第38.5頁 留守中の春①
ちょっと休憩がてら書こうとしたらめっちゃ長くなってしまった…
「あー…暇だなあ。」
レオの命令を受けて、王宮の警備をしていたワンダだが、数日間何事もなかったので退屈していた。
強くなるための毎日のルーティンや、王宮の見回り、他の見張りの様子確認も済ませたため、本当に手持ち無沙汰になっていた。
「いっそ1人くらい侵入してくれた方が、こっちとしてもいい経験になるんだけどなあ…。」
ものすごく悪い事を呟きながら、庭の辺りを歩き回っている。
「ちょっと行儀悪いけど、この辺りで筋トレでも…ん?」
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「や、やっと休憩…」
暇してるワンダとは反対に、王宮のメイドであるカディアは仕事に追われていた。運悪く休みの人が重なり、大体その時に助けてくれるルミナがレフィーエ王国に行っているため、その分の仕事が全部残ったメイド達に降りかかっているのである。
「10分後には庭の掃除と、トイレの掃除と、洗濯と、あとリオン様宛の手紙を届けて…いつもの3倍はあるよこれ…ルミナさん助けて…」
と嘆いていても、当然ルミナはこの場にはいない。
「とにかく、この10分はちゃんと休まないと…」
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「…うぅん…ん!?」
机に突っ伏していたカディアが立ち上がる。
「嘘…私寝てた…?」
とんでもないミスをしてしまったと顔を青ざめる。
「と、とにかく仕事の続きを…」
慌てて休憩室を出て、中庭に向かう。
(掃除道具は中庭に置いてたっけ…)
しかし、中庭に着くと、置いてあった場所に道具がない。
(あれ?確かここに…)
「あ、掃除道具借りてますよ。」
「ぴゃっ!?」
突然後ろから声を掛けられて、カディアは変な声を上げる。
「えっと…貴方は警備隊の…。」
「ワンダっていいます。そちらの名前は?」
「カディアです。それで…。」
「あ、そうですね。」
ワンダはカディアに掃除道具を返す。
「暇だったんでこの辺掃除してました。ちょうど貴方が道具を置いてくところを見かけたので。迷惑でしたか…?」
「迷惑だなんて…とんでもないです!けど、申し訳ないというか…。」
「気にしないでください。本当にすることがなかったので、いい時間潰しになりましたし。」
「そう…ですか。ありがとうございます。あの、ところで…今って何時くらいですか?」
「11時くらいかと。」
「11時…。」
カディアが休憩室に入ったのは10時頃だ。つまり、カディアは1時間ほど寝ていた。そして、この庭を1人で掃除するのに、およそ1時間かかる。つまり、カディアが寝ていたことによる時間のロスは結果的になくなった。
(よくないけど、これで仕事が片付かないなんてことがなくならずに済んだ…)
カディアは少し安心した。
「どうしたんですか?」
その様子に対してワンダが気になって質問する。
「その…実はですね…。」
カディアはそのことを話そうか迷ったが、結果的にこんなに助けられたのに話さないのは失礼だと思い、恥ずかしいと思いながらもワンダに話した。
「うぅ…恥ずかしいです。その、先輩には私から言うので、他の人には言わないでくださいね…?」
恥じらいながら、そして身長的に若干上目遣いになりながら言ったカディアのその言葉に、ワンダは少しときめいた。
「は、はい。約束します。」
「絶対ですからね!」
(か、可愛い…。)
「と、とにかく本当にありがとうございます。それでは私は次のところに…」
カディアは余計に恥ずかしくなって、早々にこの場を去ろうとする。しかし、
「きゃっ…!」
急いで歩いていたため、つまづいて転びそうになる。
「おっと、危ないですよ。」
ワンダが距離を詰めて、カディアの体を支えていた。
(…腕が見た目よりたくましい。それに、なんかいい匂いするんですけど…。というか、この体制恥ずかしい…!)
カディアの顔が赤くなる。
「あ、ありがとうございます…その、手を…」
「あっ、すいません。もう大丈夫ですよね。」
ワンダがすっと手を離すと、カディアはワンダの方を向いて頭を下げた。
「色々とありがとうございました。このお礼は必ずします…それでは失礼します!」
カディアはダッシュでこの場を去った。
(…俺がずっとドキドキしてたの、バレてないよな?)
ワンダは胸に手を当て、深呼吸した。
多方面でラブコメを展開したくなるのはもう不治の病なので諦めました。バトルよりラブコメ書く方が楽しい…バトルそんな書いてないけど。