番外編6:とある国の王のひまつぶしとみせかけて
察してください。
――その日、カフェイン大国が唯一王であるアル・キングス・カフェインは暇だった……――
「うむ……暇じゃのぅ……」
「アル王、だから書類処理はある程度残してくださいと言ってますのに……」
「もっと仕事がしたいんじゃ。」
あの召喚された3人も、世界唯一の召喚士も実はたった1人の血族も知らないこと。
アル・キングス・カフェインという男はとても仕事人間だった。
だからと言って寝食を忘れて仕事をするわけではない。
睡眠時間はいつもきっかり10時間。
残りの14時間の間に他のやるべきことを全てこなすという毎日で
特筆することがあるとすれば仕事をやり出すとすぐに終わらせてしまうということだろうか……
そして、彼が日中で最も過ごす場所は和室で
そこでオラン(みかんのようなもの)を食べてまったりするのが癒しだという……
「さて、少し遊びにでも行ってこようかのぅ」
「……あの異世界の子達、ですか……あまり構いすぎると嫌われますよ?」
「そうなんじゃよなぁ……望月に不法侵入できない契約をさせられてしまったんじゃよ……」
「貴方に契約をさせるとは……すごい子ですね……」
アル王の側近もここ数年変わることなくそこにあって
それでも彼らはアル王のように幼い姿をしているわけでもなくて。
だが、一番の側近である青年は20年以上前から姿が変わらないとか……
「あぁ、アル王。報告忘れてました。“彼”が現れたらしいと」
「……なんじゃと……?」
「先日の市場にて、“彼”の生存周波が感知されたと報告がありましたよ。」
「ぬぅ……あの者が……あやつは他世界の者が好きじゃからのぅ……」
アル王の言葉に側近の青年は冷たく笑みを浮かべる
「好意なんて生ぬるいものではないでしょ?“彼”は、竜達よりも何事も直結してるんですから」
「まぁのぅ……だが、ならばなおさら望月に会わねばのぅ。」
「そうですね……もし“彼”の狙いがその子なら……とても厄介なことになるでしょうね……」
「望月はただでさえ鈍いからのぅ。サテラにも注意を促しておくわい。」
「えぇ、お気をつけて。」
一礼した側近に背を向けアル王は慣れた足取りでビネガー宅を訪問する。
それが遅かったのか、まだセーフの段階だったのかはわからないが。
“彼”という存在のことはまだ、誰にも気づかれる訳にはいかなかったから……
ところで、アル王の執務室に残った側近の青年はアル王が座っていた席を見つめ、小さくため息をついた。
「アル王もわざわざ重荷を背をわずともいいだろうに……ホント、あの方は……」
側近の青年の名はリデル・クリア・アミノ
大陸の名を姓に持ち、カフェイン大国の唯一王につき従う人でありながら人ならざる存在だった。
もっとも、そのことを知ってるのはアル王と同じ側近の者1名とあの狼人情報屋だけだったが。
「さて、元始の竜が残した種のせいでとても厄介なことになりそうですね。……あの3人がなんとかしてくれるといいですよねぇ……」
側近リデルは窓の方に視線を移しつつ目元のメガネを少しだけ押し上げた。
さわりと流れた風に揺れた髪は青白く、金に染まった瞳はどこか遠くを見つめる……
おかしいな……側近とか出すはずじゃなかったんだけど……
まぁ、アル王の側近もおかしいよ!って話です。(違う)




