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自殺  作者: 真貴人
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第五章

近辺の歩道橋には、


『命は親から頂いた大切なもの もう一度静かに両親や兄弟や子供のことを

 考えて見ましょう 独りで悩まず相談して下さい』


(実際に現地にはこう言った看板が実在する。)


と言った、自殺志願者に呼びかける偽善めいた看板を頻繁に見かける。




「さてと・・・。旅館は向こうか・・・。」


「(最後の晩餐・・・か)」


彼は、最後の一夜を、

昔バーちゃんと泊まりに訪れた旅館で過ごそうと決意していたのだ。


その時、1人の老人の姿が目に止まる。



「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」


重そうな荷物を持って苦しそうだ。





「あ、だ・大丈夫ですか。家はお近くですか・・・?良かったら持って行きます。」


見兼ねて駆け寄る彼。


「・・・?」


「あ、どうもすいませんね。お願いしていいですか。」


「あ、は・・・はい。」


「(この人、目が不自由なんだ・・・)」




彼は、老人宅まで荷物を運んで来た。


「助かりました。まあお礼に上がってお茶でも。」


「あ、いえ・・・急いでますので・・・」


「まあまあそう言わず・・・」


「え、あ・・・はい・・・」


断りきれない性格の彼・・・。




家に上がる彼。


「1人暮らしで、らっしゃるんですか・・・?」


「ええ・・・馬鹿息子がいたんですけど・・・」


急に重い表情になり口を開く老人。


「去年の春に、自ら命を絶ってしまいましたわ・・・。」


「!!」


驚きを隠せない彼。それもその筈だ。



自分もその息子と、同じ運命を辿ろうとしているのだから…。





「そ・そーなんですか・・・」


彼は至って冷静に気にしてない様に振舞う。


「あ、あの・・・」


「?」


「こんな事聞いちゃいけないと思いますけど・・・」

   

彼は少し躊躇しながら切り出す。


「息子さんが亡くなられた時、勿論悲しかったですよね?」


「ええ、もちろんです。」


彼は、何故こんな当たり前の事を聞いてるのか自分でも分からなかった。






「自殺する者は、残った者の事などお構いなしですよ。」


老人は淡々と淋しげに語る・・・。

    

「残った者の悲しみなど考えずに・・・。身勝手に死ぬのですよ。」


「じゃ、じゃあ・・・あの」



声が少し震えている彼。だが、質問をやめようとはしない・・・。


「はい」


老人は静かな口調で聞き返す。


「死んでも、悲しむ人がいない人は・・・」


「悲しむ人がいない人は・・・自殺しても問題ないって事ですよね?」


「ふむ・・・。それは私には分かりかねませんが・・・」


「・・・」


「少なくても、貴方が死ねば私は悲しみますよ。」

  

「!!」




「それでは駄目でしょうか?」


老人が強い口調で問い返してきた。


「え・・・!?」


彼は戸惑いを隠せない。


老人は、全てを見通してる感じで有った。



まるで、彼がこれから樹海に向かい、命を絶つ事を理解してるかの様に彼には思えた・・・。





夕飯にも誘われたが、丁重に断り、

彼は戸惑いながら、老人宅を後にする。

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