物見でもしていく?」


「ケッ……。オラ早苗ぇ、とっとと山下りるわよ!」


「あ、は、はい……あ、だから襟掴まないでください! お気に入りなんですから!」


 霊夢は、ネックハンギングツリーっぱなしの「いつき」を適当に投げ捨て、憎たらしげに踵返して、早苗を猫みたいにぶら下げて飛んでいく。

 余裕の態度からして、二柱をドついた所で出てくる情報はたかが知れてる。バレて困るモノが無いという事。


「……どう? 神奈子的には上手くいきそうに思う?」


「片手落ちってところね。それでも先方の目的自体は果たせるでしょうから、その後で何か起きるようならその時は……何とかなりそうだったら早苗にやらせましょう」


 残された二柱は、巨人のもとへ向かう空の二点をのんびりと見送った。

 その片隅で、生まれたての子鹿のように這って倒れてしてる「いつき」が、独り忘れ去られていた。



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