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番外編10:シオ話

シオ視点だよ!

――『氷雨……私の氷雨……』

母さんは僕を見るといつもそう呼んで泣いていた(・・・・・)

本当は知っていたんだ。僕の父さんは確かに父さんだけど本当は違うって。


これは、家族以外に知っている人がいないこと。


知らない世界で僕はふと、唐突に母さんのことを思い出すことがよくある。

母恋しいとかそういうのじゃないけどね。



僕が生まれたのは聖夜の前日の雪が降る夜で、その日は僕の本来の父さんの命日なのだと父さんが言っていた。

そもそも父さんと母さんが結婚した理由は知らないけど、父さんはとても母さんを愛していた。

母さんが例えもういない誰かを想い続けていても……


「氷雨、無理してないか?」

「してないよ、父さん。」


幼い頃、僕はまっすぐにこちらを見てくれない母さんに見てもらえるように勉強もなんでも頑張ってきた。

異性にも優しくしてみた。

そして、気付けば僕は人から“甘いシオ”と呼ばれるようになっていた。

“甘くないサトウ”と呼ばれる男もいたけど。


学年があがるほど何故か僕の周りには異性が集まる様になっていたけど僕にすれば一番近くにいて欲しい人がいないから正直に言えば、なんの意味も持てずにいた……


そんな時だった。彼女に出会ったのは。

彼女は、僕に興味をまったく示さず、だからこそ僕は彼女に興味を持った。

いつしか、母さんに見てもらおうと考えなくなって……



そして、僕はあの少なからず憎たらしい“甘くないサトウ”と呼ばれるクラスメイトと共に知らない世界へ召喚されてしまった……

なんでも、僕達と同等に近い存在がいて、僕達はその代用品となって貰う為に召喚されたらしい。


「もちろんタダでとは言いません。あなた方が望む存在を召喚するでもいいですし、欲しいものを与えるでもいいですし……」


僕達を召喚した人にそう言われた瞬間、僕の脳内にはあの話したことはないけど興味を持った唯一の存在がよぎり


「「なら、望月杏子を」」


一瞬、佐藤が何を言ったのかわからなかった。

そして、佐藤も僕が何を言ったのかわかってないような表情をした。


この時初めて知った。

彼女が、この男と幼馴染だと言うことを……


それを知った時、僕が思ったのはずるいな、ということと奪いたいと思う欲だった。


それからすぐに望月さんは召喚されたけど……僕は、ほとんど彼女と行動することがなかった

と、いうのも召喚されてからすぐにこの国の王様であるアル王と対面してからリン大陸の探索を依頼されて彼女はすぐに向かってしまい、探索初日に僕も同行したかったのに気づけば佐藤が同行することになり

そして、僕も一緒に探索できると思えばすぐに結界によって足止めをくらい。

しかも結界は竜に認められた者しか通れないと発覚して結局僕はその後の同行を許されることはなかった。


次に機会があったのは、市場と呼ばれるものが来るとき。

僕が同行できたのは2日目のことだった。

もっとも、僕は帰ろうと思った時に彼女とはぐれてしまったけど。


でも、その時繋いだ彼女の手はとても小さく、柔らかかったことを覚えてる……



だけど、いつからだろう。

彼女が僕を見てくれなくなったのは……

いや、いつという明確なものはないけど。

彼女は、もうひとりの召喚者である佐藤ばかりを気にしていた。



――僕が、どこに帰りたいのか。僕自身にもわからなかった……――


僕が“彼女”に出会うまであと……

てことでシオ話。

シオがオモチと遭遇したのはだいたい中学にあがった頃です。(ついでにサトウも)

そして実は複雑な家庭事情ていう話。

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