132:上の方で得るもの
――ビネガーさんのお父さんに連れられて家に戻ればビネガーさんのお母さんははっきりとビネガーさんを見て“シア”と呼んでいた。
……これはダメなやつだ……
「ビネガーさん、そろそろ帰りましょー」
「あ、モチヅキさん。そうですね……」
ビネガーさんはなんとも言えない表情でお母さんを見て……
すぐに諦めたように頷いていた。
その様子を見ていたビネガーさんのお父さんもなんとも言えない表情をしてたけどね。
「じゃあお邪魔しましたー」
「いえ、お構いもできずに……」
野菜とか貰ったから十分なんだけどなぁ……
ビネガーさんはお父さんに気にしないでと言う感じに首を横に振っていた
まぁ、何に対してなのかはふれないけどさ……
それから、私達はまだ時間もあるからオレイン国を社畜号で縦断していた。
もちろん目的は反対側にあるらしい少し風変わりなものを見る為だよ!
にしても……
「ビネガーさん、お母さんのこと、いいんですか?」
「……母が、あんな状態になってるとは思いませんでしたから……」
ビネガーさんはそう言うと少し寂しそうに窓の方に目線を向けていた。
まぁ、しょうがないか……
実の親にすでにいない存在と思われたら寂しくもなるもんね……
どう、元気付けようか考えてるうちに私達の目線の先にはなんか竹みたいのがたくさん揺れていた。
……もしかして……?
私は慌てて社畜号を止めて、すぐに降りようとした。
だって、もしかしたら砂糖が手に入るかもしれないし……!
「ちょっと話聞いてきます!!」
「望月落ち着け。いや、焦る気持ちもわかるけど……」
「なら止めないで!」
そこまで言ってすぐに社畜号を降りた私は、2人が私の背中を見ながらため息をついたことなんて知らない。
私の考えが、間違ってないといいんだけど……
「あの、すみません」
「あら?見かけない顔ね。何か用かしら?」
「これって、なんですか?」
竹みたいなのを1本1本丁寧に切り倒していたおば……お姉さんは綺麗な笑みを浮かべて
それを教えてくれた。
「これはトゥサの原料になるトゥルビよ」
よくよく聞けば、ビンゴだった。
トゥルビを潰して汁を出して、煮詰めて、遠心分離して、結晶にして、それからもう一度溶かしていろいろと手を加えてトゥサにするらしい。
つまりそういうこと。
トゥサが砂糖、トゥルビがサトウキビっていうことになるわけだ!
「あの、これって買うことできませんか?お金、あんまりないですけど……」
「あら、トゥルビに興味あるなんて珍しいわね」
「え、あまり興味もたれないんですか?」
「そうね。トゥサよりもティオの方がやっぱり需要があるのよねぇ……」
補足すればティオが塩らしい。あのしょっぱいやつね!もちろんだけど
そりゃ塩分って大事だけどさー……糖分だって大事なのに。
「ダメ、ですかね?」
「まぁいいわ。今年はちょっといつもより取れ過ぎるから廃棄に困ってたところなの」
結果で言えば、私はトゥルビ20本を小5つで買うことに成功した。
ていうか安くね?え、なんでこんなに安いの?
その理由をお姉さんに聞けば彼女は豪快に笑いながら教えてくれた。
「そんなの加工が手間だからに決まってるじゃないの。燃料費だけで少なくとも銀4枚はいくからね」
「な、なるほど……」
その後、ついでにとトゥルビ以外にもここら辺でしか作られていないというものをいくつか買うことができたから私的にはわりと満足だったりする。
「……ずいぶんと買ってきたな……」
「いやだって安くてさ」
そう、安かった。
私のバイト代の残りでも十分に買えるくらいだったからね
今日はこれでいろいろ作ってみようかなぁ……
結局、ビネガーの母親は救いようがないです。
とりあえず調味料の方の砂糖と塩もあるんだよ!って話!
・・・・・こんなんで終われるのか自分でもツッコミ入れたいけど必要だと言い聞かせる




