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一話

 貴方と共に生きたかった。

 幾年月を貴方と共に重ねてみたかった。

 でもわたくしがいくらそう願ったとしてもその願いが叶うことは永遠に無いのです。

 わたくしと貴方様の人生が交わることすら、もう二度と叶わないのです。



 その心に咲くは運命の花。

 儚き命の先の永遠の花。


 その花を胸に抱いて、私は今――。




 リシャール王国の第一王子であるカイン様の婚約者に私が選ばれたのは今から十年前のことでした。


 あれは春の日差しが降り注ぐ、リシャール王国の王城の庭園で行われたお茶会でのことでございました。カイン様の婚約者を選ぶ為という名目で、カイン様と年齢の釣り合う高位の令嬢方が多数招待されておりました。


 公爵家の令嬢であるわたくしも、もちろん招待されておりました。わたくしは当時既にカイン様の婚約者の筆頭と目されていたのです。


 しかし、実はその裏ではわたくしには未来の王太子妃としての教育が開始されておりました。

 王家側からカイン様との婚約の打診を受け、既にお父様がそれを快諾していたのです。娘を未来の王妃にと乞われて断る者など果たしているでしょうか。


 そうです、お茶会はあくまで他の貴族に対してのパフォーマンスの意味合いで行われたもの。まだ子供であったわたくしの心は複雑でした。

 国王陛下のご判断ではありましたがもしもバレでもしたら大変なことでございます。

 なによりも、他の貴族方に対して失礼極まりないことではございませんか……!


 そんな背景で行われたお茶会で、初めて出会ったカイン様にわたくしは恋をいたしました。それはわたくしにとっての運命の恋でございました。

 わたくしの全てを捧げるに値するお方に出会ったのだと感じて、わたくしの胸は熱く激しく燃え上がっておりました。


 カイン様は金髪碧眼のそれはそれは麗しいお顔をしておりました。その瞳には春の柔らかな日差しがキラキラと輝き、その笑顔は全てを魅了するほどに柔らかいものでした。


 国王陛下の側室であるマリア様とのお子であるカイン様。

 マリア様とカイン様を溺愛されていた国王陛下は、彼を未来の国王にしたかったのです。

 当時から、優しく聡明で優秀だと評判だったカイン様。しかし彼には唯一足りない物がありました。

 その足りない物を補う為に、どうしてもわたくしの家との繋がりが欲しかったのでしょう。


 わたくしの名前はフレイア。

 グリスフィール公爵が長女、フレイア・グリスフィール。

 この国の二大公爵家の一つ、グリスフィール公爵家に生まれた愚かな女でございます。



 お茶会が行われたあと数日の後に、カイン様とわたくしとの婚約が大々的に発表されました。

 国王陛下の狙い通りにわたくしがカイン様と婚約したことによりカイン様はグリスフィール公爵家の後ろ楯を得ました。そしてその事によってこの国の勢力図が大きく変わることにもなりました。


 グリスフィール家は元々、現王妃であらせられるソフィア様の生家であるウォールバン公爵家と並ぶ二大公爵家の一つです。ですがグリスフィール公爵家は、当時この国では二番手の存在でした。


 ソフィア様が当時王太子であった国王陛下とご結婚されたのは十八歳のことでした。その後王妃となられたソフィア様は、カイン様がお産まれになった一年後、第二王子であるジェラルド殿下をお産みになられました。

 未来のお世継ぎまでお産みになったソフィア様の生家であるウォールバン公爵家は、益々この国での栄華を欲しいままにしていきました。


 それに比べいくら国王陛下のご寵愛があるとはいえ、側室のマリア様の生家は子爵家です。それも貧乏と言って差し支えが無いほどの弱小貴族でした。

 カイン様は第一王子ではありましたが、生家の力の差は到底敵いません。王太子となるには、生家の力の差がものをいうのです。


 そのカイン様の後ろ楯に我がグリスフィール公爵家がついた意味。それに気づいた貴族達の動きは早く、グリスフィール公爵家との繋がりを求める貴族家からの手紙が大量に届けられたのでした。


 王太子となるのに必要な全てを手に入れた第一王子。国王陛下は嬉々として、カイン様を王太子に指名されました。

 もちろんウォールバン公爵家側からの、王妃様からの反発は凄まじいものがありました。


 しかし我がグリスフィール公爵家がカイン様の後ろ楯についてしまったのです。王妃様はずっと、カイン様が我がグリスフィール公爵家と接触しないように警戒されていたようでした。それを国王陛下はご存知でした。


 国王陛下と王妃様の仲は悪くはありません。むしろお二人の仲は良く、マリア様以上に強い信頼関係で結ばれていらっしゃいます。

 国王陛下を信頼していらっしゃる王妃様のお心を傷つけない為に、あのお茶会は開かれたのではないかとわたくしは思っております。考え過ぎかもしれませんが……。


 王妃様は最終的にはしぶしぶではあったのでしょうが、カイン様を王太子とすることを認めて下さったのでした。


 こうしてカイン様は王太子となられました。

 貴族の勢力図が大幅に変わってしまうには充分な理由でした。

 我がグリスフィール公爵家は今やこの国の筆頭公爵家でございます。


 これがカイン様とわたくしとの婚約が結ばれた経緯でございます。完全に政略的に結ばれた婚約でした。


 本来であればそこに愛だの恋だのは存在しない筈でした。

 わたくしは十年前から、七歳の時にカイン様と出会ってから一途にカイン様だけを恋慕っていたのでした。

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