第59頁 神器は偉大
あけましておめでとうございます。
今年の小説に対する抱負は「無理をしない事」です。
年越し蕎麦は元日の夜に食いました。どうでもいいですね。
「お、やっときたか…ひでえ顔だなお前ら。」
レオ達の待っている所へ、1時間近く泣いて顔がぐちゃぐちゃになっているエリンとエルウィンがきた。
「恥ずかしいからあんまり見ないでくれ…。」
「泣き過ぎて目が痛いよぉ…。」
「『ヒール』…他の奴らは?」
レオは2人に回復魔法を掛けながら質問をする。
「あ、ありがとうレオ君…。」
「本人達は平気だって言ってたけど、一応今は部屋に帰して休んでもらっているよ。」
「そうか…ま、俺は別にどっちだろうがいいんだけどな。」
「…で、何するの?にいや。」
「そうだな…まず、今回の一件で、エルフ達に言っておきてえことがある。」
「言っておきたいこと?」
「…お前達、弱すぎんだよ。」
「うっ…。」
結構酷い発言だが、エルフ側は何も言い返せない。
「結界解除前にこんなにピンチになってるようじゃ、この先直ぐに国が滅ぶのは目に見えてる…せっかく助けてやったのに、あっさり滅んで助け損だなんて嫌だからな…せめて時間を稼げる程度には強くしてやろうと思ったわけよ。」
「そっか…でも、強くなるのって時間がかかるんじゃないの?」
エリンが素朴な疑問を口に出す。
「ま、基本的にはそうだな。だが、1回きりだが、短時間で強くなる方法がある。…ルミナ。」
「はい。」
ルミナは指示を受けると、アイテムボックスを開いて、あるものを取り出す。
「…ん?それは…?」
「オーブと、動物の…顔?」
「!!」
エルフの2人は、初めて見た反応をするが、一方で、吾郎と美月は驚いた表情をする。
「ねえ、レオ。それってもしかして…。」
美月が恐る恐るレオに聞く。
「ああ。…加護を付与する神器だ。」
「加護か…聞いたことはあるが、確かにエルフで加護を持っている者はいないと思う。けど、どうしてそれがわかったんだい?」
「…ま、ほぼ勘みたいなもんだがな。兵士の動きや魔力、闘気を見れば、そいつに加護があるかないかくらいはなんとなくわかる。」
「…ねえレオ君。」
「ん?…どうしたエリン。」
「加護って…何?」
「…まじか。」
レオはエリンに加護について説明する。
「…大体わかったか?」
「うん、要するに神様から貰えるすごい力ってことだよね?それで、その動物の顔とかから加護が貰えるってこと?」
「…その認識でいい。」
「てかレオ…いいのか?」
今度は吾郎から質問が飛んでくる。
「何がだ?」
「それ、神器なんだからめっちゃ大切なものなんじゃないのか?そんな簡単に持ち出していいものじゃないと思うんだが…それに、その加護の付与って獣人以外にもできるのか?」
「ああ、許可ならとってるぜ。」
「許可って…誰に?」
「獣神。」
そういうと、神器の口からタイミングよく紙が出てくる。吾郎が紙を見ると、紙には、
「全然OK」
とうさんくさい感じで書かれていた。
「…ええ…。」
吾郎はかなり不安になったが、これ以上何も言わないでおく事にした。
「まあ、エルフに加護の付与が出来るかは、今試すしかないな。エリン、そこのオーブに触れてみろ。」
「うん、わかった。」
エリンはレオの言われた通りにオーブに触れる。
「…問題ねえみたいだな。」
神器は無事に作動した。オーブの光が消えた後、エリンは神器の口から出てきた紙を受け取る。
「で、なんて加護を貰えたんだ?」
「えっとね…『エルフの神の加護』…だって。」
「エルフの神…聞いたことねえな。名前からしてエルフ用の加護なんだろうが…てか、エルフにも神って一応いるんだな。」
「うん…そんなに宗教的に信仰されてるわけじゃないけどね。」
「…そいや、その1つだけか?」
「それしか書かれてなかったよ?」
「そうか…で、どうだ?強くなってる感じはするか?」
「うーん…よくわからないけど…体が少し、軽い気がする。」
(俺から見ても魔力量は明らかに増えてるが…こいつはまだ感じれねえみたいだな…。)
エリンの元の魔力量も十分常人離れしているが、この加護によって、ルミナよりも多い、ミアにも引けを取らないくらいの魔力量になっている。
その後、エルウィンもオーブに触れ、問題なく神器が作動することを確認する。
「…よし、そんじゃ、なるべく多くの奴に加護を付与させるようにするぞ。」
多くの人に加護を付与するのは、祝福祭の時を思い出す。
「…せっかくなら、皆が無事だった記念に宴みたいなものでも開いてみたらどう?」
「俺も美月に賛成だな。どうだろうエルウィンさん?」
「勿論構わないさ。早速町の皆に呼びかけて見るよ。」
こうして、フリーツの町で祝福祭のような催し物が始まるのだった。
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皆の準備は早く…それとも、こうなることを見越していたのかわからないが、フリーツの町での祝福祭は、次の日から始まった。
多くの人が加護を貰い、朝から晩まで盛り上がった。あまりこういった催し物はなかったらしく、エリン達王族も目一杯楽しんでいた。
最終日の夜、皆が片付けている様子を見ながら、レオ達は城に戻ろうとしていた。
「…楽しかったね。」
エリンがレオに話しかける。
「そうだな。祭りの雰囲気は俺も嫌いじゃねえ。ルミナは楽しめたか?」
「はい。御気遣いありがとうございます。」
「…そうか。ミアも楽しめてたみたいだし、いい数日間だったんじゃね。」
ミアはレオにお姫様抱っこされたまま眠っている。
「…よし。」
エリンは少し震えていた拳を握りしめながら小さくそう呟く。そして、
「あの…レオ君!!」
「…あんまり大きな声を出すな。ミアが起きたらどうすんだ。」
「あ、ご、ごめん…。」
「…まあいい。急になんだ?」
「その…明日の朝、2人で話したいんだけど…。」
「今日じゃ駄目なのか?」
「それはその…もう遅いから…。」
「…まあ、そうだな。いいぜ。俺もちょうど話してえことがあったしな。」
「本当?じゃあ、朝の9時に、私の部屋に来てくれる?」
「…おう。」
「…じゃあ、待ってるから…!」
そういって、エリンは先に城に走っていった。
(…絶対あれだよな…。)
レオはなんとなく予想がついていたが、深く考えないことにした。
露骨なお膳立てはした。後は…私の腕にかかっている。…無理やて。私恋愛経験なんてしたことないんだって!!次回に関しては
(あーこれは初心者ですわ)
と心の中にとどめるだけにしてください。