第72頁 解除前準備③
「聞いてください!!俺、1番隊の副隊長になったんですよ!」
翌日、ワンダはカディアと食事を取っていた。色々あったが、2人は今恋人関係になっている。
「よく知らないんですけど…それって凄いんですか?」
「あー…えっと、どう話したらいいんだろう…。」
とりあえず、1番隊がどういう仕事をするのかなどをカディアに説明した。
「…なるほど。ちなみにその1番隊って何人くらいいるんですか?」
「確か、500人くらいですね。」
「500人!?その中の副隊長って凄いじゃないですか!おめでとうございます!」
「ありがとうございます。まあ、大事なのはここからなんですけど。」
「…そう、ですね。」
カディアは少し複雑な様子だった。
「どうかしたんですか?」
「いえその、新しい街を拠点にするってことは、ストラビアにはいないってことですよね…。」
「え?…あっ。」
ワンダはカディアが言いたい事を察した。それぞれの仕事場的に、今のように簡単に会うのが難しくなる。それに、1番隊は最前線に行く部隊だ。死の危険性も勿論高い。
(俺、自分のことばっかり考えて、彼女の気持ちを考えてなかった…最低だ。)
かといって、今更1番隊を抜けるわけにもいかない。
「どうすれば…。」
「…わかりました。私も行きます。」
カディアは決心がついたらしい。
「行くって…仕事はどうするんですか?」
「…実は、新しい街で1番大きな建物にまだ使用人がいないらしくて、先日ルミナさんに誘われたんです。その時は断ってしまったんですけど…。今度私から頼んでみます。」
「…すいません。俺のためにわざわざ…。」
「違いますよ。私が会いたいからそうするんです。」
「カディアさん…。」
ワンダの目が湿り出す。
「ちょっ、なんで泣くんですか?これじゃあ私が泣かせたみたいじゃないですか。」
「いや、俺、幸せ者だなって…。」
「なら泣くんじゃなくて笑ってくださいよ!…もう。」
その後は他愛ない会話をしながら、2人で食事を楽しんだ。
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それぞれの準備が終わり、亜人大結界が解ける前日になった。その夜、レオ達はケントルクスに出来た部屋で寝ていた…が。
「…んぁ…?」
辺りの様子が変わっていることに気づき、飛び起きる。そこには一緒にいたミアやルミナではなく、吾郎と美月がいた。
「なんでお前らが…いや、ここ、あれだな。」
レオは何かを思い出し、すぐに警戒を解いた。
「ここ…獣神様のいる所…だよね?」
「多分な。椅子も4つあるし、とりあえず座って待っとくか。」
3人が座って少しすると、予想通り獣神ヴェインが現れた。
「よお…大体10年ぶりだな、お前ら。…2回目だからって順応早すぎねえか?脅かしがいがねえな…。」
ヴェインは残った一席に腰を下ろし、魔法で4人分のお茶を出す。
「…で、今日はどうしてわざわざ俺達を呼んだんだ?」
「まあまあ、そう焦るなよ。ほら、お菓子もやる。」
「いや、別に要らねえんだが、現実に反映されねえし。」
「じゃあ頂戴。」
「うん、美味いなこれ。」
「…。」
レオと違い、吾郎と美月はお菓子を食べ始める。レオは釈然としない顔をしながら美月にお菓子を渡した。
「んじゃ、そろそろ話をさせて貰おう。まずはお前達に感謝しないとな、よくやってくれた。」
「お前に感謝されたくてやったわけじゃねえ。」
「まあそうだな。これで、俺が提案したのはここまでだが…今後はどうするんだ?」
「どうするって?」
「そりゃあ、人間と魔族、どっちにつくかとか色々あるだろ。」
「さあな…外の状況も見れてねえのに安直に決めるわけには行かねえだろ。けど、いきなり全部に喧嘩売るような真似はしねえよ。」
「そうか…。正直俺も外の世界のことはそんなに見れてないからな…こうしろってアドバイスするのも難しい。言ったところでお前が聞くかもわかんねえしな。だが1つだけ忠告させて貰う。」
「何だ?」
「後ろには気をつけろ。」
「あ?それってどういう…。」
「そのうちわかる。とにかく忠告はしたぜ。…難しい話はここまでだ。」
「そういえば、何で私達は呼ばれたの?」
先程の会話はずっとレオとヴェインで話していた。
「いや、2人に話さないといけないことは特にないんだが…せっかくなら雑談でもしようと思ってな。こいつだけじゃ、話が弾まないと思ったから呼んだんだが、いいか?」
「別に大丈夫ですよ。な?レオ、美月。」
(こいつには敬語なんだな…。)
暫く雑談した後、レオ達は元の場所に帰された。
「…本当はこっからなんだ…頑張ってくれよ。」
1人になってから、ヴェインはそう呟いた。
これにて第3章…終わり!!
次回はキャラ説明会にする予定…ですが、苦戦中なので投稿が遅れるかもしれません。
いっそ来週休稿しようかな…。