第45頁 解呪のために④
はー…この話書くの疲れた。
色々考えて、書き直しも繰り返して…なんとか自分の納得のいく話になったかな。
「そのショックでまた気絶しちゃったみたいで…次に起きたときは、城の中にいたの。」
「…エルウィンが連れ帰ったんだな。」
「…うん。」
エリンは過去の事を話し終え、ほっとするように息をつくが、その表情は重く、暗いままである。
「…全部、私のせいなの。私のせいで、お母様達は石になってしまった…。」
「…。」
「もし、私の呪いが解けても、私はきっと、この部屋に籠り続けると思う。お母様達が石になってるのに、私だけのほほんと暮らすなんてできないから…。」
…罪悪感だ。恐怖だけでなく、罪悪感も、エリンをこの部屋に縛り付けていることにレオは気づいた。
「…はぁ。」
珍しく真剣に話を聞いていたレオが、大きくため息をついた。
「…馬鹿だろ、お前。」
「…え?」
「お前は加害妄想しすぎなんだよ。」
「か、加害妄想…?」
聞いたことない言葉にエリンは戸惑う。
「お前の家族達を石にさせたのは呪術師だ。お前はその手段として使われたに過ぎねえ。お前は銃で家族が殺された時、その銃のせいだと思うのか?…要するにだ。」
レオは一度間を置いてから、再度口を開く。
「お前は何も、悪くねえよ。」
「私は…悪く…ない…?」
「ああ。それに、石になったお前の家族が、お前がこうなることを望んでいると思うか?」
「…それは…。」
「…思わねえんだろ?だったら別にいいじゃねえか。お前が家族に遠慮して引き籠る理由なんてねえんだよ。」
「…そう…なのかな。」
エリンの気持ちが揺らぐ。
「…ちったあ外出る気になったか?」
「少しは…でも…。」
エリンの顔はまだ暗いままでいる。
「…やっぱり…怖いの…。」
「…また、誰かを石にするかもしれないからか?」
「それもあるけど…。レオ君は、私のこと…怖くないの?」
エリンの突然の質問に、レオは意表をつかれたような顔をする。
「…別に、お前みたいなただのヒキニートのことを怖いだなんて思うことは永劫にないと思うが。…そういうことか。」
レオは、エリンの質問の意図に気付いた。エリンが恐れているもう一つのこと、それは、周りの視線である。
引き籠もっている人が中々外に出れない理由の一つとして、今まで引き籠もってた人突然引き籠りをやめた時の周りの反応が怖いというのがある。ましてや、エリンの場合は、解決してない魔眼という問題も背負ったままだ。周りがエリンのことを拒絶してもおかしくないのである。
(別にんなもん気にしなくていいと思うんだが…。そういうわけにもいかねえだろうな。)
レオはどう説得したものかと考えるが、いい言葉が見つからない。今日はこの辺で引こうと思ったその時、誰かが部屋の扉をノックする。レオの張った遮音結界は内から外への音を防ぐだけなので、外からの音はしっかり聞こえる。
「すいません。そちらにレオンハルト陛下はいらっしゃいますか?」
扉越しに、聴き馴染みのある声が聞こえる。エリンの前なのでレオの呼び方がいつもより丁寧だが、間違いなく声の主はルミナだ。
「…ルミナか、入っていいぞ。」
遮音結界を解除してレオが応答する。
「えっ。ちょ…。」
「失礼します。」
エリンが何か言いたげだったが、少し声が足りず外のルミナには聞こえなかったらしい。
「…どうかしたか?」
「いや、いいんだけど、ここ私の部屋…。」
「あー…。それよりどうしたんだルミナ。」
(え、ちょっと、スルー!?)
「いえ、用を足すとおっしゃったきりお戻りにならないので、何かあったのかと思いまして…。あ、そういえば…。」
そういって、ルミナはどことなく光の魔道具と似たような物を取り出す。
「すいません、お返しするのが遅れてしまいました…。」
「そういや、俺も忘れてたわ。ありがとな。」
レオに手渡しする際、ルミナはレオに耳打ちをする。
「(一応、説得の役に立つかもしれない内容も挟んであります。困ってたらお使いください。)」
「(…マジで有能だな。お前がいて良かったわ。)」
「(ありがとうございます。)…では、失礼します。」
ルミナは早々に部屋から退出した。
「…レオ君。何、それ?」
「これか…?まあ、すぐにわかる。」
そういって、レオはルミナから受け取った魔道具を起動した。
ちなみにですが、作者は1日だけ不登校になったことがあります。その時ですら学校行くのが少し怖かったので、何ヶ月も引き籠もってた人が外に出るのって絶対大変ですよね。今なら周りの目なんて気にするだけ無駄だと思ってますけどね。