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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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霊夢・早苗編04「乾坤眈機のビスネジ国津神」


 霊夢と早苗が人里で「ねひりん」の情報を手に入れて少し後。

 妖怪の山の麓ら辺で、大きな土煙。柱のように高々と。


「うぬお~~……!」


 少し前に射命丸文に吹き飛ばされたりしていた「もも」が、今度は地面にごっつんこ。何だかハリが足りないやられボイス。

 土煙の中から長い体をズバッと飛び出し、胴の長さだけで上空高く伸び上がる。タフネスだけは一級品。


「おのれ小娘~、額に矢を受けてしまっていなければ~~」


「まーだヤる気だわコイツ。てゆーかさっきから同じセリフばっかりだけど、バカなのコイツ?」


「『ねひりん』の番人……って感じには、とても見えないですねえ」


 胴体を伸ばしに伸ばして行き交う具体的な弾幕(?)が襲いかかるが、ろくに見もしないで易々かわす巫女2人。


「『あの辺り』が、こっから行って山の反対側ってのは間違い無いのよね? 早速めんどくさくなってきたんだけど」


「だ、大丈夫です、このまま山頂跨ぐのが多分一番早いと思います! でも霊夢さん、やっぱり『再誕の儀』というのが何やるにしても、『あの辺り』に集まるのはちょっと……」


「私の直感が『そんな気分』だから大丈夫よ。どんな場所だろうと『ねひりん』絡みなのは間違いないわ」


「はあ、さいで……あたっ!?」


 早苗の頭に何か降ってきた。弾幕じゃないらしい。

 霊夢の勘がざわめいた。早苗がダメージモーション解除するより速く、もののけみたいな瞬発力で早苗の頭に落ちてきたブツをキャッチ。


「んーむ、中々肉厚のヒラタケ……おゆはんが一品増えたわね」


 人里で買えばそこそこお値段しそうなブツこと山の幸。煮て良し、焼いて良し、炊き込んで良しの万能キノコ。


「あ、そっかこの辺りは……この妖怪が暴れるから打ち上げられちゃったんですね」


「何よ?」


 語らってる間に、「もも」がスペルカードを発動してたりしていたが、今しがた会話の片手間に取得した。殆ど作業でやっており、「もも」が通常弾幕に戻ったのも多分気付いていない。

 霊夢に至っては近くを落下中のキノコを目ざとく見抜いて回収する方に集中しきってる。


「最近、守矢神社の事業でキノコ栽培始めたんです。あんまり興味湧かなくて詳しく聞いてないんですが、どなたかの協力を得てヒラタケとかナラタケとか言う色々なキノコを人里に卸してるそうです。最近はシイタケ栽培も始めたとかで」


「つまりそのキノコ育ててるのがこの辺りってわけ? まーた俗っぽく手広いわねえ、お宅の神様は……で、マッタケは? マッタケは“と”れるの?」


「荒らす気満々ですよね……? 生憎ですが、松茸は私もお願いしてみましたが難しいそうです。諏訪子さま曰く、地形も木も環境も、都合が合う場所が無いそうで」


「なーんだ、早く幻想入りしないかなあ」


「マツタケはねえ、半端に人が木を苅ってくような山でないと生きていけないんだよ」


「お?」


 巫女でも「もも」でも無い声のマツタケ雑学。

 声の主を探すついでで適当に投げた札が、巫女に齧り付こうとした「もも」の額に直撃してピヨる。

 グワングワン揺れて徹夜明け入眠1時間で叩き起こされたみたいな「もも」の頭に人影着地。

 幻想郷でも一際目を引く、市女笠だかソンブレロだかに目玉が2つ。


「やれやれ。この百足ちゃん、ちょっぴり私の加護を与えてやったのに、それでも相手にならないとはねえ……立派になったじゃん早苗ー♪」


「す……諏訪子様!?」


 百足の頭にアマガエル。山頂の神様こと洩矢諏訪子が麓に降臨。


「ははーん。まぁたお前ら、『ねひりん』とグルにでもなってるわけね」


「そんな、霊夢さん私何も知りません! それに『また』って何ですか『また』って!?」


「んまー……当たらずとも遠からじ?」


「諏訪子様ぁ!!?」


 洩矢神がメトロノームみたいな足場の上でノホホンと回答。


「言ったでしょ早苗。減った分の信者は心配要らないって」


「し、心配要らなくて、『ねひりん』って、ま、まさか……!」


「自分ちの信者を新興宗教に流してやったとでも言いたそうね。えーえー余裕タンマリで羨ましいですこと」


「私としても個人的にちょっと教祖と馬が合っちゃってねー。“根っこ”の所が似てるからかもオワッと!」


「ぬがぁ~……額に矢を受けてしまったばかりにぃ~~……!」


 乗り物にしてた「もも」が目を覚ました。しょうがないので降りて浮く諏訪子。

 蛇どころか百足にまで食われちゃあ立つ瀬が無いってね。両生類だけに。蟲に食われるのはオサムシだけで沢山だよ。


「矢じゃなくてお札なんだけど……てかボキャブラリーなさ過ぎでしょ」


「諏訪子様、どういう事ですか! また私に黙って何か企んでるんですか!?」


「対等な神様なら、お互い好きにやるもんだろー? そんじゃ神奈子も待ってるから、続きは向こうでねー」


 無邪気に手なんか振ったりして、どこかへフワフワ去ってく諏訪子。


「あからさまに誘き寄せてくるじゃないの……早苗、あいつら一度鼻っ柱へし折るべきだわ、手伝いなさい!」


「はい! お二方が好きにやってるなら、私も好きにさせてもらいますから!」


「ぬぅぅぅん、今ならやれる気がする。食らわせて喰らってやるぞ~、私のらすと──」


「「邪魔!!」」


 すっかり場違いになった百足を、とっておきのダブルなボムでぶっとばし。




 挑発を真正面からキャッチして、諏訪子の去っていった方へと、通りすがりの妖精や毛玉をシバきつつ霊夢と早苗が進む。

 その頃、空中であぐらをかいてた八坂神奈子のもとに諏訪子が到着する。


「おまたせー。あの様子なら2人とも付き合ってくれそうだよー」


「それは何より……けど、余計なモノに暴れさせたのはいただけないわね、諏訪子?」


 足元の山肌指差す神奈子。

 一面の森だが、指差した辺りだけ少し色味が違う。


「栽培は繊細な作業なのに。あんた、寄りにも寄ってヒラタケ区域で何か『けしかけた』でしょう。ここからでも見えてたわよ?」


 ここら一帯、守矢神社のキノコ栽培場。

 ちなみに神奈子の足元は試験中のシイタケ栽培。

 天狗どもの機嫌を損なわないため、山の景観を崩さずに原木を並べる。これだけでも相当な仕事よ。


「まあまあ、流通量増やすの少し延期するだけで済むってば。むしろヘマを演出しとけば天狗や河童のガス抜きに丁度いいよ」


「物は言いようね、全く……でもくれぐれも、この後の予定だけはアドリブ抜きよ。良い? あなたはサポートに回る振りして、栽培区域の保護を最優先」


「分かってるって。私はむしろ、神奈子が早苗に手心加えすぎないかが心配だなー」


「あなた何でそう私を親バカキャラにしたがるの……とにかく、二次被害ゼロが絶対よ。守矢の縄張りの外まで弾幕ごっこで荒れたら角が立──っ!?」


 山頂から押し寄せる大きな風。山颪ではなく爆風。

 風上を見上げる神奈子と諏訪子。

 お空の彼方、八合か九合目の片隅で黒煙がモクモクと。


「ありゃ、あの辺って……早苗と博霊の巫女以外にも誰か暴れてるのかな?」


「ふむ……何にしても、『あそこのアレ』は貸してるだけだし、爆発も天狗の縄張りに触れてない。私達には関係ないわね」


「ま、後でお見舞いくらいは持ってってあげよーかね。お陰で新事業も始められたんだし」


「諏訪子様ーー! 神奈子様ーーー!!」


「お、来た来た♪」


「おっと、そうだったわね」


 山の爆発は置いといて、向き直る二柱。

 いそいそ襟とか直して、手足の角度も微調整して、今日の威厳もバッチシキメ。


「やあ、待っていたわよ早苗。それと霊夢も」


「神奈子様、一体全体どういう事なんですか、説明を!」


「話によっちゃあ、ドツキ量2倍か10割増しのどっちにするか選ばせてあげるわ」


「まあまあ、焦るな焦るな」


 自分達で煽っといて偉そうに宥める。威厳チャンスは見逃さない。


「最近組んだ『仕事仲間』のツテでね。『ねひりん』とは、とっくに付き合いがあったのよ」


「早苗たちも、山に押しかけて来たんなら知ってるだろう? 連中の野外集会場、山にも幾つかあるんだよ。だから直接会うのも別に難しくないしさ」


「なぜ私にだけ黙ってたんですか! それに、減った信者も『ねひりん』に流してたとかって……!」


「そうよ、流した。『整理』と言っても良いかしらね」


 神奈子、余裕の即答。


「ウチの信者で、素行や経歴から手頃なのを見繕って、『ねひりん』と結託して改宗させたの。もちろん偶然の出会いとやらを装ってね」


「何でわざわざ……ハッ! スパイですか? 『ねひりん』に守矢の手の者を忍び込ませ意のままに操ろうと……!」


「アッハハハハッ、中々ドラマティックだけど、違う違う」


 神奈子も諏訪子も素でウケてる。

 どうやら嘘じゃなさそうね。


「『だから』、早苗には黙ってたのよ……霊夢はどう思う? 私達が信者を横流しした理由」


「いつになったらボムを叩き込んでやれるかで胸が一杯だわ」


「それは良かったわ。あなた達が清く幸福に育っている証拠よ」


「あー?」


「口で話して、すぐに丸呑みできる理由じゃ無いって事……さ!」


 諏訪子から不可視のオーラを感じ取る。結界のようでいて似て非なる。山肌上空の一定範囲に閉じ込められたような感じ。

 神奈子が空中でよっこら立ち上がる仕草。そのまま歌舞伎みたいなポージングすると、空気が震えて破裂音。まるで反閇、足拍子。

 エモい間を開けて二柱の周りに浮かぶスペルカード。さっきまでちょっと練習してそうな抜群のタイミング。


「誠心誠意で教えてやれるのは、私たちと『ねひりん』は、互いの利益のため協力関係にあるという事……」


「頼まれちゃっててさ。邪魔するやつは足止めしてくれって。『出来たらで構わない』なんて言われちゃあ神様の業前、見せつけないわけにいかないじゃん?」


 博麗霊夢、鼻で笑って袖まくり。分かりやすいほど助かる事はない。


「吐かせる楽しみを取っといてくれるわけね……良いじゃない、乗った!」


「な、何が何だかですけど……『ねひりん』が守矢神社の足しになってるなら、私は身を引いた方が……?」


「はぁ!? 今さら何言ってんの、舐め腐った神様にモノの違いってのを分からせてやりなさいよ!」


 守矢と「ねひりん」が繋がってるとトップの二柱が言うのなら、「ねひりん」潰しを続けるのは守矢の損にも繋がるのでは。常識的に考えて。

 それ見て二柱、ふふふと微笑む。


「いやいや、言ったろ早苗? 好きにやんなさいって」


「へ?」


「早苗。あなた自身はまだ『ねひりん』を受け入れる気にはなれないのでしょう? やりたいようにぶつかってらっしゃい」


「で、ですけど……」


「この八坂神奈子に手を組ませたのよ? 『ねひりん』もただのバカじゃない。これもお互いに計算の内なの」


「それにアレだよ。親同然の相手が敵と繋がっているのが分かって、恩とか『よしみ』とかより自分の正義とかそんな感じのやつを信じるーみたいな……そういうの早苗、好きだろ?」


「そ、そんなの……」


 俯いて。顔上げて。早苗の瞳がキラキラ燃えて。


「そんなの……大好きに決まってます! 胸熱です!」


「あー…………ワケ分かんないけど、手伝う気になったんなら何でも良いわ」


 とにかくまあ、巫女タッグVS.神様タッグの2対2弾幕ごっこが雰囲気で勃発した。




 神奈子の諏訪子に対しての口調は取材不足だったので、かなり想像で補ってます。

 Wikipediaのニホンアマガエルの項目にある画像がメガテンのミシャグジさまと構図似てるなと思いました。全くどうでもいい話ですが。

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