81:いろいろ判明したこと。
「まぁ、元気そうだからいいか。」
「……おぬしはホント……いや、まぁよいか……」
いや、だって。
完全に睡眠妨害しかしてないし、気にはなってたけどそんなに深くでもないし。
「それで職業のことじゃったな?」
「うん。ビネガーさんに職業の本一通り見せてもらったけど、なんか偏ってる感じがしたからさ」
「なるほどのぅ……」
アル王はまだ暴れてるあの子をもう一度見てから鏡のスイッチを切り、いつもの部屋へ行こうと移動することに。
まぁ、いつもの部屋ってあの和室なんだろうけど……
「あれを決めたというか作ったのはリデルじゃよ。」
「……ん?リデルって確か……さっきアル王の横にいた?」
「そうじゃ。」
あの人が職業を作ったのかぁ……んん?
見た感じビネガーさんくらいに見えたけど……アル王とかカルーアさんみたいに見た目通りの年齢じゃないってこと??
思ったことをそのままアル王に聞いてみれば爆笑された。解せぬ……
「まぁ、確かにあやつはそういう捉え方もできるがのぅ。」
「じゃあやっぱりあの子に近いの?」
「ふむ、おぬしは案外敏いようじゃのぅ。」
ん?今馬鹿にされた気がするんだけど。
そう思ったけどとりあえず先を促す為にツッコミは入れずにいれば
「あまり詳しく言うとあやつも怒るから言えぬが大筋ではそうじゃよ。」
「ていうかこの世界って言霊の概念とかないの?」
「うむ。それこそ言霊というのはおぬしの世界が故の概念じゃと思うがの。」
アル王が言うには、呪術師は結局のところ魔道士の分野から見てわかりきれない力を使う者の総称ってことにもなってるらしい。適当か。
「じゃが、大抵の者は明確にわかる力ばかりじゃから呪術師になる者はほとんどおらんかったんじゃ。」
「だからあんなに曖昧なのか……ていうかなんでサイキッカーとかはあるの……」
「うむ……それはだいぶ最近追加したものじゃな……」
ちなみにで言えばアル王の言う最近はそれでも何十年前レベルだったけどね!!
それなら言霊使いとかその辺も増やしとけばいいじゃないか!!
「で、望月。他に聞きたいことは?」
「そういえばオリーブ双国ってどうなったの?」
「あぁ、それもあったのぅ。はっきり言えばあの者の影響のひとつで半獣側の海鮮がでかくなっていたようじゃ。」
だからあんなに身がすかすかな魚になったのかぁ……
どうせなら身もみっちりな魚にすればよかったのに。
「じゃああの流れてきてたっていう魔族達は?」
「うむ、無事に双国へ帰ったようじゃ。元帝国にいた者達はなかなか大変だったようだがの。」
何が大変だったのかは聞かないでおこう。私の精神衛生の為に!
じゃああの双国も問題なくなったってことでいいのかぁ……
「そういえば佐藤が召喚される原因になったシュガーさんだっけ?」
「うむ、そうじゃな。それが?」
「あの人って確か魔族経由で心臓破裂で死んだんでしょ?」
「うむ。そのことならこちらでも知っておる。その呪いを行った魔族なら依頼者の娘と夫婦になって子が3人じゃったかのぅ」
……なんか、それって、すごく嫌な感じがする。
なんとなくだけどさ。
「人の命を奪っておいて自分は幸せになってるってこと?」
「幸せの基準は人によって違うというからのぅ。ただ、その魔族への対価が身をささげることじゃっただけじゃ。」
「んー……とりあえずなんかそれも精神衛生によくなさそうだから深く聞かないけどすごい魔族だったの?」
「いいや?わしらにすれば脆弱な魔族じゃよ。旧名で言えばそやつはインキュバスと呼ばれておったのぅ。」
あっ……(察し)
「佐藤のやつがシュガーさんみたいに殺されたらやだなぁ……」
「それは大丈夫じゃと思うぞ?」
「え、そうなの?」
私の返しにアル王はなんかすごく近所の子供を見てる近所のおじいちゃんレベルの生ぬるい眼差しをしていた……だから解せないって。
シュガー氏の呪いを依頼した人はきっと死んだ魚のような目をしてるでしょう。
そしてサトウが呪われることはないとアル王が言いきった理由は単純にヤツがある意味一直線だからっていうね。




