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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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魔理沙・文編05「悠々漠処のクビサラ神(+2名)」


 妖怪の山の山頂近く。

「ねひりん」の教祖を名乗る人物から聞いた情報によれば、山の上に「ねひりん」の有力者が住んでいるとの事。

 しかし現場を問答無用の広域アンブッシュで更地にしてから見つかったのは顔見知りの天人と貧乏神だけ。

 取り敢えず弾幕ごっこにもつれこんだ、その後。


「おい文、本当にこっちに逃げたのか?」


「方角は間違いないはずですが……」


「大体、貧乏神なんて重りを担いだ天人だぞ? 見失うなんてどうかしてるだろ」


「その貧乏天人を一緒に追い込んだ当事者が、よくもまあいけしゃあしゃあと……」


 今は山の中腹あたり。上空から下山中の魔理沙と文。

 弾幕ごっこに敗れた相手が逃亡するのはよくあることだが、それを追いかけといて見失うのはあんまりない。

 しかも相手は要石使いの不良天人。乙女心が明言させぬが、弾幕相手としては百貫クラスの重量級。これが万年ダラけの無気力貧乏神とセットである。


「私は全然悪くないんだから当然だ。天人の最後っ屁をボムで散らして、道を開けてやってたんだからな」


「それっぽっちなら私1人だって出来ますよ。本来なら見失わずに追いかける事だってね」


「じゃあどうやって逃してやったって言うんだ?」


「それなんですよねえ……『運が悪かった』としか。たまったま偶然、弾幕の残りがブ厚いトコへ入り込んでいったって事くらいしか心当たりも……」


「貧乏神が居ながら天狗だけが不幸になるとはな……ま、世の中、お前の思い通りばかりにゃいかないって事だな。1つ勉強になったじゃないか」


「だから当事者が何を知った風に!」


「おい待て危ない後ろ!」


「なっ……!?」


 魔理沙が掴みかかって、文と一緒に急降下。

 さっきまで2人が居た高さを、真っ赤な大玉弾幕が突き抜ける。更に空振った大玉達が大量の小玉になって散らばっていく。


「た……助かりました」


「あの弾幕、お前の写真で見たことあるぞ。つまりさっきの見覚えだ!」


 弾幕の発射元を勘で測って牽制ショット。

 どうやら命中したらしいが、屁でもないとばかり追撃の弾幕が飛んでくる。今度は魔理沙も文も個別に回避。

 見据えた先には、勇気凛々、真っ赤な気質(かたぎ)。緋想の剣と比那名居天子。眉毛の形が怒髪天。


「待っていたぞ、卑怯な地上の民! お望み通り喧嘩してやる!」


「うっへえ、逃げたクセしてノリノリだあ」


「不意討ちしたやつが偉そうに呆れるな! 今すぐにでもここを墓場に変えてやる!」


「ここって……なんだ、守矢の間欠泉センターじゃないですか。仮にも天人の墓場にこんな暑っ苦しい所選ばなくても……」


「ツッコまないからね!!」


 ツッコミの代わりに弾幕が入る。小玉に転じた弾幕がジットリ残り続けるので中々めんどくさい。

 取り急ぎ魔理沙のショットに追い風乗せて応戦。

 見覚えのある弾幕だけに割と対処できてるが、どうにも天人自体が硬い。


「というか、1つ質問よろしいでしょうかー。別にあなた(天子)、センターと縁もゆかりも無いですよね。何で逃げ去りもせずわざわざココで迎え撃つんです?」


「あ、それなら私も気になってるんだが、あの貧乏神はどこ行ったんだ? とうとう見限られたか?」


「お前たちに答える言葉は無ぁい!」


 当然さっきからずっとだが、天子の頭はすっかりカンカンである。


「おいおいもう少し友好的にいこうぜ。そんなだからそんななんだぞ?」


「それじゃあアタクシがお答えしまーす♪」


「「??」」


 弾幕ごっこの真っ只中に「おーい」って感じの呑気な声。もちろん天人の声じゃないし、陰気な貧乏神の声でもない。


「ちょ……『アンタ』はそこで呑気してればいいの!」


「こっちこっち、もっと下でーす」


 抗議する天子に、お構いなしの呑気な声。

 上空に天子、しかも弾幕が降り注ぐ中、スキマ時間に見下ろしてみると、ずっと下。センター敷地に花見みたいにシート広げて食事中の女の姿。


「初めましてー。アタクシ、『大戸囷(おおとのくら) シタン』と言いますー。神様やってまーす」


「クチャクチャごっきゅ、げぶぅ……おかわり」


 ついでに貧乏神が「シタン」と名乗った女に膝枕されて何か食べてる。まだ焦げ臭い。

 弾幕避けながらも魔理沙たち、場違いな女にちょっと呆気にとられる。

 遠くの人影に大きな声で呼びかけてるからか、マイペースに呼吸を整えたり咳払いで喉チェックしてる「シタン」。こんな殺風景な所でピクニック気分である。


「お山のもうちょっと上でですねー、この子たちと一緒に暮らしてるんですがー、今日はちょっと、知人のお仕事の手伝いでこちらに──」


「ねえ、おかわり。あ~ん……ほら、あ~~~~ん」


「あ、はいはい。まだまだ沢山あるから大丈夫よー。はい、今度はナラタケどうぞ。よく噛んでね」


 シートに広げた食べ物を「シタン」が箸で取って、仰向け膝枕の紫苑の口に運ぶ。遠目なので分かりにくいが佃煮の類っぽい。


「ぁむ゛む゛~♪(クッチャクッチャボリボリ)」


 咀嚼しながら紫苑は歓喜なのか何事か呻いて口の端から食べ物がポロポロ零れてく。

 食べこぼしを「シタン」がニコニコしながら回収して、汚れた紫苑の顔を拭って、飲み物要求されれば寝たままの紫苑にお茶を丁寧に飲ませる。


「よく分からんけど……色々と最低なものを見せられてる気がする」


「『山の有力者』って、多分アレの事ですかね……ある意味、大物みたいですし……あれ、そう言えば名前に聞き覚えが?」


「『シタン』!! 紫苑の面倒を頼みはしても、敵に情報与えろなんて言った覚えはないぞ!」


 天子の意識も「シタン」に向く。がなってくれるお陰で弾幕がいい加減になり、魔理沙たちにはちょっと助かる。


「まーまー天子ちゃん。中途半端に囲っとくより、パーっと出し切っちゃう方が上手く運ぶものよ?」


「そいつぁ同感だな。抱えボムほどもったいないモノは無い」


 妙な方向で納得する魔法使いにして弾幕バカ一代。


「あ、思い出した。あのー『シタン』さーん、そのお名前なんですがー、上司の口から伺った覚えがあるんですよー、天狗とも何か交流ございますかー?」


「ありますよー。幻想郷に来る時はご近所付き合いを心がけてるのでー」


「なるほどー。ありがとうございますー」


「どこぞの狸みたいに外から来てる手合なのか。文は知ってるやつなのか?」


「直接面識はありませんが、質の良いキノコをおすそ分けてくれるという事で一部の上司に気に入られてるようです」


「ほう、キノコ」


「ただ、キノコしか贈ってこないので、一部の上司は頗る食傷気味のようです」


「ほほう、余る程のキノコ」


 段々と空気が「シタン」のペースに下へ下へと流れていき、お空の上で臨戦態勢の天子が置いてけぼり気味。


「ぐっぬぬぬ……お前らぁ! いま何やってるのか分かって……ん? 何だこれ?」


 天子の横をすり抜けて、見下ろす文と魔理沙の背後へと、切れ端のような物が数枚、風に揺られて漂ってくる。

 切れ端が、何も気付かない2人を掠める。

 そして文の背筋がビキっとなる。


「キャイン!? ななな、何ですか今の!?」


「お、どうした? だるめしあん?」


「何か、軽い物が飛んでます。触れた途端に巫女の弾幕食らったみたいなイヤ~な感触が」


「軽い物ねえ……あ、アレじゃないか? いかにも霊夢のお札っぽいやつ」


 魔理沙が指差したのは、切れ端が飛んできた方角。ついつい天子も振り向いてみる。

 ここからが本番とばかりに大量の紙片が、不法投棄されたビラみたいに飛んで来ている。その場の過半数がよく知っている博麗のありがたい(迷惑な)お札。

 ついでにぼんやり光る蛇っぽいエネルギー弾もフワフワ。


「あー、こりゃ完全に霊夢だな。あっちの方で弾幕ごっこでもして……ぬおっ!?」


 魔理沙の帽子のツバを突き抜けて、霊夢の針が鼻先で止まる。どうやら人間基準でも危ない。


「ちょちょ、ちょ……なんだか全部、私達を狙って流れてきてません!?」


 ポカンと眺める天子の前で、魔理沙と文が勝手にてんやわんや。流れ弾は天子にグレイズすらしない。

 とりあえず、ニヤリ。


「……ふふ、理屈は知らないけど都合が良い。さあ賤しい命達よ、試合再開といこうじゃないか!」


「お、おい、ちょ、ちょっと待った!」


「不慮の事故が介入してますよ! これ正当な弾幕ごっこ(決闘)って言えるんですか!?」


 物言いなど知ったこっちゃなく、緋想の剣が真っ赤に燃える。

 わざわざエモい振りかぶり方で長物構えてるのに、やはり流れ弾の1つも当たりゃしない。

 オーラ的なもので気流が生まれてお札や蛇なら跳ね返せても、針はこうもいかないはずで、もはや作為的。


「おい何だコレ! どうなってんだ!?」


「それじゃあ、アタクシがお答えしまーす♪」


「「二度目!?」」


 今度は見下ろしてる余裕がない。風に乗って迂回したショットが背後から飛んできたりするので油断できない。

 呑気な「シタン」の声が構わず続ける。紫苑は「シタン」の膝の上でハムスターみたいになってる。


「物事には反作用という力が働くの。凪の空に風を生めば、返しの風が生まれるのも1つの道理……『自業自得』は『善因善果』とは限らないのです」


「なるほど、それもこれも全部、文のせいって事だな」


「弾幕ごっこしてるだけじゃないですか! それっぽっちで自分を狙う風が生まれるなら私なんて今頃最弱シューターですよ!」


「私や霊夢に負けるのも、実はそのせいだったり……」


「喧嘩売ってんの!?」


 思わず地が出て魔理沙を睨む文の目の前を、霊夢のお札が横切り、すかさず飛び退いた背後に天子の弾幕が残留しており、アクロバティックな面白ポーズでどうにかグキリとグレイズする。


「盛者必衰。盛んな者には衰えが、衰えたる者には盛りの兆しが。必ず働くわけでも無いけれど、世の中はそうやってバランスを保とうとするものなのよ……お分かりかしら、お強いお二人さん?」


 相変わらずのニコニコ顔で、大した含みも感じない。だが、言わんとする事は魔理沙も文も察し始めた。


「あのお屋敷ね、知人からの借り物だから、貸主には申し訳ないけれど私には大した事じゃないわ。でも、それで住む所が無くなってしまった子達には、こういう所でちょっと持ち直させてあげなくちゃ。追い詰められるばかりの世の中なんて、哀しいでしょ?」


「……そういえば、神様だとか名乗ってやがったな。仕込みか能力か知らないが、だったら力ずくで押し通してやる!」


 八卦炉を正面に構える魔理沙。意図を理解して葉扇を振り抜く文。

 文の風が周囲の弾幕を一掃し時間を稼ぎ、充分にチャージした八卦炉の熱量を天子と、その向こうの弾幕現場へと開放する。


「霊夢も早苗も、これで少しは自重しろ!!」


 特大の光が過ぎ去った後には、まだまだ余裕の笑みで気合受けした天子。一応どうにかスペルカード1枚は焼き払えた。

 霊夢達のショットは、マスタースパークの広範囲すらも回り込んでいたのか、数は減りつつもまだチラホラ舞い込んでくる。

『シタン』も、のどかに弾幕ごっこを見上げてる。膝の紫苑がパクついた箸に残った味を求めて哺乳瓶みたいに舐り箸してるのを撫でくりながら。

 各陣営の弾幕は地表に幾度も突き刺さっているのに、不幸の源泉たる紫苑とベッタリしている『シタン』には一発たりと落ちていない。周囲に広げたシートも傷一つ無く、まるで聖域。


「まだまだ、そのくらいじゃあ平凡すぎるわ。ここには幸せ者の泰斗と、ドン底の泰斗とが一堂に会しているんですから。幸不幸を揺らぎ続ける難破船、そして海は私。あなたの風が吹く限り、調子を乗りこなしてご覧なさいな」


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