番外編11:誕生日話
ホントは日数整理してから書こうと思ってたけどちょうどよかったので。
――そういえば、と思い出したことがひとつだけある……
「ねぇ、ビネガーさん。この世界って誕生日とかってどうなってるの?」
「誕生日……ですか?」
「うん。お祝いとかってするの?」
私がそう言うとビネガーさんはようやく意味を理解したのか納得したような表情をして
「そういうことですか。えぇ、必ずというわけではありませんが大体は祝ったりしてますね。」
「へぇ……」
祝ったりするんだー……そう思いながら佐藤と塩を見れば
やっぱり2人は唖然とも言えるような表情をしていた。
もっとも、ビネガーさんは佐藤達の様子に気づいてないみたいだけど。
「そういえばモチヅキさんの誕生日はいつなんですか?」
「んーと……この世界で言えばなんだっけ……水暖の9日かな。」
私の場合は一応この世界でもちゃんと誕生日があるんだよね。
微妙にずれてると思うけど。
でも、佐藤達は……
「それではお二方……どうしましたか?」
「ビネガーさん、ふれてやんないであげて。」
だってさ、佐藤の誕生日は11月22日で、塩の誕生日が12月24日なわけで。
この世界は事実上10月までしかないんだから
つまりは2人の誕生日が祝われることがないってことなんだよねぇ……
まぁ、昔の日本方式だったらまだワンチャンあっただろうけど。
「望月、おまえわざとだろ。」
「なんのことだろうね?」
にしても、そう考えたらいつもやってたあれをやる機会がなくなるのかぁ……
いつもっていうか毎年だけど。
まぁ、そう言ってももう卒業してもいい時期なのかもしれないよね。
プレゼント交換ってさ。
「ねー佐藤、もうプレゼント交換なしでいい?」
「あ?……あー……まぁ、いいんじゃね?」
あ、あれはどっちでもいいパターンだ。
どのみち佐藤の誕生日がないんじゃ交換も成立しないけどさ。
ちなみに、どうして私が塩の誕生日を知ってるのかと言えばただ単にクラスで騒いでる人が多かったから覚えたっていうだけだ。
ホント、そういうことってあるよね。
それはそうとして。
「……自分で言っておいてあれだけどさ。佐藤は何か欲しいのある?」
「あー……今思いつかねぇからおまえの誕生日んときでいいか?」
「わかった。」
ホント自分でプレゼント交換なしでもいいか聞いたのにね。
なんか落ち着かなかったんだよ!
――それから後日、今日は佐藤とお買いものをすることに。
まぁ、本題はプレゼント交換するプレゼント探しだけど。
「んー……これいいなぁ……」
「なら望月のはそれだな。」
適当にお店を回って、私が欲しいと思ったのは元々の世界にもあった手のひらサイズの辞書だったりする。
この世界の文字は読めるけど意味とかわからないからちょうどいいんだよ!
ただ、佐藤はなかなかピンとくるものがないのか、全然選ぶ気配がなかった。
「佐藤まだー?」
「……望月、ちょっといいか?」
「ん?」
佐藤は徐に私の左手を手に取ると、そのまま私の左手薬指の根元に歯を立ててきた。
いや、痛くないけどびっくりしたよ?
「んじゃ、俺のプレゼントはこれで。」
「……へ?」
何も佐藤に買ってないのに佐藤はそのまま帰る方向に向きなおしてさっさと帰り道に足を進めていた。
とりあえず置いて行かれたら困るからついてくけど……いいのかなぁ?
「佐藤、いいの?何も買ってないよ?」
「いいって言ってんだろ。……あぁ、望月。今日のデザートは抹茶プリンな。」
「もー……じゃあそれがプレゼントね。」
なんで左手薬指の根元を噛まれたのかわかんないけど……
なんとなく、この佐藤の歯型って……何かに似てるような……?
――私がその意味を理解したのは私がいろんなものに対して自覚した時だった……――
なお、この世界で結婚指輪の決まりとかはないです。
まぁ、ここでぶっちゃけてしまえばちょっぴり「?」のついてるあれが確定しつつあるとかね。
なんとなく最後の想像はできてきてるよ。うん。




