プロローグ
――君が世界で一番好きだ。
そんな言葉をすでに三十六人に囁いている。
いや、三十六人というのはあくまで僕が記憶しているカノジョの数なので、本当はもう少し多いと思う。記憶にすら残らなかったカノジョやセフレ、はたまた近所の中学生に対しても似たようなセリフを吐いたような気がする。
こうして振り返ってみると、我ながらどうしようもないクズである。高校生にして三十人強と付き合い、その全員と肉体関係を持っているというのは、異常のそしりを受けても仕方ない。
けれど、その時々の彼女が世界で一番かわいく思えたのは事実なのだから仕方があるまい。
頬を赤く染めながら、はじめてを捧げてくれたアカリちゃん。
旦那さんより僕が好きといってくれたマキさん。
軽自動車を買ってもなお、お釣りが出るほど高い腕時計をプレゼントしてくれたセフレのお姉さん。
そんな彼女たちに僕はときめき、愛の言葉を紡ぎ、体を重ねるに至ったという事実は決してむげにしてはいけない。僕はそう思う。
しかしながら、その三十六人のカノジョたちとは、性格の不一致が原因で別れざるを得なかったけれど。
その性格の不一致というのは、精神的なもの、平たく言ってしまえば、彼女たちが総じてメンヘラと成り果てることなのだけど……
高校生である僕には、そんな彼女たちを支えることができないからね、仕方ないね。
というか、勝手に精神を病んで異常行動に出たのはカノジョたちなわけだし。
むしろ、僕は被害者だ。
だから僕を『ヤンデレメーカー』と呼ぶのは不適切。
ヤリチンというのはもってのほかだ。
僕は今まで付き合ったすべての女性を愛していたのだから。
それに箱崎ハルトは三十七人目のカノジョである、千早チトセを世界で一番愛しているのだ。
今現在は確実に――