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ネクロマンサーに、恋をする  作者: 暁カンナ
躍動 シャイア王国編
24/30

第24話 新たな出会い


翌日の出発は街の西門での待ち合わせとなった。漣達が準備をして西門に行ってみるとまだ王女達一行は来ておらず、しばらく待っていると見慣れた馬車が姿を現した。

バーーンハードが王女の乗る馬車に挨拶に行った後、一行はボドウィックを先頭に出発した。

今日の目的地はトーバンという比較的大きな街、距離も昨日ほどは稼がなくてよいようだ。

漣やアーロンが住んでいたアプト村は後2日この街道を西へ進み、それから北へあがった所にある。アプト村からローランにボドウィックと行くとき、連はこの途中の街に宿を取ったことがあった。


「今日は距離がないから、明るいうちに着けるね。」

「ええ、トーバンまでだっけ。でも明日はその分次の街まで距離があるから、大変かも。今日のうちにゆっくり疲れを取らないとね。」

今日はエミリアと連が後衛だった。のんびりと馬車の後ろを行く、確かにこの辺は道も広く時々向こうからくる馬車とすれ違うことも難なく出来る。


「ところで、エミリアはパールベックには行ったことがあるの?」

「ええ、ギルドの仕事で一度だけいったことがあるわ。向こうにも小さいけど支部代わりに使っている定宿があって、何人かはうちの連中もいると思うの。」

「街はどんな感じ?ローランよりも大きいの?」

「大きさは、ローランより大きいかも。でも、活気はローランのほうがあるかな。なんかちょっとお上品な感じね、だってあそこは宗教が盛んだから。」

「宗教?」

「そう、光の女神ルアナを信奉するルアナ教の総本山。確か国王が大司教も兼ねてたと思うわ。だからちょっと、苦手なのよね。」

やはり以前聞いていた通り、何やら堅苦しそうな所かもしれない。漣も若干の苦手意識を感じた。


「エミリアは宗教ってあるの?」

「私?う~ん、何だろ。戦いの女神、ハツキも好きだし、愛と美の女神サファルも好きだし、、、あっでも、恋の女神ラビーウかな?」

「要するに、なんでもいい。」

ギードと話が合わないのか、いつの間にか前にいたファナが後衛の位置まで下がってきていた。

「何よ、ファナ。じゃあ、ファナは誰?」

「私は知恵と医術の神、サツキ。」

「まあ、ファナは治癒術師だからね。レンは?」

「僕は、なんだろう?しいて言えば無宗教?なんでもいいや。」

「信仰心のないやつね。そんなこと言ってると、後ろの王女さまに怒られるわよ。」


そうは言っても元は八百万の神々を信心し、最近ではTPOにより海外の神様までありがたがるお国出身である。宗教と言われてもピンとこない。大体、ローランでもそんな話はこれといってなかった。たしかにいろんな神々の教会があるのは知っていたが、物珍しさに観光気分で訪れたことがあるだけである。


この世界は12柱の神々を信仰しており、1年を12ヶ月に分け各月をそれぞれの神に割り振っている。その中で年の始まりは序列1位の神、光の女神ルアナの月で、終わりは死を司る月の女神ラズリの月である。ネクロマンサーとしての自分はラズリを信仰しないといけないのかもしれないが、宗教には縁遠いことから真実どうでも良かった。ただ、これから行く聖王国は光の女神ルアナを国教と定めており、後ろの王女さまも敬虔な信者である可能性は高い。失礼のないように、気をつけよう。漣は改めて思い返した。



トーバンの街についたのはまだそれほど日も傾いていない頃であった。馬のみであればルーベンからは比較的近いここで宿は取らず、次の街まで行く事も可能であったが、馬車を伴って移動している事、まだ二日目の宿泊地なので、王都から近く高級な宿が整っているこの比較的大きな街で休むことにしたようだ。

何せこの先は全部が全部、高級宿のそろっている大きな街というわけにはいかない。泊まれるうちはそういう所を利用するという事かもしれない。


ここで王女達一行は、貴族や大商人の泊まる最高級クラスの宿屋へ泊まることになる。もちろんバーンハードもそちらに泊まっても良かったのだが、今回はアーロンや漣達もいたので昨日に続き一つ二つ格を落として、中級クラスの宿に一行は落ち着くことになった。


「ここでも凄いわね、ベッドなんてふかふか。お料理も、これは期待できるわ。あたしたちだけじゃ、絶対こんなとこ泊まれないものね。」

エミリアが感激した様にいう。確かに碧の旅団の仕事で今まで使って来た宿と比べるべくもない。これもバーンハード様々である。

「ベッド重なってないし、部屋きれい。厩も、凄く清潔だった。馬も幸せ。」

馬の好きなファナも気に入ったようだ。

部屋割りは、昨日に続きバーンハードが独り部屋、アーロンとボドウィック、漣とギード、エミリアとファナである。


「レン、落ち着いたら少し街を歩かない?」

「いいよ、ファナも行く?」

「分かった。」

「それじゃ用意できたら部屋に迎えに行くね。」

そう言ってエミリア達は自分たちの部屋へ戻って行った。


レンもギードと自分に割り当てられた部屋に向かった。ちなみにギードはもう先に部屋へ入っている筈だ。漣は部屋の前に立つと、扉をノックした。

「どうぞ。」

返事を聞いて、扉を開ける。

「お前の部屋でもあるんだから、ノックなんてしなくていいぞ。」

「はい、分かりました。よろしくお願いします。」

ギードは入って右のベットに腰掛け、決して大きくはない荷を開いていた。そう言えば、碧の旅団の人以外と同じ部屋になるのは、アーロンを除き今回の旅が初めてだ。昨夜のルーベンの宿屋では、遅く着いたので食事をした後はほぼ寝るだけだった。あまり話もしていない。


武闘大会で戦った相手とはいえ、それほどよく知った間柄ではない。おまけにこちらは、コテンパンにやられた方だ。普段人見知りをする方ではないが、ちょっと気まずい物を感じる漣であった。

「ギードさん、あの、、、」

「ギードでいい。そんなにかしこまるな、これから一緒に旅する仲間だろ?」

「はい、分かりました。」

「だから、かしこまるなって、普通でいいよ。それより、あれはいい試合だったな。」

「うん、凄く楽しかった。」

そう、漣は後から思い出してもあの試合は心から楽しむことができていたと思う。確実に、自分の中に何かを残せた試合だったと思っていた。

そして、ギードと会ったらぜひ聞きたいことがあった。決勝トーナメントの試合の事だ。

結局、優勝したのは前回大会と同じライムンドであったが、ギードも再び準優勝であったし、何よりイーリスを下したガスパールに勝っている。

漣は決勝トーナメントの様子を、その当事者からぜひ聞きたかった。それも実際に自分と剣を交えたギードから。


「レン、お前とやったあの試合は決勝トーナメントと同じレベルの戦いだったぞ。俺にとっても楽しい、いい試合だった。お前がもし、俺の代わりに上がっていたらあのガスパールといい勝負をしていたかもしれんな。」

「えっ、ガスパールと?あの凄い双剣使い。」

「勝てるかどうかは分からんが、俺とやっと時以上にやれたんじゃないか?」


それを聞いて漣は驚いた。何せ惜敗とはいえあのイーリスが破れた相手である。漣はどうしても自分がイーリスに勝てる所が想像つかなかった。それはしかし、多分にレンがイーリスとファビオラの2人組に弄られすぎて苦手としている所も、関係しているのだが。


「あいつの剣は速い。しかも恐ろしくだ。しかし双剣使い故、双剣使いの持つ欠点もある。それは軽い事だ。いかにスピードに乗っているとはいえ、軽い剣と言うのはある意味俺たちのような大剣使いに対し大いに泣き所となる。ただし、その剣速が生かせない場合だけどな。」

「でも、ガスパールの剣はあり得ないほど速いですよ。うちのイーリスさんより速かった。」

「ああ、しかしお前は知ってたか?お前の両手剣の剣速も両手剣にはあり得ないほど速いんだよ。」


ああ、そうなのか?漣はなぜ自分がこれほど経験を積んだギードと言う一流の傭兵と、あれほどいい試合が出来たのか分かった気がした。

試合ではアーロンにもらった軽いミスリルの剣を使っていた訳ではなかったのに、自分でも感じたが剣速はギードに勝っていたと思う。


「後お前に足りないのは、剣の重さと経験だな。重さに関しては、とにかく打ち込みをやれ。一日何百とな。経験に関しては、お前ならそのうち付いてくるだろう。いろんな奴とやれれば、なおいいがな。」

その時扉からノックの音がした。


「レン、準備できてる?そろそろ行くわよ。」

扉から顔をのぞかせたのは、エミリアとファナだ。そう言えば街に出る約束をしていた。レンはギードと話し込んでるうちにその事をすっかり忘れていた。

「ごめん、今行くよ。それじゃギード、ちょっと出てくるから。」

そう言って漣は部屋を後にした。


トーバンの街はその大きさにおいて王都ローランとは比べるべくも無い。だがローランに比較的近いこともあって活気があり、シャイア王国では5指にはいるくらいの大きな街である。喧噪の飛び交う通りの両脇には屋台が並び、美味しそうな匂いが辺りに漂っている。

「どれから食べる?」

とファナ。もう食う気満々であった。

「宿の夕食近いんだから、あんまし食べちゃダメだよ。きっと晩ご飯美味しいから、もったいないよ。」

「それはそれ、これはこれ。」

「ファナは体の割に良く食べるからね。大丈夫よ、多分。私もなんか食べよかな?」


ふらふらっと道の傍らによって行くファナの後を付いて屋台をのぞいてみると、何やら白身の肉をタレに漬けたものを串に刺して焼いている。

「これにする、1本。」

「おじさん、あたしにもちょうだい。1本ね。レンは?」

「何の肉?」


「デメルオオトカゲだよ。この辺りの岩場にはよくいる。」

漣の問いかけへの答えはエミリアでもファナでもなく、レンの後ろから聞こえてきた。


突然なされた答えに驚き後ろを振り返ると、そこには背の高いすらっとした一人の女性がいた。

年齢は30台初めくらいか?綺麗だが少しきつい目つき、灰色のローブをまとい、頭には白い布を巻き付けており、その傍らから赤い一房の髪がのぞいている。

手には一本の長い杖を持ち、その柄には赤い大きな石がはまっていた。


「味は淡白だがなかなかいけるぞ。おやじ、私にも一つくれ。お前はどうだ?」

そういって漣にも進めてくる。爬虫類はどうもなぁと思うのだが、そこまで勧められると好奇心が勝ち、漣も1本試してみる事にした。

食べてみると、これがなかなかいける。噛み締めると中からジワッと意外にあっさりとした肉汁があふれ、それが絶妙のタレと絡んで何とも言えずうまい。


「美味しい。」

漣は素直に感想を述べる。

「そうだろう、私はこれが大好きなんだ。君らは旅の途中か?」

「ええ、聖王国へ向かう途中です。あなたも?」

「ああ。特にこの後は目的というものはないがな。ここでの仕事が終わったら、とりあえずこの後はしばらくシーランド共和国の方へ行ってみようかと思っている。あそこは海の幸がうまいからな。」

どうやら食べる事が好きそうなこの女性は、笑うとそのきつい目つきも穏やかになり、魅力が倍増する。

「レン・ミドウと言います。碧の旅団という傭兵団にいます。」

「ほう、ボドウィックのとこか。私はフィグネリア・バーネ、法術使いだ。フィグでいい。」


「フィグさん、団長をご存知なんですか?」

「ああ、ずいぶん前になるが一緒に組んでいたことがある。まあ、あいつもえらくなったもんだよ。」

そう言うとフィグは懐かしいものを思い出すかのように、目を細めた。


「フィグネリア・バーネ、煉獄の使徒。使徒12人の一人。」

突然、ファナが会話に割ってはいってきた。どうやらファナは彼女の事を知っているようだ。


「煉獄の使徒?」

何だその厨二病丸出しの二つ名は?

「そう、各属性ごとに最も優秀な法術師に与えられる称号が使徒。彼女は火属性の使徒。」

「それで煉獄、、、」

「その名で呼ぶのはやめてくれ。聞いているとこっちが恥ずかしくなる。」

「じゃあそんな名前つけなければいいのに。」

「私がつけた訳ではない。はぁ~っ、大体使徒なんて、私は宗教かぶれの人間じゃない。」

二つ名なんて、やはりいやがる人もいるんだ。まあ確かに、人前でそんな風に呼ばれると恥ずかしいかもしれない。


「それにしてもレンと言ったか、お前は面白い気をしているな。」

「気?なんですか?それは。」

「纏っている物と言うか、その者の持つ色と言うかな、法術を高めた者ならば感じ取ることができる。お前のは、黒だな。その瞳の色と同じ。しかし闇の黒ではない。もっと純粋に、淀んでおらず透明で美しい。面白そうだから、さっき声をかけたんだ。お前のような色をした黒は初めて見た。」

「ファナは分かる?」

「聞いたことはある。でも私にはわからない。」

「それでは私は行くよ。君とは、又会うこともあるだろうさ。」

「はい、フィグさん。その時は、よろしくお願いします。」


そう言い、フィグネリア・バーネは立ち去って行った。なんだか面白そうな人だなぁ、レンは人ごみの中に消えて行くその後ろ姿を見ながらそう思った。

後で宿に戻って晩飯の際ボドウィックに彼女と会った事を話してみると、次のような返事が返って来た。


「げっ、フィグが来てるのか。明日は早々に発つぞ。」

どうやら、彼女はボドウィックにとって鬼門のようである。



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