43:戻った結果とあの実。
結局、どう頑張ったって1日で端っこまで行けるはずもなく……
「んー……今日はここまでかなぁ……」
『人間って弱いわね。』
「いや、これでも早い方だと思うよ?そもそも自転車なんてここにないし。」
『ここ?じてんしゃ?あるじゃないの?』
あ、これは話が通じてないパターンだ。
そういえば私がこの世界の人間じゃないっていうのも言ってないもんね。
仕方ないよね。
『黄竜、このお嬢さんはこの世界の住み人じゃないわ。』
『…………え?』
「どうも、諸事情で召喚された一般人ですよー」
『に……人間に召喚術を使えるのがいたなんて……』
そこなのか。
ただ、すぐに黄竜は立ち直ったのか、納得したように頷いていた。
『だからよく知らない道具を使ったりしてたのね。』
「うん、まぁ……私の力で作ったのだから正確なものでもないけどね。」
『それでもこんなものがある世界なんて想像もできないわ……』
多分、昔の人もこんな感じだったんだろうなぁ……
そう思いながらふと上を見上げればもう日がだいぶ傾いていた。
「あ、ホント帰らなきゃ。今日はここまでー」
『しょうがないわね。明日も来るんでしょうね』
「そりゃね。」
私だって何かを途中で投げ出すなんてヤダし。
ちょっとこの探索が楽しいし。
とりあえず明日は甘味でも作ろうかな……
甘いの好きかわかんないけどね!
***
「ということでただいま戻りましたー」
「あぁ、お疲れ様です。モチヅキさん」
とりあえずごはんを作るのとあの緑竜のおやつを調べるのどっちがいいかなぁ?
そう一瞬思ったけどまだ佐藤も塩も帰ってきてないらしかったから私は図鑑みたいなものがあるのかビネガーさんに聞いてみることにした。
「図鑑ですか?ありますよ。」
「わーありがとご、ざ……分厚い!!」
電話帳もびっくりの厚さのある本をビネガーさんはリビングのテーブルの下から出してきた。
ていうかなんでそんなとこにあるの……
「よく使う物は本棚にしまうよりこちらに入れておいた方がすぐに出せるんですよ。」
ビネガーさんが言うには、この図鑑を本棚にしまおうと思ってもサイズ的になかなかうまく収まらないらしい。
まぁ、重いのを持ち運ぶよりは楽だろうけどさ……
ちなみにこの図鑑は同じものがあと3冊あるらしい……
ペラペラとページをめくりながらあの実の形状とか葉っぱの形とか思い出しながら照らし合わせて1時間ちょっと。
私はようやく該当するであろうページを見つけることができた。
……ただし、それはちょっと嫌なフラグ臭がしそうなページで……
【カルホアの実】分類:薬/植物
○白い花の様な果実で、食すと甘い。
○魔素の強き存在が生で食するには問題がないが、魔素に対して弱き存在がそれを生で食すと魔素を急激に吸収するのと同等の効果が表れ、場合によってはその身が変化することもあるので通常は触れない方がいいでしょう。
○なお、焼いた場合は精神汚染を起こす毒が発生するので注意。
……うん、察した。
黄竜が言ってた疲れが吹っ飛ぶって多分そういう意味だよねぇ……
さすが竜系しかいないであろう未知の大陸……なんて危うい……
私は持ち帰ってきてしまった実の入ったロックできるあの袋を社畜号達につけているアイテムボックスぽいあれの隠しスペースにしまったのは言うまでもなかった……
竜達が食べて平気なのは力自体強い存在だからです。
オモチとかは危ういくらい。(ショタ爺王含めて)
でもビネガー氏とかが食べるとダウトな代物でした。




