第15頁 親失格
風邪を引いて1週間投稿が遅れてしまいました…申し訳ない。あ、年越しましたね。あけましておめでとうございます。今年も適当な感じで投稿するのでよろしくお願いします。
ルミナによって、会議室に集められたのは、リオン、リオーネ、そしてライネルの母のエネアだった。護衛には外に出てもらっている。
諸事情があったため、レオとエネアの対面はなかった。
本来ならエネアはこの空間に来るはずがなかっただろうが、脅し文句を伝えると、あっさり来てくれた。他の二人にはこのくらいの時間空けておくようにレオが予め頼んでいた。
「こんな所まで呼び出して、何をするつもりかしら?」
エネアが少し不安そうな顔でいう。リオンとリオーネも、そこについては何も知らない。
「まずは、こちらをご覧ください。」そういって、ルミナが先程の水晶を取りだすと、水晶から壁に光が発射された。その壁には、ライネルが剣を抜いて切るところからの映像が流れていた。それとともに、ルミナがそこであった話をあくまで客観的に述べる。
映像とルミナの話が進むごとに、エネアの顔から余裕が消えていく。リオーネははらはらしながら見ている。リオンは複雑な顔をしていた。
「…以上が、今回の事の顛末です。」
「ほ、本当に無事なのよね…?」
「ええ、ライネル殿下も気絶しているだけです。」
「…よかった…。」
安堵するリオーネに対して、エネアの顔は絶望のままである。この現状をどう打破するか必死に考えようとする。…が、
「今回の原因は、先程話しましたが…。」
ルミナは、少し勿体ぶってから続ける。先程のレオを少し真似て、ルミナ自身も顔には出さないが少し楽しんでいる。
「実際には、賄賂を受け取っていたのは貴方ですよね、エネア王妃。そして、ライネル殿下はそれを知っていた。そうですよね?」
「!?」リオーネとリオンが驚いた表情でエネアを見る。エネアは明らかに動揺していた。
「それに、何度も隠密部隊をこちらに送り、こちらの動向も探ろうとしていましたよね?」
事実、こちらの偵察のために来ていた怪しい人物を、レオはルミナに撃退させていた。だが、エネアは部隊との繋がりを断つためにこちらと繋がっている証拠は全て消していたはずだった。
「…本当なの?エネア…。」リオーネは、怪訝そうな顔で、しかし信じたくないといった感じでエネアを見る。
その瞬間、エネアはリオーネに突進していた。隠していたナイフを持ち、一気にリオーネに肉薄する。
「母様!」リオンが慌てて剣を抜きそれを防ごうとするが、間に合わない。
今にもナイフがリオーネを貫かんとしたその時、
キンッ
その音と共に、エネアの持っていたナイフは宙を舞い、誰もいない方へ飛んでいく。
ルミナがナイフを投げ、エネアの持っているナイフを弾いたのだ。
ナイフを失ったエネアは、絶望した表情を浮かべながら、少し後ずさりし、ヘタリ込む。
「エネア…。」リオーネはエネアに歩み寄ろうとする。
「母様、危険では…『いいの。』」
リオンは不安そうにいうが、それも承知の上でリオーネは近づく。
「どうして、そんな事をしたの…?」
ナイフで刺されそうになっていたのに、リオーネは依然として優しい口調でエネアに質問する。
「!……」そんなリオーネにエネアは一瞬驚いた表情をし、観念したように下を向いた。
「…悔しかったのよ。」
「悔しかった?」以外な言葉に、思わず聞き返す。
「陛下は…ずっと私を愛してくれなかった!私といるときも、私を抱くときも、陛下を愛していたのは私じゃなかった!特に貴方よ!貴方のせいで、私は…!」
話していくうちに、エネアの目には涙が流れていた。
「エネア…さん…」エネアの必死さに、リオンも少し憐れむ。
「だから、私は貴方に勝ちたかった。陛下を振り向かせたかった。自分で言い寄るのはプライドが許せなかった…。」
「…でも、王妃としての貴方は完璧で、私の付け入る隙も、私が勝っているところも、何一つなかった。」
「だから、せめて母親として、貴方に勝ちたかった。立派な王子を育てて、私の存在を認めてもらいたかった。」
「そのためには、何としてでも、王戦で勝とうとして…なのに、どうして、こんなことに…。」
途中から黙って聞いていたリオーネは、エネアの前に座り込み、言葉を返す。
「…エネア。母親としては、貴方の方がすごいと思うわ。私は自分の子供に、ほとんど何もしてあげれなかったもの。」
「…でも、貴方の手が汚れるのを見て、貴方の子供はどう思うのかしら?きっと、こんなやり方じゃ、陛下は喜ばないと思うし、何より、貴方の子供は、貴方を止めれないという罪悪感を感じているんじゃないかしら?」
「…!」言われてみれば、ライネルは一度、こんなことやめようと言ってきたことがある。
これもあなたのためといって突っぱねた時、確かにライネルは物凄く悲しそうな顔をしていた。
「それに、貴方の子は、陛下の子供でもあるでしょう。」
「っ…!」
最初はただ、自分を愛して欲しいだけだった。それが、リオーネへの憎しみに変わっていき、あまつさえ、自分の最愛の人の子供を傷つけることになってしまった。今になって、その後悔が溢れてきた。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい、ごめんなさい!」
エネアは、必死に謝った。自分のプライドの高さのせいで、リオーネに八つ当たりしていたことを。
でも、リオーネは、首を横に振ってこういった。
「貴方が謝る先は、私じゃないわ。」
その言葉を聞いて、エネアははっとした表情をし、涙を流したまま部屋を飛び出した。
「では、私もこれで失礼します。」そういって、ルミナは部屋を去ろうとする。
「ありがとね…ルミナ。」リオーネは少し微笑んでそういった。
「いえ…。」ルミナは自分の活躍じゃないといった様子だ。
「…レオはここまでお見通しだったの?」リオンが気になった様子でいう。
「どうでしょう。レオ様が何を考えているのかは、私にもわかりませんから…。」
(そういった所も、とても素敵なんですが。)
心の中で惚気ながら、ルミナは退出する。
その言葉を聞いた後、リオンは何かを決心したような顔をしていた。