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アザーライフ  作者: かくさん
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1-3ヴァーミリオン

 「よし、じゃあとっとと連れてってくれ」


 聞きたい事も色々あるが、とりあえず先に行ってしまいたい。

 「えっ、いいんですか?」


 彼女は目を見開らき、俺を見つめている。


 「丁度退屈だったからなー」


 正直、軽くしか考えてない。こう言う場合はハッピーエンドな落ちに決まってる。こんな退屈な世界よりよっぽどいい。

 

 「では、転送するのですー。貴方の痕跡はこの世界から消滅しますのでー」


 浦田さんはそうやって消えた訳だ。目の前が光で包まれ俺は異世界へ旅立つ、何故、俺の記憶からは彼女の痕跡が消えなかったのか。聞こうとしたがさっきとは変わって彼女の表情は暗く俯いているようである。そんな事を考える中、目の前の光が消えた。


 次の瞬間、目の前に広がっていた光景は巨大な城、ではなく雄大な大自然でもない。


 巨大な牢獄である。


周りは巨大な塀で囲まれ、檻に入れられている者、外で働かされてる者、空は灰色の雲で包まれ、まるで中世の収容所。


 俺と同じような中高生が何万と居て、それぞれが鎖で繋がれ、ぼろ切れを着用して労働している。そこら中に鞭を持った魔人のような人が立ち、労働者に鞭を打つ。血の後が地面にこびり付き、人の骨らしき物も転がっている。


 地獄。まさに、そう表現するしか無いこの状況、俺は何が何なのか全く理解出来ない。


 突然に背中から声が聞こえる


 「おいおいー、ダメだろ。こんな軟弱そうな男。しかも一人って。転送魔法は一日に何度も使えないんだからさぁ」


身長は160ぐらいか、金髪のショートヘアで貴族が着るような豪華な服に身を包んだ少年


 「このクズが!! 何の為に魔力を与えてやったと思ってんだ? ああ?」



 最後にそう怒鳴り、隣の少女を蹴り飛ばし、少女は地面に崩れた。


 「なっ、おい! テメェ! こんな少女に向かって何してんだ!」


 「は?俺の所有物に何しようが勝手だろうが。つったく、今晩はお仕置きだなぁーオイ。可愛い女連れてこいっつたのに」


 蹲る少女の髪の毛を鷲掴みにして、立たせ、顔を殴りつける。


 「テメェ、いい加減に…… っ?!」


 目の前の男を殴ろうとしたのに、何故か拳が当たらない。否、正確には、放った拳は触れずに少年の顔の前で止まってしまった。


 「あ、お前まだ居たのか。どうだ? 始めて見た異世界は? 予想通り楽しそうだろう?」


 ふざけるな。訳がわからんまま飛ばされた先は牢獄で、飛ばした少女は暴行を受けている。思考がついて行かないまま、質問を投げかける。


 「ここは……一体何なんだよっ!」


 少女の髪を放して投げ捨て、少年は待ってましたとばかりに笑い


 「ハハハッ! よくぞ、聞いてくれましたー! ここは、この牢獄の王、バナン様の牢獄”ヴァーミリオン”でぇーす!んでもって、テメェは今日から一生牢獄暮らしでぇーす」


 「 ふざけんなっ! 何でそんな目に合わされなきゃいけないんだよっ!」


 何を言っているのだこの少年は。


 「いやいやぁーもうこれ決定。女ならば、俺の遊び道具になるっつー選択もしてやらなくは無いんだが、このクズが女を連れてこなかったからなぁー」


 そう言う少年との距離を詰めようとするのだが、何故か、今度は全く足が動かせない。恐怖からなのか、それとも魔法のようなものなのか



 「ってもーまあ、ラッキーな事に俺様退屈してるのでーゲームをさせてやるよ。お前が勝てたら、お前の世界に返してやろう。」


 すると、少年は懐から、ナイフを取り出す。


 「これで、お前こいつの腕か足一本切り落としな。そしたら帰ってよーし」


 全身から血の気が引いて行く。一体何を言ってるんだ?


 「ほらほらー制限時間あるからねー俺様の気まぐれだけど。何なら何処切るかこいつと相談しな」


 少年の足元に転がる彼女と目が合う。口元から血を吐きながら声を出す彼女


 「……やって……下さい。せめてもの償いです」


 彼女は何を言ってるんだ? 俺に手足を切断しろと?彼女は真剣な眼差しで俺の目を見る。


 「出来るわけねぇだろ! 俺は唯の中学生だぞ?!大体何でこんな所……」


 「早くしてください! でないと貴方がどうなるかわかりませんよ!」


 彼女は何を言ってるんだ?

 ……嘘だろ? こんな状況で俺の心配をするなんて、おかしいだろ?自分の腕が無くなるんだぞ?


 大体、ここまで来たのは完全に俺の自己責任だ。それなのに心配なんて……分からない。情け? そもそも何故、此処に自分が来たのか。浦田さんを助けに来ただけでは無かったのか?


 それなのに、今俺が迫られてる選択は、少女の手足を切断するか、しないか


 「俺は……出来ない……此処に来たのは自己責任だ。アンタの責任じゃない」


 「なっ……にを言ってるんですか? 今なら帰れるんですよ?」


 出来るはずも無い。

 そう思った瞬間、突然に体が震え出した。


 恐らくこの少年は全て本気で言っている。まるで、子供が小さな虫けらで遊ぶように。そう感じてしまった。だから、本当にここで少女の腕を切らなければ、一生奴隷生活だろう。


 「お願いです!もうどうせ私は……」


 「はあぁぁーぁーい時間切れ☆」


サクッと切断音が聞こえた後、目の前の少女の右腕が宙に飛んだ。


 「ああああああああぁ」


 少女の叫び声


 修道服が真っ赤に染まり、辺りは夥しい量の血が溢れ、地面に出来た赤い水溜りに倒れこむ彼女。  肩から先で切れた腕は宙を舞い、血溜まりに沈む。


 つまらなそうな表情を見せ、冷めた感じの少年。


 目の前の光景に立ち尽くす事しか出来なかった。






 






















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