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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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プロローグ2「信者行方不明異変?」


 舞台はいつもの博麗神社。

 今日の客は、茶菓子を携えた東風谷早苗に、いつもの手ぶらの霧雨魔理沙。

 早苗の方は、何でも守矢銘菓として売出し検討中の品だという。

 霊夢・魔理沙・早苗の皿に2:1:1で銘菓が添えられ、セルフサービスのやかんが置かれるなり、早苗が切り出した。

 曰く……。


「「信者が足りない?」」


「そうなんですよ……ここの所、参拝に来る信者のみなさんが明らかに減ってきてるんです」


「はー、めでてえめでてえ」


 霊夢は円柱型の塩羊羹をモサリといった。


「めでたくありません! 霊夢さんだって他人事じゃないはずです! 現にほら、この見渡す限りのスカンピン!」


「あー?」


 霊夢は羊羹を頬いっぱいにもっちゃもっちゃしながら早苗にガンを飛ばした。

 けれど神社の外を覗いてみれば、確かに閑古鳥たちの包囲網。


「言いがかりはやめろって早苗。ここは元からこんなんだぞ」


 ノータイムで繰り出される霊夢の無言の報復が、魔理沙の茶菓子を奪い取らんとする。

 魔理沙はスルリと皿ごと救出。毎日のように鍛錬を積み重ねた、一分の無駄も無い型である。


「ったく、どいつもこいつも……言っとくけどね、ウチだって常連さんくらいちゃんと居るのよ。減ってもないし」


「マジ!? 影も形も見たこと無いぞ?」


「霊夢さん、私が悪かったですから、無理はしないで……」


「あんたらウチを何だと思ってんのよ! よーく聞いときなさいよ、ウチだって必ず月に一度は参拝に来る客が少なくとも…………ん?」


「「??」」


 ビシリと突きつけた指を引っ込め、指折り数えて、何を何だか思い返してまた数え。

 霊夢の唸り声がジリジリ低くなる。


「あれ? ひい、ふう、み……あれ?? いや、そんなはず……いやそんな……えぇ?」


「なんだよ……?」


「無い……ここ何ヶ月、3人くらい来てない……常連……」


「(マジのマジで居たのか……)」


「(両手で数えられるだけ……? いえきっと、10人単位とかそういう事ですよね)」


 何だか霊夢の湯呑にお茶を注ぎ足してやる東風谷早苗。慰めてるんだか見下ろしてるんだか。

 震える霊夢が、充填されたお茶をとりあえず啜る。


「分かってもらえました? 守矢神社も、以前と比べて『約13%現象』がどうとか神奈子様が……」


「よく分からんで使ってるだろそのセリフ」


「おかしい……おかしいわ……妖怪や冷やかしなら余計な時にまでやってくるのに一体何で……!」


 現実に耐えられぬ霊夢がカタカタお茶を呑んでは湯呑をちゃぶ台に置く。ブツブツ言ってはカタカタ呑む。

 魔理沙が湯呑に茶を注いでみれば、飲み干しては湯呑を置く。注げば呑んで置いて震えて、また注いで呑んで震えて。もはやカラクリ茶飲み中毒。


「こりゃ駄目だな。そんなに一大事なのか、早苗?」


「それはもう、大打撃ですよ。常連さんというのは普段通ってた分、ちょっと顔見せないと気まずくなってあっという間ですから。霊夢さんの場合、ウチみたいに手広くやったりしてませんから、金策は全部参拝客が頼みでしょうし」


「あー、客かあ。私も店構えちゃいるが、いまいちピンと来ないなあ」


「魔理沙さんのお店なんて殆ど開店休業じゃないですか。むしろどうやって生活されてるんだか……」


 お茶をおかわりしようとした早苗だが、やかんは魔理沙が遊んで使い果たしていた。

 諦めて湯呑の残りをチビリとやる。


「遠のいた信者さん達がどうしてるかも聞かないし、神奈子様も諏訪子様も全然気にする様子が無いし……何度も申し上げてるのに、『まあ大丈夫でしょ』って感じで……」


「ついに神様もボケたか?」


「滅多な事言わないでください!」


 魔理沙にとっちゃ神社の懐なんざ他人事。ケラケラ笑って好きなだけ茶化してく。


「魔理沙さんも何か聞いてませんか? 山を降りての『勧誘会』も、この頃同じメンツばかりで情報が……」


「あー、あの人里の『宴会』な。私とか霊夢とかばっかり集まるやつ。確かに最近の顔ぶれ代わり映えが……あ、そういや参加してた寺のやつが愚痴ってたな」


「え? ウチの『勧誘会』に命蓮寺の妖怪が? お酒と山の幸が主役なのに?」


「酔っぱらい妖怪だったか酔っぱらい人間だったか覚えてないが、説法や寄り合いで人が減ったみたいな事まくし立ててるのが何かツボって、笑い飛ばしたのは覚えてる」


「は、はあ。……もうお酒は置いとくとして、お話が本当なら、命蓮寺でも信仰が奮わないという事に……」


「酒が入ってるのに、巧妙な作り話って事も無いだろうしなあ」


「むぅ……幻想郷の民から信仰が失われているとか……?」


「まあ悩んでみたってしょうが無いだろ。良いこともあるんだしよ」


「あるんですかぁ?」


「ほら、最近の守矢の宴会でも、厄介な客の騒ぎとか全然だろ? 人里の『龍』の掃除も、最近じゃ洗う前より汚くなったなんて事も減ったらしいし」


「え……人里の龍神信仰まで!? まともな信者さんまで減ってちゃ本末転倒ですよ! 龍神様だって手入れしないと汚れる一方じゃないですか!」


「別に今すぐ食えなくなるわけでも無いんだろ? 無神論者が湧いたなんて話も聞かないし、楽しく生きてられりゃ十分だと思うが」


「悟った風にいい加減な事言わないでください! それに、それじゃ結局減った参拝客がどこに行ったかわからず仕舞いじゃ──」


「なら……ゾンビ仙人ね……」


「お、霊夢かえってきた」


「ゾンビ……神霊廟ですか?」


 霊夢はわななく指で、羊羹の残りを鷲掴みした。


「あと、幻想郷の宗教で派手にやってるのはあそこだけ……信者の噂が無いのもあそこだけ!」


 霊夢は、ジャーキーみたいに羊羹棒を噛みちぎった。


「皆が損してるなら、損してない所が不当に儲けてるって事よ! 幻想郷の秩序のため、道教なんてどこよりも惨めに引きずり下ろしてやる!!」


「霊夢さん……いつになく燃えてますね……!」


「こりゃあ今月ピンチとみた」


「絶対に解決してやるわ! これは元凶が居るはずなのよ! そうに違いないんだから!!」




 以上が、神霊廟カチコミに至る一部始終。

 ついでに神子の耳に届いた欲は、霊夢が直近の宴会で人数頭の割にウッカリ派手に飲み明かし大赤字こいた事まで赤裸々に語っていた。


「やれやれ……人生充実してるようで何より」


 充実のタネにされる方はたまったものじゃない。

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