117:ほんのちょっぴりの進展
――誰かを想い続けている存在が好きらしい陽翔。
そういえば私以外にも陽翔に懐かれているのがいたっけ……
……佐藤は、誰を想ってるんだろ?――
「想う……想うかぁ……」
「どうした?望月」
「んー?いや、今日ゼロにさ」
私はいつの間にか帰ってきていた佐藤にゼロに聞いた陽翔の本質を話した。
話終わって少しの間、佐藤は考え込んだかと思えば……なんというか、わかりやすいくらいに顔が一瞬で真っ赤になっていた。
「……佐藤、いつの間にそんな顔芸取得してたの」
「いや、違うそうじゃねぇだろ!?」
「まぁそうだけど。……佐藤が誰かを想い続けてるってなんか意外だね」
「……おまえ、俺をなんだと思ってんだよ……」
佐藤がいつから誰を想ってるのかなんて知らないけどさ。
やっぱりなんか意外なんだよねぇ……
悪ぶってたのに……
「……だから女が近寄ってこなくなったのか……」
ぼんやりとしてた時、佐藤がぽつりと何かを言ってた気がしたけど
何を言ってたのかは私は聞こえていなかった。
まぁ、いいこととしよう
「そういや望月、おまえ例のやつの世話役になったんだって?」
「うん。ただの名目だけど」
そういや佐藤ってゼロの名前を呼ばないよね。
ってよく考えたら佐藤はちゃんと自己紹介しない限りは名称では呼ばないんだっけ
小さいときからだけどさ、そこは変わんないんだね
「名目でもあれば堂々と城に入れるんだからいいんじゃねぇの?」
「もともとアルバイターの名目も追加されてたけどね」
「……アルバイトの概念はないからな?一応言っとくけど」
「…………まじで?!」
佐藤が言うにはこの世界にはアルバイトという概念はなく、ただ手伝い人という名称がこの世界で当たり前の概念らしい。
手伝い人とは、困ってる人の手伝いをして小を得る人達のことで、元帝国の方にその人達が多いとか
……金と銀と小は世界共通の通貨だったのかぁ……
「そういえば佐藤って誰を想ってるの?」
「……おまえがそれを聞くのかよ……」
「え、だって気になるし。もしかして私の知ってるひ……」
私の知ってる人?って聞こうとした瞬間だった。
気付けば私は佐藤に引き寄せられて、頬を両手でぶにっと潰されていた。
おいこらこのやろ
「ガキんときの指きりは、おまえの中じゃなかったことになってんのかよ……」
「ふぇ?」
ちょっと潰しが強い気がするんだけど。
普通にしゃべりにくいんだけど。
……ていうか、佐藤のやつ……まだ、あれ覚えてたの?
とりあえず頬を潰してる両手をギリギリと微妙に離して……って、どんだけ力入れてたのホントに!!
「そもそも佐藤がまだあれ覚えてたことに驚いてるんだけど」
「俺をなんだと思ってるんだよ……」
えーと悪ぶってる私の幼馴染?
まぁ、思った事を素直に言ったらこいつ怒るんだろうけどね
「―――」
耳元で佐藤が小さく呟いた言葉、そして一瞬掠めるように触れた気がする柔らかいなにか……
その2つに私は思わず混乱に陥ったのは多分しょうがないことだと思うんだ……
指きりの約束は番外編9に。
とりあえず思うのはようやく前進だぜ!って話。
ホントはぶにってしてる時に奪わせようかなとか思ったけど根本サトウはヘタレなので……うん。
(そのくせ番外編11での行動については触れてはならない)




