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ネクロマンサーに、恋をする  作者: 暁カンナ
躍動 シャイア王国編
21/30

第21話 決着

 

 

 

今日はいよいよ3回戦、これに勝てば決勝トーナメントへの出場が決定する。この日行われる試合は6試合、そしてこの試合からいよいよ前回大会の1位から3位までのシード選手が参加をする。もちろんこれらの選手は実力者ぞろいであり、3回戦でシード選手に当たると言う事は、ついていないとしか言えない。

そして漣はそのついてない選手の一人だった。


「いやぁレン、運が悪かったねぇ。ここでシード選手と当たるなんて。しかも前回2位の大剣使いのギードだろ?ちょっとまずかったなぁ。」

リックがかわいそうな物を見る目で見てくる。

「でもまだ負けると決まった訳じゃないわ。もしかしたら勝てるかもよ。」

そう言ってくれるエミリアの声も、実はどこか弱々しい。

「レン、無理だけど、ガンバ。」

ファナはもうあきらめ気味だ。そして漣はと言うと、意外に元気だった。

「でも何か楽しみだな。レオン王子の時も、楽しかったし。」

「意外とレンって、戦闘狂バトルジャンキー?」

「違うよ。でも何かわくわくする気持ちもあるんだ。強い人とやると、自分がどれくらいの所にいるか分かるじゃない?っていっても、これは先生の言葉なんだけどね。」

エミリアの疑惑をあわてて打ち消しすためそう言う。しかし実際の所、漣はそう思っていた。今日の試合で自分の限界が分かるかもしれない。そうすれば、今度はそこから伸ばして行くだけだ。


今日の他の対戦相手は、イーリスがムレーナと、ファビオがガスパールとそれぞれ対戦する。どうやら、他の二人はシードを避けることができたようだ。

「いいこと、イーリス絶対勝つのよ。あのメス豚を、こてんぱんにやっちゃいなさい。」

気炎を上げているのはファビオラだ。何でも昔ムレーナに男をとられたことがあるらしい。それで今日その敵を討つのが、相棒のイーリスと言う訳だ。

「はいはい、分かってる。ちゃんと勝ってくるさ。」

こっちはファビオラほど熱くなっていない。

そしてガスパールと当たるファビオも沈着冷静、いつもと全く変わらず寡黙だ。

「ファビオはどう?勝てそう?」

エミリアの問いにも、分からんとしか答えない。

「それじゃ、行ってこい。」

ボドウィックの言葉に、皆は闘技場へと向かった。


今回の試合は午前3試合、午後3試合。ファビオは午前中で漣とイーリスは又午後からだ。

又今までの様に観覧席に席を取り、試合を観る事にする。さすがに3回戦ともなると観覧席の込み具合も半端ではなく、席を探すのに苦労をした。多分シード選手が出てくるのにも関係しているのだろう。

初戦は前回第3位シードの長槍を扱うシモンが、ベルグスト公国出身の片手剣使いの傭兵にあっさりと勝って、決勝トーナメントに駒を進めた。そして次はいよいよファビオの試合だった。

ファビオの相手ガスパールは昨日エミリアを破った相手で、ぜひとも敵を取ってもらいたいものだった。

「ファビオ、勝つかな?」

「でも、ほんとあのガスパールって奴、強いわ。ちょっと心配。」

実際に剣を会わせたエミリアがそう言うのだから、本当なのだろう。エミリアは、ファビオの実力も知っている訳だし。


例によって派手な司会の後、ついに試合が始まった。二人の試合は、最初からハイペースでの派手な剣戟で幕を開けた。

ファビオが右から打ち込む。それを両手の剣でクロスして受け止め、逆に右手で打ち掛かってくる。ファビオはガスパールの右手の剣をうまくシールドで躱し、自分の片手剣と相手の左手の剣で打ち合っている。

ガスパールの使う双剣は、イーリスの使う物と違い、細い直剣である。それに対しイーリスは、少し湾曲したものを使っている。

ガスパールがうまく、ファビオの左手に持つシールドの弱点を突いて足下を狙ってくるが、ファビオもうまく回り込んで、それをさせない。

一進一退の攻防が続いた。


「これは凄いな。」

「どちらも強いわね。」

双剣姫の二人も、感嘆して観戦している。確かに漣の目にも二人のレベルの高さが分かる。これは自分も下手な試合は出来ないな。

しばしの小休止を挟んで、両者は再び激突した。

又激しい剣戟の応酬が始まる。ただし、今度はガスパールの双剣のスピードがますます上がっている気がする。確実に先ほどより早いペースで繰り出されるその双剣に、ファビオは防戦一方になって来た。そして、ファビオがガスパールの双剣の動きをとらえきれない時がとうとうやって来た。

シールドの下をすり抜けて、ガスパールの右手の剣がファビオの左下半身に吸い込まれる。思わず、シールドを下げた所へ左の剣が舞う、ファビオの片手剣がそれを防ぐも、今度は右手の剣が下から跳ね上げる様にそれを弾き飛ばし、勝負がついた。


まさに息詰まる試合であった。周りを見渡せば皆興奮して盛り上がって、立ち上がっている者もおり、この試合の凄まじさが窺い知れた。

「凄い試合だったね、ファビオさん負けちゃったけど。」

「でも、あのガスパールって言う双剣使い、強いな。まさにシードクラスだ。」

「そうね、あいつは強いわ。イーリス、あなたよりもしかしたら早いかもよ。もし次で当たるようなら、気を付けなさい。」

ファビオラが珍しく真剣な表情をして言った。そうだ、万が一、もしかしたら自分も当たる可能性はある。今回事前に彼の試合を見れたのは僥倖だったかもしれない。

漣がそう思い口にすると、いやいやそれはないわと皆から全否定され沈没した。


午後はいよいよ漣達の出番だ。イーリスは第1試合、漣は第2試合で今回もイーリスの試合を漣は観ることはできない。今度の漣の相手は自分と同じ両手剣の使い手。いつもベルンハルトと剣を交えている漣に取っては、そう言った意味では組みしやすいのかもしれなかったが、なんせ相手は前回大会の準優勝者。なめてかかっていい相手ではない。

案内人の女性が控え室まで呼びに来た。

「第1試合の結果はどうなりました?イーリスと同じギルドなんですよ。」

「おめでとうございます。イーリスさんが勝って、決勝トーナメントへ進みましたよ。」

良かった。これで一人はうちから決勝トーナメントへ進むことができた。次は自分の番だ。


3度目ともなると、広い闘技場の舞台も、沸き起こる歓声もそれほど気にならなくなってくる。漣は待ち受ける対戦相手の前に進み出た。大きい。胸板も厚く、背もレオン王子よりもずっと高い。おまけに腕は丸太のようだ。こんなのと本当にやれるのか?

「さあ、楽しもうぜ。」

じっと相手を見つめていると、突然にまっと笑って言葉をかけて来た。

「はい、よろしくお願いします。」

日本人の癖で、思わず丁寧な挨拶を返してしまう。

「面白いな、お前。」


その時司会が選手の紹介を始めた。

「さあ、本日の第5試合、ここで再びシード選手の登場だ。前回大会準優勝者、シーランド共和国アムダリア傭兵団のギード。巨漢の両手剣使いだ。」

「対するは、ギード選手と比べるとあまりにも小さい、若干16歳のレン・ミドウ選手。ここは一発、大どんでん返しがくるのか?」

審判の開始の合図と共に両者は闘技場の中央へと進み出た。


試合は既に始まっているのだが、しかし漣は全く動けない。相手からのプレッシャーは今までの選手の比ではなかった。その大きな体のどこから攻め込んでよいのか全く分からない。そうしているうちに、ギードが大きく踏み込んで上段から一気に切り込んで来た。避ける暇もなく、まともに両手剣で受け止めてしまう。手がじんじんと痺れ危うく剣を手放しそうになるのをなんとかこらえ、こちらからすり上げて脇を狙うがこれも素早く大剣で防がれてしまう。開始からそれほど時間は立っていない筈なのに、漣はもう肩で大きく息をしていた。


ギードは驚いていた。正直な所ギードはレンの事をなめてかかっていた。

あまりにも大きなその身長差、若干16歳というその体はまだ出来上がっていると言うにはほど遠く、どうやってその幅広の大剣を持っているのか分からないくらい。ましてそれを十分に振るえるとはとても思えなかった。いくら剣聖の初めて取った弟子とはいえ、将来的にはありとしても、今時分の相手が出来るほどの技量とパワーがあるとは到底思えない。昨日戦ったと言う王子と言うのも実力のほどは分からない、きっとここまではトーナメントのくじ運が良かっただけだろう。そう思っていた。


だから、最初の上段からの一撃で決めるつもりであった。まともに受け止めれば相手は確実に剣を弾き飛ばす、それほどあれは渾身の一撃の筈だった。それを避けるでもなく正面からぶつかり、こともなげに受け止める。そればかりか、次の瞬間刃を返しこちらへ打ち込んでくる。これは久々に面白い奴と出会った。そう思うと、久しぶりに胸が高まった。


しばらくにらみ合っているうちに、漣も少し落ち着いて来た。パワーでは多少負けているかもしれない、それならスピードではどうだろう。今の立ち会いの一撃をみると、圧倒的にベルンハルトの方が早く、そして重い。それに、自分は結構ついていけている。あのくらいなら、落ち着けば凌げる。まだまだやれる。


ギードは相手の雰囲気が、突然変わったのに気がついた。もう先ほどまでの様に大きく肩で息をしていないし、集中力も増して来ている。ほ~う。これはますます面白くなって来た。


再びギードが動く。右上段からの切り込み、しかし先ほどまでのパワーはない。漣はそれにうまく自分の剣を当て、斜めにそらす。そしてすぐさま切り返して下半身を薙ぐ。ギードは素早く後ろへ飛び退り、それをしのぐ。そこヘレンは前に出た。右から仕掛け技を放ち、それが返されるのを承知で左へ薙ぐ。体制の崩れた相手に下から剣を切り上げ、これで決めた筈であった。しかし飛ばされた筈の相手の大剣は以前その両手の中にあり、漣の下からの切り上げをびくともせず受け止めていた。

なんて馬鹿力だ。さすがに、すんなりと終わらせてくれるような相手ではなさそうだ。




ミスファはそんな漣の姿を貴賓席からじっと見つめていた。あの体格差からして最初の一撃で吹き飛ばされても決しておかしくない。あの時は手に汗握って、思わず席からお尻が浮きそうになった。しかしその後は堂々とあの巨体と対等に打ち合っている。確かに力強さでは圧倒的に大きな方の勝ちだが、スピードでは逆に勝っている様に見える。

もしかしたらと思ってしまうのは、素人考えなのだろうか。

昨日アクシデントのおかげで漣の髪の色を確認することはできたが、それでももし出来る事なら、今日も勝ち進んで欲しかった。

「やるな、あの少年。レンとか言ったか。あの一撃を止めたぞ。あれは私では危なかったかもしれん。」

レオン王子が、感嘆した様につぶやいた。もしかしたら王子なら勝敗が予想できるかもしれない。そうミスファは思った。

「レオン様はどちらが勝つとお思いですか?」

「それは間違いなくギードでしょう。地力が違いすぎます。もし、ライムンドとギード以外と当たっておれば、上がって来れたかもしれませんが。」

「ライムンドとは?」

「前回の優勝者ですよ。この二人は前回も別格でした。あの少年はギードといい勝負をしている。こんな所で消えるのは惜しいのですが、勝負は時の運。仕方ありませんね。」

やはり王子の目から見ても、レンはここまでのようだ。それでもミスファは上がって来て欲しいと切に願った。




レンの両手は先ほどから感覚が怪しくなって来ていた。もう長くは持たない。

試合は結構長期化していた。幾度と泣く漣が攻め込みギードがそれを払いのけ、切り込んでくる。それをレンはうまく受け流し、避けて、再び切り返す、その連続であった。しかし時間が経つにつれ、体力的に無理がくるのは間違いなくレンの方であった。


しかし、楽しい。

きつい中にも今漣はそう思っていた。次はどう攻め込んでやろうか、どこにフェイントを入れて、どこで仕掛ける。そんなことを考えながら体を動かしていると。試合が長期化しているのにも気づかなかった。ただ、自分の体力がもう限界に近づいているのは分かる。

次で決める、そう誓った。




まさかこんな展開になるとは。ギードにとってこれほど厳しい展開になるのは、前回大会の決勝、ライムンドとやって以来だ。自分の豪剣には自信があった。パワーと体力だけの剣技ではないつもりである。しかしそれが自分の肩くらいしかない少年に通らない。どうなっているんだ?

ありとあらゆる剣戟をうまくそらされ、おまけに相手の手数は自分よりずっと多くなっている。こいつどんな体力をしていやがる。

そう思いながら対峙していると、又相手の雰囲気が変わった。これは仕掛けてくるな。


もうフェイントなど入れている余裕はない。真っ向から打ち合っても勝てる相手ではない。それなら、、、漣は相手の右に大きく回り込む、ギードが向きを変え、それに合わせてくる。だが遅い、そのまま右手を話し、左手一本で相手の左腕を狙った。狙いは過たず漣の剣はギードの腕に吸い込まれる。ギードの左手が剣からは慣れる、そこへ両手で持ち直した大剣を叩き込んだ。

入った!!そう思った瞬間、漣はギードの持つ右手一本の大剣で大きく弾き飛ばされた。

両手にもっていた筈の大剣と共に意識が飛び、そこで漣の武闘大会は幕を閉じた。




あっ、その瞬間ミスファは思わず声を上げてしまった。今目の前で、ミスファの応援していた黒髪の少年は地に伏せていた。どうやら勝負あったようだ。

「しかし頑張りましたわね、あのレンと言う少年。レオン兄さまに勝っただけのことはありましたわ。」

ベアトリスも今の試合には感動したようである。


ミスファはふと何かを感じて手を頬に当て、それが濡れているのに気づいた。

「ええ、とても素晴らしい試合でした。」

ミスファも自分の興奮が悟られない様に、そっと口にする。

「あの少年に負けたのなら、私も何ら恥ずかしいことはないな。いい試合だった。」

レオン王子も感嘆している。確かに素晴らしい試合だった。しかしミスファの心の中は少し寂しい想いで一杯だった。もうあの少年の姿を見ることはない。出来れば一度会って、話をしてみたかった。残念なことに、それがかなうことはないだろうが。


そういえば、、、ミスファは、以前バーンハードが言っていたことを思い出した。

「ミスファリア様にも是非一度お引き合わせしたく思っております。」

確かあの少年は聖王国にくると言う話だ。それならば、会う話も現実味を帯びてくる。それを思い出すと、ミスファは突然気持ちが暖かくなるのを感じた。

「ミスファ、なんだか楽しそうね。どうしたの?それほど今の試合が気に入った?」

ベアトリスの突然の問いに、ミスファはどうごまかしてよいのか分からなかった。



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