【詩】「しあわせ」「白鳥」
「しあわせ」
しあわせとは
みちばたにうずくまる
たんぽぽの根の深さ
そらをとぶとりの
はばたきのおと
つめたいあめがあがったあとの
まぶしい光
けれど
わからないのです
しぜんのなかに
しあわせがにあるならば
どうやって、どうやって
おかねをえるのでしょうか
どうやって
ふくをかって
こめをかって
いえをかりることが
できるのでしょうか
どうやって
ニンゲンでいることが
できるのでしょうか
「白鳥」
白鳥よ
この雪原を
どうして飛ばないのだ
どうしてそんなに長い道のりを
歩いてきたのだ
その力強い翼は傷ついてしまったのか
いやそうではない
思いが深すぎるのだ
ただ見つめる足元に
思いが次々と現れるのだ
よぎる過去は途切れることはなく
あしあとをひたすら残し
後へ後へと遡ろうとするように
大地を蹴って飛び立つことを
諦めてしまったのか
このままでは
ただ歩く果てに力尽き
思い出の降り積もる下へ
降り敷かれてしまうというのに
吹き抜ける今の視点も
彼を振り向かせることはなく
ただ足元の
白い未踏の雪原だけを見つめている