表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

第十九話

 両軍の兵は熱波から逃げ出して、まだ散り散りになっている。

「バタイユ殿の気配は……」

 シイラは感知魔法で周辺を探っていた。

「かすかにですが、クレーターの中央に感じます」

 シイラの顔にかすかな喜びが漏れたが、すぐにそれは困惑に変わった。まだ戦いは終わっていないのだ。

「さすがは勇者といったところかの……。神器には、本当にあきれるわい」


 クレーターの中央には、すすけてうずくまるバタイユの姿があった。

 バタイユの外法魔力を吸収してきた神衣かむいユルヴィールが、今まで溜め込んできたきた魔力の一部を反射的に解放して、主人を守ったのだ。

 イージスたち三人がクレーターの淵に立ち、かつてのリーダーを見下ろす。

「……さすがのバタイユ殿も、しばらくは意識を取り戻さないでしょう」

「無駄な流血を避けるためにも、今のうちに王城に攻め入るべきじゃろうて。バタイユのためにもな」


 ヤムシンが二人に飛行魔術を付与していたとき、上空に現れたのは――かつて勇者一行に修行をつけた竜族の長、仙竜だった。

「失望したぞ、人間ども。あれ程渇望した平和を自ら投げ捨てるとは」

「……仙竜様、決してそのようなつもりは。これには理由があるのです」

 だが、仙竜は聞く耳を持たない。

「……だから、人間など見捨てるべきだと、あの時、我は申し上げたのだ」

 仙竜が右手を挙げると、三人は地に平伏した。

「こ、これは一体……」

「元々、その装備は我々が授けたもの。その際の契約を破った罪、万死に値する」

 三人が装備する竜装りゅうそうには、竜族の特殊な魔力が込められている。仙竜はそれを操作することにより、三人の自由を奪ったのだ。

 押しつぶされたように、三人が地面にめり込む。

 もし、彼らが竜装でなかったのならば、一矢いっし報いる可能性はあっただろう。

 だが、バタイユと戦うため、彼らが竜装を選ぶのは必然だった。

「……そう、人間さえいなければ。あのお方がお隠れになることも、魔物が暴走することもなかったのだ。争いの種は、常に人間が撒いてきた」

 仙竜の目には、明らかな憎しみが宿っていた。


「やめてくれ……。仙竜様」


 後方からの声に仙竜が振り向くと、そこにいたのはバタイユだった。

 明らかな満身創痍。声もかすれて弱々しい。

 だが、それでも彼は立ち上がった。

「バタイユ。我は人間を滅ぼすことにした。だが、お主には恩がある。そこで黙って見ていろ」

「そういうわけにはいきません。おれは、仲間を守ると決めましたから」

 バタイユは剣を抜き、構えると、この日五度目の外法を発動させた。

「その構え……。ヴァーミリオン・オーバードライブか。お主、死ぬぞ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ