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東方オリスト「東方光隕誕」   作者: 三郷吾請
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プロローグ1「神霊廟、処すべし」


 思うに、幻想郷の日常には光が欠かせない。

 森の奥でも、竹林の只中でも、締め切った屋内だろうと寝静まった人里だろうと、幻想郷に光が絶える事はない。


 そこまで言うほどかはともかくとして、本日の墓場などは、それはもうギッタンギッタンに眩しいくらいだった。


 命蓮寺の墓地を光が飛び交っていた。

 むしろ光の中を墓石が飛び散っていた。

 もののついでで宮古芳香が極太の光に消えた。

 御札だか針だかまで荒ぶっていた。

 変温動物も居た気がする。


 光源は3つ。




「おーし。キョンシー居たなら、そろそろ仙人の1人くらい出てくる頃ね」

 博麗霊夢と──。


「良いのかねー弾幕的に……対面早々で切り札なんて、2~3度ぶりに初めてな気がする」

 霧雨魔理沙と──。


「『これが私のスペルだー』って言っとけば何やったって大丈夫ですよ。なんたって幻・想・郷ですから! ですよね?」

 東風谷早苗である。

 なお返答は無く聞き流されたが、早苗は特に気にしていない。

 反論がないという事は、つまり黙認って事ですよね。




 ここでお誂え向きに、辻弾幕に飛び込んでくる者があった。


「待て待てーい! おぬしら太子様の留守を狙うとはどういう了見だ!」


 飛び込みたるは物部布都。さしたる用はありありのあり。

 巫女と魔法使いの前に、空から立ち塞がる相手。だいたいいつもの構図である。


「勘違いも甚だしいな。(猟犬)なら悪魔の館で留守番してるぞ」


「うーん……ちょっとイマイチですね。6.4点」


「むう、朝飯ちょっと少なめに済ませたせいかな……」


「ふざけとるでなーい!」


 人の話より身内の話。魔理沙と早苗に、布都の叫びは馬耳東風。

 布都が空中で器用に地団駄踏んでも見向きもしない。

 なお、割といつもの面子だが今回、十六夜咲夜の出番は無いので悪しからず。


「もしやおぬしら、ここしばらくの『弱み』につけこんでウチを潰しに来たか!」


「『弱み』……だあ?」


 反応したのは霊夢。ちょっとヤの字が浮かびそうな低めのトーン。


「こっちのセリフよボケシロナス。どうせアンタらのせいで、こっちは商売上がったりなんだからね!」


「もっと正しい言葉を使わぬか、全然意味が分からん!」


「いつだって正しいのは私なんだから問題ないわ。とりあえずお前をブチのめしてから解決する!」


「切羽詰まってんなー」


「霊夢さんのトコ、ほぼほぼ1人で切り盛りしてますもんねー」


 何はなくとも、信仰が力と生活に繋がる聖職のサガ。

 その辺りに纏わるイザコザな事だけ内輪で分かり合い、弾幕の宇宙で殴り合う5秒前。




「あーこらこら、待ちなさいお前達。欲求不満に折り合い付けたいなら、まずは耳を傾けよ」


 FIGHT直前のエントリー。

 位置的には、布都側からでも霊夢達の後ろからでもどちらでも良い。場の空気抵抗も考えないものとする。


「た、太子様!? お、おかえりなさいませ……!」


「ああ、うん。留守番ご苦労。ちょっと辺りがスッキリしてるが……まあ半分は仏教の管轄だ。任せておけば良い」


「いや、墓地なんですから、れっきとした命蓮寺さん達のモノでは?」


 またもスルーされたが、早苗は特に気にしていない。反論が無いという事なのだから。

 兎にも角にも、豊聡耳神子である。


「ですがそれだけでなく、どうやら芳香まで……」


「そちらも青娥殿が何とかするだろうさ。さて……それで彷徨えるお前達は、私の言葉でも請いに来たのかな?」


「許しを請うまで殴りに来たのよ」


「私ゃとりあえずぶっ放しに来た」


「これも妖怪退治みたいなものかなーって」


「やれやれ……」


 ある意味平常運転。ここは幻想郷で、3色娘は少女である。聖徳太子も耳鳴りするレベル。


「では、こうするのはどうだろう。各々、欲を叶える前に、思いの丈を口にするのだ。目的の再確認は、殴り甲斐をいや増してくれる事だろう」


「思いの丈っていうほど、大した動機じゃないんですが……」


「それを確かめる意味でもだよ。例えばほら、何で我々に用があったのか、切っ掛けの欲を思い出せるかい?」


 今度は返事してもらえた。やはり異論があればこそ、人は返事をするのだ。東風谷早苗の新常識。

 早苗は黙って思い返した。


「確か、神社で霊夢さんが『信者が減ってる~』ってオンオン嘆いて……」


「オンオンどころかウンともスンとも言ってないわよ。そもそも逆。あんた(早苗)がウチに来て『信者が来ない』って言い始めたんでしょうが」


「そうなのか? じゃあ何で私こんなとこに来たんだ?」


「魔理沙は大体いつでも居座ってんでしょうが! 真面目にやんなさい!」


「いやー、私は別に信仰とか関係ないしな~」


 事の経緯を言ったり来たり。口々に回想始める少女たち。

 これぞ聖徳太子の口車。勘で元凶見つけるまで怪しきを潰す巫女さえも、対話の場に引きずり込む。

 傍らで布都が目をキラキラさせている。


「3人寄って姦しいくらいなら容易いもの──」


 神子は耳から欲を聞く。

 言いたい事の根本を掴み、キャンキャン騒ぎの要旨を拾えば、なり行きから人となりまでよく分かる。伝説通り、9人までならまとめていける。


「心当たりのない襲撃を受けた理由は……何だ、ただの消去法か──」




 神子が組み立てた一部始終は次話に続く。

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