第78頁 期待、良くない
本当に本当に遅れた…申し訳ない。
もう週一投稿も守れそうにないので一旦落ち着くまでは不定期投稿にさせて貰います(なるべく週一には近づけるつもりです)
今後ともこの作品を見てくださると嬉しいです。
剣を叩き落とされたなずなの前には、とてつもない殺気を放つメリシアの姿があった。細目だった目も見開いており、丸腰ではあるが、『纏闘術』により攻撃力も防御力も先程より上がっている。
なずなは咄嗟にバックステップしながら『朝顔』で剣を回収する。
「チュートリアルで2段階目あるのは…鬼畜すぎるて。」
そうボヤきながらも、なずなは一度抜けた気を入れ直す。しかし、
「…あっ。しまった。」
そう口を開いたメリシアは、元のゆったりした感じに戻っていた。
「あはは、誰にも見せたことなかったんだけどなー…つい熱くなっちゃった。まあ、これは私の負けかなあ。」
第2ラウンドは始まることなく、メリシアが負けを認める形で戦いは終わる。
「今のは…あんたホンマに何者なんや?」
「んー?さっきいった通りだよー。」
「そうゆうことやないんやが…まあええわ。それじゃあ約束通り王様の元に案内して…なんや?」
なずな達の元に、近づいてくる気配を感じる。
「爆発音がしたから心配になって見にきたが…生きてはいるみたいだな。」
気配の正体は、先程まで遠くで様子見をしていたブレッドだった。
「あれー?どうしたの、ブレッド?」
何事もなかったかのようにメリシアはブレッドと話し始める。
「どうしたの?…じゃねえよ!!」
ブレッドはメリシアに近づいてメリシアの両頬をつねる。
「何勝手に戦ってんだよ!なんでこの辺の木薙ぎ倒されてんだよ!よくわからん爆発音も聞こえるし…。」
「あふぁふぁー、ごむぇんごむぇん。」
「全く反省する気ねえだろ…。」
ブレッドは呆れるようにため息をつき、なずな達の方を向く。
「あーえっと…初めまして。王国騎士団副団長のブレッドです。先程はうちの者が何かやらかしたみたいで申し訳ない。」
「あ、ああ。別にええんやけど…。」
「それで、貴方がたは人間ですよね?こちらに来た目的と、できれば素性も教えていただきたいのですが…。」
「ああ、そいや言ってへんかったな。うちは朝比奈なずなや。少し前から、光の勇者をやらせてもろてる。」
「勇者…かあ。」
「…聞いたことない役職だな。どのような役職か教えて貰えますか?」
「かまへんで…てゆうても、中々説明しにくいんよな…今は一応、国を代表して色々な場所へ行ったり、危険な魔物を倒したりっていうのが基本の仕事やな。」
「国を、代表して…。」
ブレッドはそう呟きながら、メリシアの方を向く。その目は大分据わっていた。メリシアは何かを感じ取ったように目線を逸らす。
「まあ、説教は後でするとして…そちらの方は?」
戦闘が終わってからは近くにいたアイリスが、なずなよりも前に出る。
「わたくしはアイリスと申しますわ。役職はなずな様の補佐役と思っていただければと。」
「ふぅん、補佐役…ねぇ。」
「…それで、ここに来た目的なんやが、あんたらの国含めた、突然森の中に現れた土地について調査をしに来たんや。…そのためにまずは、国やその周辺を調べるためにその国の国王に許可を貰いたい…ついでに話とかもしたいから直接会いたいんや。」
「なるほど…。」
ブレッドの肩を、メリシアがツンツンとする。その後ブレッドの耳に口を近づける。
「(さっき会わせる約束しちゃったんだけど…駄目だったかなー?)」
勝手に勝手を重ねるメリシアのことを殴りたい気持ちを抑えるように、ブレッドはため息をついた。
「…けど、丁度良かった。恐らくうちの国王なら、今頃こちらの方に向かって…『もう着いたぜ』。」
ブレッドが慌てて後ろを向くと、そこには既にレオ(とミア)の姿があった。
「あ、陛下だ。やっほー。」
「お、脅かさないでくださいよ…。」
「これに気付かねえようじゃまだまだだな、ブレッド。それとメリシア。割と派手に遊んでたみてえだな…せっかくなら、俺とも少し遊んで欲しいもんだ…が…あ?」
なずなの方に視線を向けたレオが、思わず言葉が止まる。
「ちょっとレオ、急に飛ばすのは酷くない?…ってあれ?」
今追いついてきた美月も、同じ方向を見て驚愕する。
「もしかして…なずにゃん?」
美月にとってなずなは、見知った人物のようであった。