第27頁 勧誘
「よし、南東の集落にいくぞ」
情報屋にあった次の日、レオがそう切り出す。
「南東の集落…?何しにいくの?」
寝てて何も知らないミアは質問する。
「強え奴の勧誘だ。今後の戦力としてな。」
「勧誘って…レオ様が直々になさるんですか?」
今度はルミナが質問する。
「そうだな。使者とかに行かせるより、俺が行った方が時間もかからないし、何より、どれぐらい強えのか俺の目で確かめておきたい。それに、仕事はリオ兄達に押しつ…任せてるから結構暇してるな。」
「わかりました。なら馬車の用意を…『いや、いらねえ。この距離なら自力で行けるしその方が速い。着替えてからいくぞ。』」
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ルミナ以外は着替え、3人は町の外に出る。
「とりあえず、走りながら道中の魔物を処理していくが…ルミナ、いけるか?」
「はい、問題ありません。」
「わかった、それじゃあいくぞ。」
そういって、レオはミアを抱き抱えて走り出す。
(あ…無理だっていえば私も抱き抱えてくれたのかな…)
そう後悔しながらもルミナは後を追った。
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「よし、着いたな。」
南東の熊人族の集落に、馬車で1日ほどかかる距離を、レオ達は30分でたどり着いた。
「誰だ!?」集落の見張りが反応する。
「俺は現国王、レオンハルト・ストラビアだ。」
そういって、王家の証となるブローチを見せる。
「し、失礼しました…!」
見張りは慌てて平伏する。
「しかし、こんなところまで一体どのようなご用件で?」
「ここに強え奴がいるそうじゃねえか、そいつに興味があってな。」
「お呼びしましょうか?」
「いや、案内しろ。」
「わかりました。」
そういって、見張りの1人と共に集落の中へ進んでいく。
「こちらです。少々お待ちください。」
集落の中でも一番大きい、村長らしき人物の建物の前まで案内した後、見張りはその建物に入っていった。待っている間に、レオ達に気づいた集落の人たちが集まってくる。
「お待たせしました。」
そういって、見張りと共に、1人の男が出てきた。
年はレオと同じくらいだが、レオの2回りくらい大きな大男だ。その雰囲気は、只者ではないことをすぐに感じさせる。
「ほう…。」
レオは少し感心する。期待通り、いや、期待以上の強者の気配をその男から感じたからだ。
「俺に用って…何ですか?」
対する男の方も、レオの強さを感じている。しかし、一切動揺せず、いつも通りといった感じでレオに問いを投げかける。
「とりあえず、お前の名前を教えろ。」
「…グリーズ・ベールです。」
「そうか、グリーズ。早速だが…俺と勝負しろ。」
「…は?」
グリーズが驚いた表情をする。
「ルミナ。」
「はい。」
レオが呼んだ直後、ルミナは数十本のナイフを投げて地面に突き刺し、簡易的なフィールドを作る。
「ここより先に出た方が負け。シンプルなルールだろ?」
「俺はまだやるっていってな…『もし勝負を受けないなら、この集落の奴らを1人ずつ殺していく。』な…!?」
渋るグリーズに、レオは脅迫する。
「…わかった。勝負を受けよう。」
そうして、ナイフのフィールドの中に2人は入る。
「準備はできたか?」
レオは余裕の笑みを見せる。
「…ああ。」
対するグリーズは集中力全開の強張った表情をする。集中仕切っているからか、敬語すらなくなっている。
「では、いくぞ!!」
そういって、レオはいきなり殴りかかる。顔面に右ストレート。単調な攻撃だが、一般人じゃ一切反応できない速度の弾丸ストレートだ。
「…」
しかし、グリーズは反応し、素早く腕をクロスさせてガードする。その後、レオの猛ラッシュが始まる。隙のない連撃で、グリーズは次第に後ろに下がっていく。
「…あ!?」
気づいたら、レオの両足は宙に浮いていた。レオの攻撃を流し、飛び出た腕を掴んでグリーズが体落としをしたのだ。とてつもない練度で、戦闘経験がない者も思わず見とれてしまうほど華麗な手捌きだ。
だが、このままやられるレオではない。空中で体を思い切りひねりその回転でグリーズの掴みを解き、そのまま華麗に地面に着地する。
勝負は決着が着いてない…にも関わらず、お互い仕掛けようとせず、それどころか驚いた表情をしながらお互いの顔を見ていた。
「「お前、もしかして礼王か!?
お前、もしかして吾郎か!?」」
やっと会わさせることができた…!メインキャラだぞ何話かかってんだよ私
主人公のガチバトルを期待してた方ごめんなさい
(あんまり早く戦わせすぎると最強感が薄れてしまうので…ね?)
訂正について
柔道経験者の友人に、このタイミングでの背負い投げは言われたので、体落としという技に変えました。どういう技かは調べてください。