第18頁 仲直り③
書くのが追いつかなくなってきました…やばい。
「………。」
二人きりになって、エネアはすごく気まずそうな顔をしていた。今まで、ライネルにこんな表情を見せたことはなかった。
「…母様…。」
その言葉に、エネアはびくっとして、恐る恐るライネルの顔を見る。
「ごめんなさい…俺…負けちゃった。」
その言葉で、エネアはライネルが全て気付いていたことを察した。その瞬間、涙が溢れてきて、すぐさまライネルに抱きつく。
「ごめんなさい!…今までこんなことして、こんな育て方しかできなくて…こんな母親で、本当にごめんなさい!」
「…こちらこそ、ごめんなさい!止めることもできなくて、それなのにボロボロに負けて、母様の願いを叶えることもできず全部無駄にして、本当にごめんなさい!」
エネアにつられて、ライネルまでも泣き出す。これが、お互いの本心を本気でぶつけ合う、始めての出来事だった。
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しばらく経って、エネアとライネルは向かい合って座っていた。二人とも泣きまくっていたために目の隈がすごいことになっていた。
「…そう、王戦は辞退するのね。」
「ああ…負けたからな、約束はちゃんと守らないと。
…反対しないのか?」
「ええ…守らなかったら、どんな恐ろしいことがあるかわかならいし…。」
今回の一件で、二人はレオの恐ろしさが身にしみていた。
「それに…仮に貴方が自分の意志でそういったとしても、それを止めるつもりはないわ。」
「母様…」
「今まで、貴方はずっと私のいいなりだった。だから、今は少しでも自由になって欲しいの。」
「…ありがとう。」
「…だから、私にして欲しいことがあれば何でもいいなさい。今までしてあげて来れなかった分、頑張って何とかするわ。」
「そうだな…じゃあ、今度こそ、母様には自分の幸せを掴んで欲しい。汚い手も使わず、正々堂々とね。」
「ライネル…!」
「自分のことは、ある程度自分で何かしてみるよ。そろそろ自立した方がいい年頃だし。だから、もし自分じゃどうしようもないことがあったら、その時はお願い。」
「わかったわ、ライネル……ありがとう。」
「こちらこそ…今まで、育ててくれてありがとう。」
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「まさか、お前がここまでするとは思わなかったぜ。」ガルディスがそういう。
「別に…ただミアを悲しませたくなかっただけだ。」
ミアの頭を撫でながらレオはそう返す。ミアはレオにもたれながら眠ってしまっている。
レオ達はライネル達が何かあった時に備えて近くの部屋にいる。ルミナは扉の前にいてライネル達に何かあったら伝えるようにいっている。
「父様、一つ聞きたいことがあるんだが…」
「どうした?」
「王戦についてだが…父様がいきなり思いついて実行するとは思わない…獣神のお告げか?」
「…なんだ、気付いていたのか。」
「まあ、流石に怪しすぎたからな。」
「…それで?聞いてどうするつもりだ?」
「…いや、ただ答え合わせがしたかっただけだ。
それと、もう一つ。ライネル達の賄賂についてだが…」
「…賄賂?なんとことだかさっぱりわかんねえな。」
ガルディスは少しわざとらしく知らないフリをする。
「…いや、なんでもない。」
レオも何事もなかったかのように振る舞う。
会話が終わるタイミングで、ドアをノックする音が聞こえる。
「ルミナです。ライネル様とエネア様が部屋を出ました。」
「わかった。」そういうと、レオはミアを抱っこしたまま、
「じゃあ、自分の部屋に戻る。」
「そうだな、俺も戻ろう。」そういって全員部屋を後にする。
部屋に戻るときに、
「兄弟…なんかいいなぁ…」
そうルミナが呟いたのが、少しレオの耳に残った。