138:基本は平和です
――この世界でも、妊娠してから出産するまではいわゆる十月十日らしい――
「じゃあもうすぐ生まれるの?」
「うん、そうなんだ」
あれから幾日、あいかわらず私達はビネガーさんの家に居候をしていて、今日は塩が久しぶりに遊びにきた
なんでもそろそろフォルさんが産気づいてもおかしくないんだとか
「塩もお父さんかぁ……出産お祝いなんか送った方がいい?」
「そんな……気にしないでよ」
「けっ、催促しに来たんだろどうせ」
ヤサグレ佐藤はおいといても。
タオルとかでも送っておけばいいかな……
……そういえばサキュバスの言ってたっけ……出産後旦那の方があれだって……でもあれってなんだろ?
とりあえず話の流れで私はサキュバスに聞いたことを話してた。
それを聞いた男どもは……なんとも言えない表情をしていたけど……なんでこっちを見るの
「でもさ、フォルさんが産気づいたらわかるの?連絡くるの?」
「あぁ、うん。僕がいないときに産気づいたときは元々隣の家の人が手伝ってくれることになってたから」
……ん?手伝う?
そういえば出産ってどこでやるんだろ?
今更そう思ったから聞いてみれば……
「自宅出産だと……」
「うん、病院そのものがないからね……」
「なる。……ならやっぱり傍に居てあげた方がいいんじゃないの?」
出産祝いていうかおみやげ……タオルの詰め合わせでいいかなぁ……あとなにか……
「あと何がいいかなぁ……」
「あー?すぐ食えるもんとか?」
「それだ!」
お湯を沸かすくらいならできるだろうし。
私は手早くタオルの詰め合わせとレトルト食品を作った。
カレーにおかゆに親子丼にいろいろと
「はい、塩これお祝い兼おみやげね」
「あ、ありがとう……」
塩は苦笑いを浮かべながら帰って行ったけど……フォルさんは大変だよね。女の人だから
それから私は相変わらず居座ってる陽翔をマッサージして、ブラッシングした。
なんだ……犬じゃないのに犬飼ってる気分になるんだけど……
犬と言えばそういえば最近カルーアさんは忙しいらしい。
というのも、アル王が……じゃなくてカイルさんが神聖領で暴れた件で情報収集をしなきゃいけなくなったと言ってたからね。前来てたとき
土地が混乱してるときなら完全人姿にさえなっていればバレないらしい。
……経験済みなのだろうか……
「望月、腹減ったんだけど」
「はい、焼きおにぎり」
「お、おう……」
まぁ、ビネガーさんもそろそろ帰ってくるし今日の晩ごはんどうしようかなぁ……
そんな感じで私にすれば変わらない毎日が過ぎていく……
その翌日、フォルさんが女の子を出産したという情報が入ってきたのはある意味予想外だった。
たぶん次がエピローグ前ラスト。
つまり次の次がホントのラストかなーって思ってます。




