第66頁 続き③
ふーっ…ギリギリ間に合ったぜ。あ、初手回想というか説明入ります。
この世界で生まれ変わってからの15年間、幼少期を除いて吾郎はほとんどの時間を修行に費やしていた。それは、吾郎の元にも獣神ヴェインが訪れ、今後多くの戦いがあることを知らされたからであり、親友であり、個人的にライバルと目標の中間のようにみているレオも、この世界で強くなっているに違いないと思ったからでもある。
吾郎には、レオがいつか必ず迎えに来る。そんな気がしていた。だからそれまでは、自分を磨きながら待っていようと決めていた。
修行を初めて割と直ぐに、吾郎は闘気の存在に気づいた。…同時に、自分に魔法の才能が無いことも。悲しくはなかった。魔法が使えない分、闘気の修行に集中できるからだ。
最初は、とにかく闘気の量や質を高めるために、とにかく自分の闘気を練り続けたり、纏い続けた。そうしていくうちに、村で自分に叶う者はおろか、自分にダメージを与えられる者もいなくなった。
次に、闘気を使って威力を高めた投げ技や、闘気の形状化の修行をした。投げ技は今でも、自分の主力の攻撃だ。しかし、鍛えて行くうちに、これだけじゃ足りない気がなんとなくしていた。
10歳の時、新たな技の習得を試みた。攻撃以外で、相手に打点を与える技…闘気を使った、『反撃』である。
『反撃』といっても、現代のいうカウンターというよりは、ゲームなどのカウンターに近い。原理は不明だが、闘気を使うことで、相手の力を文字通り利用して相手に反撃することができる。レオに会うまでの5年間は、様々な種類の『反撃』を中心に修行を重ねた。
先程レオを吹っ飛ばしたのも、反撃の1つ、
『反射撃』である。このカウンターは、自分がダメージを受けることなく、一方的に相手の攻撃の威力をそのまま相手に返すことができる技だ。物理攻撃以外返せない他、タイミングが完璧に合わないと上手く機能しないデメリットはあるが、闘気さえ使えればどんな体制でも使える上、自分がダメージを受けないというのがとにかく強いカウンターだ。
___________________________________
カウンターによって、とてつもないスピードで吹っ飛んだレオは、結界ギリギリの所で『天場』を作り、それで受け身をとって踏み止まる。
まだ何が起こったか理解してない所に、吾郎が今度は追撃しにこっちに向かってくる。
迎撃しようと脚を上げるが、さっき吹っ飛ばされたことを意識してしまい、蹴りの勢いが急に弱くなる。その動きの鈍った脚を吾郎に掴まれる。
「あっ…。」
掴みを解く間もなく、最後はあっさり場外に投げ飛ばされた。
「これで、通算2勝目だな。」
______________________________
「グリーズ様。このタオルをお使いください。」
「ああ、ありがとう、ルミナさん。」
(それにしてもまさか…レオ様が負けるなんて想像できませんでした。)
「…幻滅したか?」
ルミナが心で思っていることを読んだかのようにレオが口を開く。
「いえ…むしろ、レオ様の新たな一面を見れて嬉しく思っています。」
「あ、そう…んで、吾郎。さっきのあれは何だったんだ?」
「ああ、あれか?…話すと長くなりそうだから、また今度教えてやるよ。今日はもう寝るわ。行こうぜ、美月。」
「うん、2人ともおやすみ。」
そういって、吾郎と美月は先に仮拠点に戻っていった。
「…ルミナ、修行するぞ。」
「…今からですか?」
「ああ。あいつと比べて、俺はまだまだ修行不足だ。…次は勝つ。」
その時のレオは、悔しさと楽しさが半分混ざり合ったような顔をしていた。
「はい…お供させていただきます。」
その後、日が登るギリギリまで2人は修行し続けた。
技とか闘気の仕様が某アニメに寄ってってる気がするけど…しょうがない、どの作品にも似せないのなんて無理だもん。
今後のことも考えて決着含めた後半はあっさりさせてみました。これ以上伸ばしてもマンネリしそうだし。