第49頁 魔眼①
あれから3日後、レオ達はストラビアへと帰るために、レフィーエ王国を経とうとしていた。
「本当に帰っちゃうんだね…。」
エリンは寂しそうな様子でレオ達を見送る。
「そんな顔すんなよ。俺はすぐにこっちに戻ってくるんだからな…。」
今回帰る目的は、ここでの用を済ませたライネル達を帰らせ、中間地点の都市を建てる準備をするためである。こっち側の問題が片付くのにまだ時間がかかりそうだから、先にできることをやっておくつもりらしい。
「俺がいなくなったからって、またヒキニート生活に逆戻りすんじゃねえぞ?」
「うん…。」
エリンはあれから、ちゃんと町の外に出れるようになった。この3日間はレオも付き添いで、まだ行けてなかったところに行っていた。
「もう少し残ってたかったぜ…。」
ガルディスが呟く。
「どうせ残ってててもダラダラしてるだけでしょう…。」
「それがいいんじゃねえか。今ならグチグチうるさいリオーネもいないからな。」
「…帰ったらリオーネにそう伝えとこうかしら。」
「やめてくれ、帰る家がなくなる。」
ウダウダ言ってたガルディスも仕方ないと諦めた。
「レオ、ガルディス、それに他の皆も、来てくれて本当にありがとう。またいつでも来てくれ。」
「だから俺はすぐ戻るって…まあいいや。くれぐれも肩の力入れすぎて過労死すんなよ。」
「はは…流石にそんなに気負ってはないよ。」
そういうが、エルウィンの目には大きな隈ができており、あまり説得力がない。
「じゃあな。」
レオ達を乗せた馬車は、ゆっくりと町を出て行った。
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レオ達が町を去ってから、3日ほどの時間が流れた。
レオの言葉通り、エリンは引き籠る前の時のような生活を送っていた。
「それじゃあお父様、今日はいつものおばさんの所に行ってくるね。」
「ああ、気をつけていくんだぞ。」
流石に1人で行くわけにはいかないので、護衛を連れていってはいるが、余り人数にも余裕がなく、また変に目立ち過ぎるのも良くないので、4、5人ほどに護衛をさせている。
(レオ君が町を出てから、まだ3日しか経ってないんだ…。)
町を歩きながら、エリンはレオへと思いを馳せていた。護衛は周りへの配慮も込みで、エリンとは少し距離を置いた位置で辺りを警戒している。
(…早く…また会いたいな…。)
考え事をしていたからか、周りの状況を見ていなかった。
ドンッ
「あ、ごめんなさい…。あれ…?」
つい目の前の人とぶつかるが、それがおかしなことに気づく。
「あれ…護衛の人は…?」
いつの間にか、護衛が姿を消している。そして、少し気になって、ぶつかった人のことをもう一度見る。
「…あ…え…そんな…。」
ぶつかった相手には、左腕がなかった。
急に展開を早くしすぎたかな…でももうこれ以上引っ張ってもなあと思ったんで。