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ネクロマンサーに、恋をする  作者: 暁カンナ
躍動 シャイア王国編
25/30

第25話 再会




次の日の朝は、前日ボドウィックの言った様に朝早い出立となった。

これは何もボドウィックがフィグを苦手としていたからと言う訳ではなく、単に次の街まで距離があったからである。

朝食を終え、ファナ、エミリアと共に馬をバーンハードの場所に付ける。この辺りの作業は、もう手慣れたものだ。


馬車の用意ができたので、王女を迎えに王女の泊まる宿へ向かうと向こうの準備はもうできていたようで、馬車はそのまま連なって街の外へ向かった。今日の目的地はルーラと言う街。トーバンとは比べるべくもない小さな街だが、そこへ至る道は比較的のどかで開けた土地を行く

。行き交う旅人の数もまだ多く、盗賊や獣の出る恐れはまずない。この道は漣がアプト村からローランに行く際にも通って道だ。


そうこうするうちにお昼の休憩になる。昨日はすぐ食べれるものをローランで用意していたのだが今日からはそうは行かない。食事当番は、このメンツから言っても漣の担当だった。王女たちの馬車は少し離れたところに止まっており、向こうはお付の侍女が担当するみたいだ。


火をおこし、スープ用の鍋をかける。刻んだ野菜と干し肉を入れ、ハムとパンを切る。今回の旅はすべて街に泊まるため、何日もの分を買い置きしなくともよいのがありがたい。おかげで材料も新鮮なものを使える。

「レン、なにか手伝うか?」

ギードが申し訳なさそうに近づいてきた。見るからにこの人も料理は向いてなさそうである。

「いいですよ。あっ、それじゃちょっと火を見てて下さい。水を汲んできますので。」

そう言って漣は傍を流れる小川の方へ降りていった。細い小川だが水はとても澄んでおり、

太陽の光を反射して川面はキラキラと輝いている。あたりにはレンゲの葉が芝生のようになっており、あまりの気持ちの良さ気な様子に漣はふと腰を下ろし、ゴロンと仰向けに寝転がる。目を閉じると、まぶたを光が透けてくる。このまま一眠りできればどれほど気持ち良いか。そう思ってぼんやりしているところへ、声をかける者がいた。




何も起こらない退屈な旅だった。それ自体は悪いことではないし、むしろ喜ばしいことだ。現にシャイア王国に行く際も旅の間は何も起こらなかったし、その時はそれを退屈だなどとは思わなかった。しかし、この帰りの旅は違った。なんせ自分の馬車のすぐ前には例の黒髪の少年がいるのだ。レンといったその少年は旅の連れの少女たちといつも楽しそうに話をしている。こちらはそれを遠くから眺めるだけで、周りに侍女や騎士たちのいる現状、理由もなしにこちらから声をかける訳にはいかない。


初日、二日目はずっと馬車での移動が続いたし、宿も別々だったので全くチャンスはなかった。でも今日は、旅のペースもゆったりで長いみたいだし、宿も同じになるらしい。どこかで声をかけるチャンスはあるかもしれない。ミスファは、朝からずっとそう思っていた。

お昼の休憩時に、そのチャンスは訪れた。

侍女のサリーが昼の用意をする間、ミスファにはすることがない。馬車からぼうっと外を眺めていると、どうやらあちらの馬車では例の少年がお昼の準備をしているようだ。女性が二人もいるのに、なぜ彼が?何を作っているのだろう。


思うことはいろいろあるがそのうち彼が火の番を変わってもらい、そばの小川に水を汲みに出かけた。

気がつくとミスファは馬車を降りていた。そばにいる騎士にその辺りをぶらぶらしていると言付け、少年の後を追う。小川の傍まで行くと、少年は気持よさそうにクローバーの上に仰向けになり、目を閉じていた。

ミスファは、声をかけてみることにした。




「あなたがお昼を作っているの?」

聞きなれぬ声に目を開け、体を起こし振り返ると、光の逆光の中にフードをかぶった女性の姿があった。顔は影になって見えないが、どこかで聞いたような声?そんな思いに首を傾けていると、その女性はゆっくりとそのフードを取り去った。そしてそこからキラキラと太陽の光を反射している、サラサラの銀色の髪が現れた。


「あっ、君は。」

そこにいたのは、先日アルトがローランの街中でぶつかった美しい女性であった。でもなぜ彼女がここに?

「お久しぶりです。あの時以来ですね。そうだ、あのケバブのパンはとても美味しかったわ、どうもありがとう。ずっとお礼を言いたかったの。」

「いいえ、どういたしまして。僕もあれは大好きなんです。でも、どうしてあなたがここに?」


連がそう言うと、相手は一瞬驚いたような顔をして、その後何かに納得したように首を振った。

「そうね、自己紹介がまだだったわ。あなたのことは知っていたけど。私は、、、」

彼女がそこまで言った時、後ろから一人の聖王国の騎士が近づいてきて口を開いた。

「姫様、お食事の用意ができたとのことです。」

漣はぽかんと口を開いたままだった。姫様?

「ええ、今行きます。」

そうしてこちらを振り向いてニッコリと笑った。

「はじめましてね。私は聖エルランジェ王国第一王女、ミスファリア エルランジェです。」




漣は自らを名乗ったあと、騎士の後を付いて馬車の方へ戻っていく少女をぽかんと見送っていた。

思い起こせばシャルのことを妹みたいに思っているとか、ヒントはあった。しかしまさか王女さまが街中を僅かな人数で歩いているとは思わなかったし、あの時の服装も普通のものだ。そうか、お忍び?そう思えばすべて説明がつく。しかし、それを思うとなかなか楽しそうな王女さまだ。漣はあの美しい少女に親しみを覚えるとともに、その容姿を思い出して少し脈が跳ね上がるのを感じた。

水を汲み、皆のところに戻る。スープはもう出来上がっており、食事の為みなを集めてくれるよう、火の番をしてくれていたギードに頼んだ。


食事をしながら、漣はエミリアとファナに先ほどの出来事をこっそりと話した。

「え~っ、そうなの?あん時の女の子が王女さま?何?するとあれはお忍びってやつ?」

エミリアも興奮して声が大きい。

「し~っ、静かに、エミリア。僕もびっくりしたよ。」

「なんか、かっくいい。」

とファナ。

「ねえ、あたしたちもお話できるかな?」

「旅は長いんだから、大丈夫じゃないか?」

エミリアとファナも、もうミスファのにわかファンだ。なにせ雲上人のはずの王女が、実は顔見知りだったなんてことは早々あるもんじゃない。

しかしエミリアの思いも虚しく、ミスファは食事が終わると早々に馬車に戻ってしまい、それから出てくることはなかった。




ルーラの街は漣の記憶にある通り、小さな街であった。さすがに今日の行程は距離があり、ペースも比較的穏やかだったこともあり、ルーラの街についた時はもうそろそろ日も暮れようかと言う時間であった。

もちろん街の大きさからも宿は選べるほどはなく、漣達も今晩は街で一番いい宿に王女一行とともに宿泊している。一番良いと言っても昨日漣達が泊まった宿よりは数段劣る宿であった。


漣は宿で落ち着くとすぐアーロンに、先日の話をしていた。

「あの子にしては珍しいな。多分シャイア王国のベアトリス王女に誘われたんじゃないか?」

「えっ、それじゃ一緒にいた少し偉そうな女の子がベアトリス王女だったの?」

「そういうことになるな。エルランジェでは王族のお忍びなどありえないよ。あの子も多分、こっそり街に出るなんてことは初めてだったんじゃないか?」


なるほど、そういえばもう一人の少女のほうが主導権を握り、しっかりとしていた気がする。それと漣はアーロンがこの旅の間ずっとフードを被り、外では顔を見せていないのが気になっていた。

「アーロンはミスファリア王女に会わなくていいの?」

「ミスファは、、、多分私が生きているのを知らないんじゃないか?顔を合わせたことももう随分昔だから、見られても大丈夫だとは思うが。」

「顔を見られるとまずい?でも向こうの王様は知っているのでしょう?」

「先代とは話はついていた。しかし兄はもうなくなっているし、息子にどのように話がいっているのかはわからん。もしかしたら、まだ私を探しているという可能性もあるし。まあ、知られないに越したことはないよ。」

「なんか身内同士なのに、寂しいね。」

「あの子は私に懐いていたからな、可愛そうだが。」


何か王女がかわいそうな気もするが、こればっかりは漣のできることはなにもない。アーロンのところを辞した漣は、日が完全に落ちるまでには少し時間があったため、剣の鍛錬でもしようと宿の裏庭に向かった。するとそこには大剣で素振りをしているギードの姿があった。


ギードの素振りはそれだけで迫力があった。とても力強く、一気に振り下ろされるそれは様々な型をとり、見ているだけで勉強になりそうだ。

「ちょっと見ていていい?」

そう言うと漣は自らの剣を脇において、ギードの動きに注目した。一連の動きを終わると、ギードが振り向いてレンを誘った。

「一緒にやらないか?」

「でも練習用の剣は無いよ?」

「あんなもの使わなくていい。いつものでやれば良いさ。ファナは治癒術師だろ?一応寸止めな。」


確かにベルンハルトとは真剣で練習することもよくある。おまけに治癒術師はあそこにはいないため、いつもはエレンさんに手当をしてもらって終わりだ。

「分かった。」

試合の時ほど真剣にすることはできないが、漣は少しワクワクしながらギードの前に立った。

「行くぞ。」

そう言ってギードは打ちかかってきた。重い、あの時と同じように一撃がとても重い。レンはそれを受け流し、逆に切り込んでいく。それもギードは軽く受け流し、二人の間で連撃が続いていく。次第に思考は無となり、体だけが動きを紡ぐ。それはまるで計算され尽くした殺陣のように、よどみない動きで次に続いていく。どれくらいそれが続いたのかはわからなかった。二人が動きを止めた時、ギードの大剣は漣の胴に、漣の大剣はギードの首筋にそれぞれ皮一枚で止まっていた。

二人の間の時間が、急に戻っていく。


パチパチパチ、漣達の後ろで拍手をする音がした。ふと構えを解き振り返ると、そこに銀色の髪の少女が立っていた。





突然聞こえてきた拍手の音に戸惑い、構えを解き後ろを振り返ってみると、そこに立っていたのはミスファリア王女であった。


「素晴らしいです。まるで舞をお二人で舞っているみたい。」

ギードがその場で跪いて答える。

「お恥ずかしい限りです。お目を汚しました。」

「いえ、とんでもない。素晴らしい物を見せていただきました。」

「汗を少々かいておりますので、私はこれで。」

そう言ってギードはさっさと建物の中に入っていった。後には漣とミスファリア王女が残され、なにか気まずい雰囲気が流れる。


「私、闘技大会であなた方の試合を見てたのですよ。とても素晴らしかったわ。」

気まずい雰囲気を払拭しようと、ミスファが話題を振った。

「そう、ありがとう。自分でもあの試合は楽しかったんだ。あれで何か自分の中が変わったような、気がしたよ。」

ふと驚いたような顔を一瞬見せ、ミスファはニッコリと笑う。


「レン様はお幾つですの?私とあまり変わらないような気がしますが。」

「16歳です。王女様は?って女性に年齢を聞くのは失礼でしたね。ごめんなさい。」

漣は頭を下げたが、ミスファはそんなことが気にならないのか返事をする。

「私は15歳、あなたとはひとつ違いなのですね。それなのに、あんなにお強い。」

「いえ、まだまだ修行中です。僕なんて師匠に比べたらまだまだで。」

「剣聖のベルンハルト様ですね、あの方と比べたらどんな方でも見劣りがしてしまいます。しかしレン様はすごいです。剣聖様のお弟子さんになり、そのお年であれだけの剣を振るわれるようになるとは。私など、少しの法術が使えるくらいで、何もできません。」

「王女様は、法術師なのですか?何の法術を使われるのです?」

「私のことは、ミスファとお呼び下さい。それにしてもレン様は他の人のように、私の前でかしこまったりなされないのですね。」


そう言って、口元を隠してふふふと笑う。そういえば漣は先程から王族に対する礼儀が全くなってなかったことに気がついた。出会いが出会いだったとはいえ、これは少し無礼なことだったかもしれない。

「すみません、僕の国には王様とかそういうのはいなかったものですから。どう接していいかわからなくって。あの、僕の方も様付けは無しでお願いします。」

「王族がいなかった?もしかしてシーランド共和国のご出身?」

「いえ違います。もっと東のほうで、、、物語の中とか、他の国には王様のいるところもあるにはあったのですが、なんせ馴染みがなくて。失礼でしたら、謝ります。ごめんなさい。」

「いえ、そういうのじゃなくって、私にとってはとても新鮮だったのです。今までこんなふうにお話できる方がいなくって。どうかよろしければ、このままで、少なくともふたりきりの時は、これでお願いします。」

やはりこの少女は、王族というのを鼻にかけたりしないんだ。漣の中ではこの美しい少女に対する好意に、ますます磨きがかかった。


「しばらく話をしませんか?」

ミスファが裏庭の片隅のベンチを指さしてそちらに歩いていく。漣もその後に続いた。二人して並んで腰を下ろす。


「すごくきれいな髪だね、銀色の髪なんて珍しいから。」

「そうですの?あなたの黒い髪もとても珍しくて美しいですわ。」

「そうかな、僕の国の人はみんな黒髪で他の色なんてなかったから、見慣れてるよ。」


やはり、とミスファは思った。国民全員が黒髪をしている国などミスファは知らない。少なくとも、国名が言える範囲にある国ではない。そうなるとこの少年は、よっぽど遠くの国からやってきたのか?もしかして、初代様と同じ国?


「先ほどの質問ですが、私は光の聖法術と治癒術と火の法術が使えます。ところでレン、あなたのお国はなんという名前ですの?」

漣は素直に答えて良いものか少し戸惑ったが、どうせわからないだろうとそのまま答えることにする。

「ニホンという国です。ずっと東のほうにある。」

「ニホンですか。なんか不思議なお名前。」


ミスファはその名前をもちろん聞いたことがなかった。東といえば知られているのはベルグスト公国である。そのさらに東は人の超えられないロードス山脈と大森林で人の行き来はないとされているはずだ。ではどうやってこの少年は今ここにいるのだろう?

会えば何かわかると思っていたが会ってますます謎が深まるこの少年には、自分の国の建国の謎も含めて疑問が増すばかりだ。


だがミスファ自身は漣に対し、悪い感情は抱いていなかった。むしろ、隠し事のない素直なさっぱりとしたその性格は好意的に捉えていた。

おまけに、自分に対しこれほど対等に話しかけてくる異性の存在も初めてで、そのことは新鮮であった。

気がつくと、旧知の仲であるかのごとく、他愛もない会話を楽しんでいる自分がいた。

ベアトリスが見たら、きっとびっくりするわね。ふとそう思い、無意識のうちに微笑んでしまう。


「どうしたの?ミスファなんか楽しそう。」

「いえ、ベアトリス、あそこであったもう一人の女の子ですが、彼女がこんな私を見たらどう思うかしらって思って。」

「ベアトリス?ああ、シャイア王国のお姫様だね。君よりもちょっと気が強そうな気がした。」

「ふふふ、そうかもしれませんわ。」

そう言って二人で笑っているところへ、ミスファの侍女サリーがやってきた。


「姫様、そろそろ。」

「サリー、ごめんなさい。今行きます。レン様、申し訳ありませんが、これで失礼させていただきます。」

「レンでいいよ。僕もミスファって呼ぶから。」

「それでは、レン。」

そう言って、ミスファは侍女とともに去っていった。お姫様といえばもっと堅苦しい人かと思っていたレンにとって、ミスファはいい意味で驚きだった。レンは自分の心の中に、今までなかったような感情が芽生え始めているのに、まだ気がついていなかった。




「姫様、随分と楽しそうですわね。」

サリーにそう言われるまで、ミスファは自分がさっきの漣との会話を思い出し、自然に口元が微笑んでいたことに気づかなかった。

「ええ、とても楽しい方でしたわ。」

「姫様が男の方とそれほど楽しそうになさっているなんて、珍しいですわ。アーデルベルト王子が嫉妬なさいますわよ。」

「ふふふ、アーデがね。」

「そろそろ、明日のお召換の準備をさせてくださいな。」 

未だ楽しかった思いを残しながら、ミスファは侍女と自室へ戻るのだった。


結局それから次の朝の出立の時まで、漣はミスファともう一度顔を合わせることはなかった。自分の馬の準備をし、宿の前に引いてきた時にはミスファ一行の馬車の準備は整っており、ちょうど宿からミスファ自身が出てくるところであった。二人の目が会い、にこりと微笑むミスファに漣も思わず手を振る。そんなところをすかさずエミリアたちに見咎められた。


「レン、一体どうしちゃったの?王女さまと随分親しくなっているみたいだけど?」

「またスケベの虫がうずいた。」

「ファナ、スケベの虫ってどんなんだよ。昨日ちょっと裏庭で顔を合わす機会があってさ、ミスファとはその時色々話をしたんだ。」

「ミスファ?ミスファって何よ!!あなた何様のつもりなの?相手は王女さまよ?」

「だってミスファがそう呼べって、、、」

「いくらそう言われたからって、そんなふうに王族に口を利く人がいる?非常識よ、非常識。」

「レン、やはりそれ変。」

エミリアばかりかファナにまでダメ出しされ、やはりダメかなとも思うが、まあいいやと考えを放棄するレンであった。


そうこうするうちに向こうは出立の準備ができたようであるが、バーンハードの馬車はまだ出てこない。バーンハード自身とアーロンも姿を見せなかった。さすがにこれは変だと、漣は馬車を止めている裏へ回ってみる。するとそこに馬車を取り巻いて、バーンハードと、困った顔をしたアーロンの姿があった。御者はどうやら、馬車の下に潜り込んでいるようだ。


「どうしたんですか?王女様ご一行は準備ができたようですけど。」

漣は馬車のところへ近づいていった。

「いや、馬車の車軸に問題があるらしい。どうやらヒビが入っているようなんだ。」

アーロンが返事をする。それに続いてバーンハードが説明をしてくれた。

「何か車軸にぶつかって、そこからヒビが入っているようなんです。このまま進むと、途中で車軸が折れる心配があるらしい。取り敢えずすぐ交換できるか、この街の鍛冶屋に聞いてみてもらっているのですが。」

「昨日はなんともなかったんでさ。もしヒビがはいるほど何かにぶつかってれば、走っている時にわかりやす。おかしいな?夜のうちにヒビが入るなんてことありゃしないし、動かしてもいないのに。」

御者もどうやら原因がわからないらしい。

「取り敢えず、治るのがいつになるかわからないので、王女さまご一行には先に出発してもらいましょう。私はちょっと伝えてきます。」

バーンハードはそう言って王女たちのいる場所へと向かった。


王女一行が出発してすぐ、鍛冶屋に走らせていた使いが戻ってきた。

「替えの車軸はすぐにでも用意できるそうです。1時間ほどで、直ります。それじゃ私は馬車を持って行ってきますので宿でお待ち下さい。」

御者はそういうと、馬車に乗って出かけて行った。


しばらく時間が開いたので、漣はアーロンに昨日のミスファとのやりとりを話した。

「そうか、どうやら優しい子に育ったようだな。私も話をしてみたかったよ。」

昔を懐かしむような顔つきで、アーロンはそう言った。

「うん、全然偉ぶったところがなくってすごく素直な性格の良さそうな子だったよ。それに、綺麗な子だね。」

「気に入ったか?レンは。」

「まあね。すごくいい子だったな。エミリアには、馴れ馴れしくし過ぎって怒られたけど。」

「まあこちらでは、王族に対してはみんなそういうもんだ。レンの国には王様っていなかったんだな?」

「うん。国の象徴みたいな人はいたけど、王様とは全然違うし。礼儀作法とか、よくわかんないや。」

「まあレンはそれでいいさ。ミスファもそう言ったんだろ?」


そうこうしているうちに小一時間ほどで馬車の修理が終わったと、御者が馬車とともに戻ってきて出発となった。

「遅れた分を取り返すぞ。向こうは多分ゆっくりと進んでいるから、昼までに追いつこうか。」

ボドウィックがそう言って、一同はルーラの街を出発した。





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